はなみずき司法書士事務所
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7月 14 2022

滞納家賃に関する消滅時効の援用

依頼者の方ではなく、私が成年後見人になっている方に対して弁護士法人から督促状が送付され、最終的には1円も支払うことなく無事解決した事件がありましたので、備忘録も兼ねてまとめたいと思います。 

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1 事案の概要

 

ご本人は、以前アパートに居住しており、賃貸借契約をするに際して家賃保証会社とも契約しました。

これにより、ご本人が家賃を滞納したとしても、保証会社から大家さんに賃料が立て替えて支払われることになるため、大家さんとしては賃料のとりっぱぐれが無いことになります。

もっとも、アパートの借主に未払い賃料の支払義務が無くなるわけではありませんので、保証会社には立て替えてもらった家賃分を支払う義務があります。これを保証会社から見た場合、法律用語で「求償債権」、借主から見た場合は「求償債務」といい、保証会社大家さんに立て替えて支払うことを「代位弁済」、支払った日のことを「代位弁済日」といいます。
 

その後、当該求償債権は債権回収会社などに点々と債権譲渡が繰り返され、最後の譲受人が債権回収を専門にやっている弁護士法人に依頼して、督促状をご本人宛に発送いたしました。

ただ、上記のとおりご本人は医療的な問題で成年後見人の関与が必要と判断され、私が家庭裁判所から選任されておりましたので、当該督促状は当事務所に転送されてきました。 
 

2 法律的な問題点

 

(1)基本的には支払義務はある

ご本人が家賃を支払っておらず、保証会社が代位弁済をした時点で本人は保証会社に対してその分を支払う義務があります。これは成年後見人が選任されていても結論が変わるものではありません
 

(2)交渉で減額または免除してもらう

今回のご本人は生活保護を受給されているような状況であり、とても支払えるような資産状況にはありませんでしたので、その旨を告げて大幅な減額や免除をお願いするということが考えられます。結果的にこの手段は執っておりませんが、債権者の承諾が必要となりますのでハードルはかなり高いと思います。
 

(3)自己破産等の法的手続きを執る

自己破産の申し立てを行い、免責が許可されればすべての負債の支払義務が無くなりますので、最終手段としては自己破産等の法的手続きを執ることも考えられます。ただ、今回のケースでは、自己破産をするまでの大きな負債ではありませんでしたし、別の方法で解決できたためこちらは選択しませんでしたが、他に負債があるようであれば自己破産という選択肢も十分あったと思います。
 

(4)時効の援用を考える

消滅時効に関しては、通常の家賃の未払いと、保証会社が代位弁済をした場合とで分けて考える必要があります。
 

①通常の家賃

通常の家賃の未払いであれば、毎月の家賃の支払期限から5年経過するごとに消滅時効の期間が満了していきます。

本日(令和4年(2022年)7月13日)を基準に考えると、平成28年(2016年)1月末支払分から平成30年(2018年)12月末支払分までのおよそ3年間に渡って家賃を支払っておらず、現時点で消滅時効の援用をする場合は、平成28年(2016年)1月末分から平成29年(2017年)6月末支払分までの賃料については消滅時効を援用することにより支払義務がなくなりますが、平成29年(2017年)7月末支払分から平成30年12月末支払分までの賃料についてはまだ5年が経過しておりませんので、支払義務があることになります。
 

②保証会社の求償債権

上記のとおり、保証会社が大家さんに代位弁済をしている場合は、大家さんではなく保証会社への支払義務があります。この場合、消滅時効がスタートするのは代位弁済日となります。

例えば、平成28年(2016年)1月から平成29年(2017年)6月末まで入居しており、一切家賃を支払っておらず、平成29年(2017年)7月31日に保証会社が大家さんに代位弁済をしたとします。

保証会社が代位弁済をしていない場合は、すべての家賃について5年が経過しておりますので消滅時効の援用により支払義務は無くなりますが、今回は保証会社が平成29年(2017年)7月31日に代位弁済をしており、本日(令和4年(2022年)7月13日)時点ではまだ5年が経過しておりませんので、消滅時効は完成しておらず、全額の支払義務があることになります。
 

そして、今回当事務所に督促状が届いた案件においては、代位弁済日から5年以上が経過しておりましたので、消滅時効を援用して無事終了となりました。 
 

3 注意点

 

消滅時効の援用をするに際して、以前記載した点もありますが、いくつか注意点がございますので記載いたします。
 

(1)時効更新事由

未払い賃料に関し、大家さんや保証会社から訴訟等を起こされており、判決や訴訟上の和解をしている場合は、その時から10年間は時効にはなりません

また、大家さんや保証会社との間で、分割支払い等の和解をしていて、支払っている場合は、その最終支払日から5年間は時効にはなりません。この点を悪用し、保証会社の担当者が自宅を訪問し、「とりあえず1000円だけでも支払って」と言われて、仕方なく支払ってしまうと、時効の援用ができなくなる可能性がありますので注意が必要です(支払ったとしても時効の援用ができる場合もありますがハードルが高くなります。)。
 

(2)法律専門職等からの通知でも問題ない

弁護士や司法書士等の法律専門職等、または専門業者である債権回収会社から督促状が届くと時効は使えないと誤解される場合がありますが、全然そんなことはありません。すでに消滅時効が完成していると知っていながら督促状を送ってくる弁護士法人や債権回収会社はたくさんあります

というのは、消滅時効で支払義務が無くなるのは、あくまで「消滅時効の援用」をしたときであるため、援用されていない段階では請求することは問題無いからです。
 

(3)債権譲渡されていても問題ない

今回の当事務所のケースのように、実際に請求してきたのは保証会社ではなく、保証会社から転々と債権譲渡がされ、最終の債権者から依頼を受けた弁護士法人からでしたが、そのような場合でも消滅時効の起算日が変わることはありません。

したがいまして、債権譲渡の日ではなく、通常の家賃であれば毎月の支払日、保証会社の代位弁済日を基準として判断します。
 

(4)内容証明郵便で届いた

多くのケースが普通郵便やハガキで督促状を送ってきますが、稀に内容証明郵便で届くことがあります。少し物々しい感じがしますが、内容証明郵便であっても結論は何も変わりません

ただし、特別送達という郵便方法で送られてきている場合は、裁判所からの郵便であり、何らかの手続を執られていることは間違いありませんので、至急対応する必要があります
 
 

いずれにしても、債権者から督促状が届いた時点でお近くの弁護士や司法書士にご相談いただいた方が正確な判断ができるかと思いますので、お気軽にご相談ください。

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4月 08 2022

時効の援用は弁護士または司法書士にご相談ください。

先日、消滅時効に関する記事を記載いたしましたが、今回も時効の話になっております。

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前回、時効の記事において、明確に解決できない場合がある旨を記載いたしました。これは借主側が借金の存在を認めるような行為をしていた場合に、それが民法152条のいう「承認」に該当するかで争いがある場合、通常は借主側が時間と費用をかけて債務不存在確認訴訟を提起することは考えにくいため、貸主側が何もしなければ、次の時効完成のときまで明確に解決したかどうか判断できないことによるものです。
 

このような難しいことだけではなく、ご本人さんとしてはすでに5年以上返済していないので時効が完成していると思われているものの、実際には2年前に和解して数回返済していたということもあり、時効が完成していないという事もありました。
 

さらに、今回新たに起こった事由として、差押えの取下げがあった場合に時効が更新されるのかという点も問題となりました。
 

民法148条において強制執行をした場合には時効は更新されるものの、取り下げた場合には6か月は時効完成が猶予されるものの時効の更新はされないこととなっております。

ところが、100万円の貸金を回収するために預貯金の差押えをしたところ、口座にまったくお金が無かったため取り下げた場合、時効は中断(更新)するとした大正時代の判例があります。

また、口座に0円ではなく10円が残っていたものの、差押債権者としては10円を回収するためにそれ以上の費用(例えば送金手数料)がかかるのはムダなので、10円は回収せずに取り下げるということがあります。もちろん、費用がかかっても10円は回収し、残部は取り下げるというケースもあるでしょう。

この場合、明確な判例は無いのですが、恐らく前者であれば時効更新はしないと思われますが、後者に関しては10円については強制執行を終えておりますので全体として時効は更新すると思われます。 

ちなみに、本件とは直接関係ありませんが、従前は差押されていることを債務者が知らない間は時効更新事由にならないとされていました(実際、原審である東京高裁は更新しないと判断していました。)が、令和元年9月19日の最高裁判決により、債務者が差押えされていることを知らなくても時効は更新するとなっておりますので注意が必要です。

→ 最高裁サイト

→ 判例全文(PDF)
 

いったん差押えをしたけど取り下げたという場合、単に取り下げたという事実だけでは時効が更新しているのか、更新せずに完成しているのか明確に確定できないことがあり、この点は時効が完成しているとして突っぱねて債権者の判断に任せるか、債権者や裁判所にて調査が必要となり、場合によっては債権者と交渉をすることになると思います。
 

このように、時効の援用は、明らかに時効が完成していると思っていても実際には完成していないことや争いがあることが結構あり、時効援用通知を債権者に発送する前に調査をする必要があります。

この点、弁護士や司法書士であれば事前の調査は可能ですし、上記のとおり争いがあった場合でも債権者と交渉することもできます
 

一方、他の士業の方だと、依頼者の方から依頼を受けて内容証明郵便を発送することは可能ですが、それで解決しなかった場合には何もできないという大きな不利益があります。
 

したがいまして、一見簡単そうに見えて時効援用は難しいので、弁護士または司法書士にご相談いただいた方が良いと思います。

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1月 07 2022

時効の援用をするも明確な解決ができない場合

基本的に、消費者金融やカード会社などの負債については、最後の返済予定日から5年間返済しないと時効となり、援用することによって返済義務が無くなります。

今回、時効の援用をしたものの明確な解決に至らなかったため、この点についてまとめたいと思います。

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1 時効援用の方法

上記のとおり、5年間返済しないと時効が完成し、時効の援用をすることで返済しなくても良くなります(民法166条1項民法145条)。

具体的に申し上げると、5年間経過後に債権者に対して、「消滅時効が完成したので援用します。」という通知を送ることになります。この通知の方法については法律上特に決まりが無いため、直接口頭で伝えても良いですし、はがきや手紙、メールやLINEで通知しても構いません。ただし、債権者から「そんな通知は受け取っていない」と言われてしまうと困るので、通常は記録が残る方法である内容証明郵便で通知をすることが一般的です。
 

2 時効の援用ができない場合

いくつか時効の援用ができないケースがあります。

まず、当たり前ですが時効の期間が満了していない場合です。上記のとおり借り入れの返済については最終の返済予定日から5年であり、最終の借入日から5年ではありません。とすると、借入日から5年経過した時点ではまだ満了しておらず、その時点で時効の援用通知を送っても無意味となってしまいます。
 

また、途中で債務承認をした場合には時効が更新され(民法152条)、その時点から5年が経過する必要がありますし、訴訟等を起こされていた場合は判決等が確定したときから10年が経過しなければ時効は完成しません(民法169条1項)。
 

さらに例外的なケースとして、例えば債権者が未成年者で親権者等が不在の場合には時効は完成しないことになっています(民法158条)。 
 

3 時効援用は一方的な通知で終わる

 

時効援用の通知を発し、債権者にその通知が届けば法律上は効力を生じます。債権者から「受け取りました」とか「時効の援用をされたことを認めます。」というような行為が無くても自動的に返済義務は無くなります。
 

とすると、仮に時効が完成していないにも関わらず時効援用通知を発し、債権者としては特に反論をしなかったものの、その1年後に債権者が実は時効が完成していないことに気づいて貸金請求をしてくるということもあり得ます。
 

もちろん、私どもがご依頼をお受けする場合には、いきなり時効援用通知を発送するのではなく、まずは債権者に対して受任通知を発送して取引履歴を取り寄せて、時効期間が満了しているかどうかの確認や過去に訴訟を起こされていないかどうかを確認をしてから時効援用通知を発送いたします。
 

さらに、アコムやプロミスなどの大手の消費者金融等の場合には、交渉をしたうえで返済義務が無くなった旨の書面を発行してもらうこともあります。 
 

4 明確な解決ができなかったケース

 

上記のとおり基本的には通知を発送すれば完了するのですが、債権者から「過去に債務承認をしているので時効はまだ完成していない」と主張されることがあります。
 

例えば、すでに時効が完成していると分かっていながら、突然債務者の自宅を訪ね、「とりあえず100円でも良いから払ってくれればいったん帰ります。」と告げ、債務者としても100円であれば良いかと思って支払ってしまうことがあります。そうすると、外見上は債務承認をしたことになってしまいますので、時効の援用ができなくなると考えることもできます。
 

ただ、実際にはこのようなケースでは債務承認に当たるとは考えられておらず、問題なく時効の援用ができるケースが多いです。
 

もっとも、このような場合には債権者から証明書などを発行してもらうことはできませんので、もしかしたら将来的には時効が完成していないとして訴訟を起こされる可能性も無いわけではありません。かといって、債務不存在の訴訟をこちらから起こすのも不経済ですので、そのようなことを行うことは無く、結果として「なんとなく終了」ということになります。
 

先日も、同じようなケースで時効援用通知を送ったところ、時効は完成していないとの主張をされましたので、「そのようにお考えなのであればしょうがないので、訴訟を提起してください。」と告げましたが、その後特に何もありません。実際、当該ケースでは、ご本人は年金受給者ですので、仮に債権者が勝訴したとしても差し押さえる財産も無いので訴訟を起こすことは無いと思います。
 
 

このように、時効の援用については明確な解決とはならないまま終わることがあります、というお話しでした。

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12月 28 2021

年末年始の業務について

本日をもって今年の業務がすべて終了となります。今年もご依頼いただきましてありがとうございました。
 
 


 
 

年末年始の業務時間は下記のとおりとなり、12月29日以降にご連絡いただきましたメールについては、1月4日以降に順次返信させていただきます
  
 
 

令和3年12月28日(火)18時まで 通常営業
 

令和3年12月29日(水)~令和4年1月3日(月) 冬期休業
 

令和4年1月4日(火)9時から 通常営業
 
 

以上、よろしくお願いいたします。

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3月 17 2021

総額表示について

消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」という長い長い法律の規定により、特例により令和3年3月31日までは消費税込みの総額表示をする必要がありませんでしたが、令和3年4月1日から総額表示が義務付けられることとなりました。
 

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それに伴い、(税別)と表示していた当事務所の報酬等についてすべて税込み表示に変更いたしました。 

なお、あくまで消費税のみの変更であり、純粋な当事務所の報酬については変更はございません。
 

以上、お知らせでした。

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