11月 13 2014
今,1番ホットな遅延損害金問題
最近の過払金請求手続で1番ホットな争点は,遅延損害金問題だと思います。 2番目は17条書面改定後の悪意の受益者問題でしょうか。
この「遅延損害金問題」について,あまりよくわからんという方もいらっしゃると思いますので,簡単(?)にまとめたいと思います。
そもそも遅延損害金とは
知人間の貸し借りなどを除き,銀行やカード会社からの借り入れなど,誰かからお金を借りた場合はほぼ間違いなく利息が付く契約になっており,住宅ローンであれば1%前後(10年固定),自動車ローンだと3%前後,消費者金融やカード会社のキャッシングだと18%程度というのが多いと思います。
この借り入れの返済について,特に問題が無ければ元金を返済する時に契約時に定められた利息を付加して返済すれば良いのですが,もし,返済に遅れてしまった場合,翌日以降の返済については,利息ではなく遅延損害金という高い金利で計算される契約になっており,住宅ローンや自動車ローンだと14%程度,キャッシングについては,20%程度になっていると思います。ちなみに,知人間の貸し借りで無利息になっていたとしても,返済に遅れた場合は,契約に遅延損害金の定めがなくても5%の遅延損害金を請求することが可能になります(民法419条・民法404条)。
ですので,住宅ローンは何も問題なければ1%程度なのに遅れてしまうと14%ということは,支払う金利が14倍になるということです。住宅ローンは,元本が数千万円単位となりますので,遅れるイコール破綻ともなりかねませんので,注意しておきましょう。
遅延損害金とみなし弁済
消費者金融業者は,旧貸金業法43条に規定された「みなし弁済」が適用されるとして,25%から29%程度の利息を請求していました(平成12年以前は40%程度でした)。ただ,平成18年1月の最高裁判決により,事実上「みなし弁済」が適用される余地が無くなってしまったため,利息制限法所定金利である15%~20%の金利に引き直し計算をせざるを得なくなりました。この利率の差による払い過ぎたお金がいわゆる「過払金」ということになります。
もっとも,返済に遅れた場合に遅延損害金利率で計算しなければならないのは,みなし弁済の適用の有無に関係はありませんので,業者としては少しでも返還額を抑えるために,一度でも返済に遅れた場合は利息制限法所定利率ではなく遅延損害金利率で引き直し計算をすべき旨を主張してきます。今は利息制限法が改正されて遅延損害金利率の上限は20%となっていますが,改正前に契約した分については改正前の利率が適用されるため,遅延損害金利率での計算が認められれば最大で29.2%(21.9%~29.2%)で計算することができます。とすると,業者としては,「みなし弁済」の適用による25%から29%程度の利息は請求できなくても遅延損害金としての21.9%から29.2%が請求できれば,計算金額としては概ねみなし弁済が認められるのと同じことになりますので,遅延損害金利率での計算に力を入れているわけですね。
原則通りだと業者の言い分の方が正しい
では,遅延損害金の請求について,実際はどのようになるのでしょうか。
この点,大原則としては業者の言い分の方が正しいです。つまり,契約書には返済に遅れた場合は,遅延損害金利率で計算する旨が記載されており,この利率が利息制限法所定利率内であれば,遅延損害金利率で計算することに何の障害もありません。
また,返済に遅れた場合は遅延損害金利率で計算することに加えて,それまでに残っている残金を全額一括で請求することができるという規定もされています(期限の利益喪失条項)。ですので,業者としては,返済に遅れた場合は一括で請求することができ,全額返済されるまでは完済するまでずっと遅延損害金利率で計算しても良いということになります。
遅延損害金利率での計算に対する反論
では,業者の遅延損害金利率での計算に対してはどのような反論があるのでしょうか。
(1)期限の利益の再度付与・宥恕(ゆうじょ)
上記のとおり,返済に遅れた場合は遅延損害金利率で計算するのみならず,残金を一括で返済するように請求することができますが,この規定が存在する理由は,返済に遅れるような人は信用できないので,一切の取引を打ち切って全額の返済を求めることにあり,かつ,遅れたことに対するペナルティが遅延損害金ということになります。
しかし,現実的に一度返済に遅れた程度で取引が打ち切られたり,一括で全額の返済を求められることなどありません。なぜなら,消費者金融と取引される方の大多数の方が多少なりとも返済に遅れることがありますので,一度の延滞くらいで取引を打ち切っていたらお客さんがいなくなってしまいますし,分割で返済を受け続けていた方が儲かるからです。ですので,遅れたとしても,取引を打ち切られて一括返済の請求を受けるどころか,追加の借入だってすることができるケースがほとんどだと思います。
とすると,期限の利益喪失条項の趣旨は,上記のとおり,信用できない人だから一括で請求できるという規定なのに,一括で請求するどころか追加の貸付までしているわけですから,改めて期限の利益を与えた,もしくは期限の利益の喪失を宥恕した(許した)と考えることができます。
ということで,業者は期限の利益を喪失していない(返済に遅れていない)扱いをしているのであるから,遅延損害金利率ではなく利息制限法所定利率で計算すべき,と反論することになります。もっとも,再度付与の場合は,「再度」付与というくらいですから,いったん期限の利益を喪失していることが前提となっているため,遅れた数日分は遅延損害金利率で計算するという結論になりやすいです。
(2)信義則違反
まず,「信義則」というのは,正式には「信義誠実の原則」というもので,契約をしている当事者などは,互いに相手の信頼を裏切らないように行動をしなければならないという原則を言います(民法1条2項)。法律には,信義則に違反した場合の効果は規定されていませんが,信義則違反によって,法律上認められる権利が認められなくなったり,損害賠償責任を負うこと(契約締結上の過失など)があります。
では,遅延損害金問題においてどのような場面で信義則違反になるのでしょうか。
例えば,遅れて返済したものの,業者から発行された領収書には,返済したお金が遅延損害金ではなく利息に充当されている記載があったり,次回の返済予定日の記載があったとします。とすると,一般的な方の認識として,業者から発行された領収書に「利息に充当された記載」や「次回の返済予定日の記載」があったすると,今回の返済は遅れていないと誤解することが多分にありますよね。だって,返済に遅れていて期限の利益を喪失しているのであれば,返済したお金は利息ではなく遅延損害金に充当されるべきですし,すぐに一括で返済しなければならないわけですから「次回返済日」というのはおかしいですよね。このような業者の対応は,借主の誤解を招くような行為といえます。
また,返済に遅れた時に業者から連絡が入ることがあると思いますが,その時に「遅れた分は遅延損害金で計算するけど,ちゃんと返済してくれればそれ以降はまた普通に戻るから早く返済してね。」と言われたとします。とすると,契約書の記載に関係なく,「返済した以降は遅延損害金ではなく元の利息に戻るんだ」と誤解することになります。
さらに,何度も遅れているのにまったく督促の連絡もなく,追加の借り入れをすることができ,返済に遅れてからも問題なく10年も取引が続いていたのであれば,まさか10年も前に自分が遅れていたなんて認識することは難しいですよね。
これらはあくまで例えですが,このような業者の対応により,借主としては返済に遅れているにもかかわらず遅れていないと誤解してしまっており,かつ,業者は借主が誤解しているとわかっているにもかかわらず誤解を解くような対応をしていないような事情があったのであれば,その後に業者が「実は遥か昔に一度返済に遅れて以降は遅延損害金で返済すべきだ」と主張してきても,「業者の対応を信頼し,まさか自分が返済に遅れているなんて認識していなかったんだから,業者の遅延損害金で計算すべきとの主張は信義則に違反しており許されない!」と反論することになります。
もっとも,上記を見てもらうとわかるとおり,個々のお客さんによって事情が違いますので当然結論も分かれます。実際に,同じ業者(シティズ(現アイフル))の事案であるにもかかわらず,最高裁で同じ日に結論が正反対になっている判決が出ているくらいです。
信義則違反の主張が認められた事案(最高裁平成21年9月11日判決。平成21年(受)138号)
信義則違反の主張が認められなかった事案(最高裁平成21年9月11日判決。平成19年(受)1128号)
なお,信義則違反の場合は,期限の利益の喪失の主張自体が信義則違反ですので,遅れていない分のみならず,取引全体を利息制限法所定利率で計算するという結論になりやすいです。
(3)ボトルキープ論
今となっては,最高裁で敗訴していますので今後どうにかなる理論ではないんですが,過去にはこのような考え方もありました。
この点については,最高裁での敗訴判決が出た時に記事を書いておりますので,こちらをご覧ください。
→ 【判例紹介】証書貸付(元利金均等払)における遅延損害金問題
(4)訴訟法上の排斥
実際の取引うんぬんではなく,訴訟固有の理由において遅延損害金の主張が認められないこともあります。
①期限の利益喪失条項の存在を立証しない
業者に当時の契約書が無いなど,訴訟において業者側が契約の中に期限の利益喪失条項があることや約定返済日,遅延損害金利率などの立証ができない場合は,期限の利益喪失や遅延損害金利率による請求が認められません。
②時機に後れた攻撃防御方法
訴訟に入ってから遅延損害金のことはまったく言っていなかったのに,訴訟の終わり間際に遅延損害金の問題を持ち出した場合,訴訟の完結を遅延するとして,遅延損害金の主張を認めないことがあります(民事訴訟法157条)。ただし,最近はほぼ間違いなく訴訟の初期段階で主張してきますので,時機に後れた攻撃防御方法で排斥されることは無くなっていくと思います。
これらの場合は,当然,全体として利息制限法所定利率で計算することになります。
最近の状況
全国の裁判所のデータを持っているわけではありませんので,あくまで私や私のまわりの司法書士等が得た情報レベルでしかありませんが,業者の主張が全面的に認められたという事例は割合としてはかなり少ないと思います。
例えば,先日当事務所が取得した判決としてアップロードしたものも,期限の利益の再度付与により全部を遅延損害金利率で計算すべきとの主張は認めませんでした(なお,遅れたのが数日しかなく金額の差として数十円しか無かったので,裁判の争点を減らすために当初から遅れた分は遅延損害金利率で計算しています。)。
ただし,今後も大体勝てるかというとそうとも限りません。
当事務所では,遅れて以降すべてを遅延損害金利率で計算すべきとの判決が出されたことはありませんが,まさに今月に入って,愛知県内の裁判所で遅れたときから以降の取引をすべて遅延損害金利率で計算すべきとの判決が出ているようです(ただし,控訴しており確定はしていません。判決書の内容も未確認です。)。また,全国の至る所で,遅れた時からすべて遅延損害金利率で計算すべきという業者の主張を認めるような判決が出されており,証拠として判決書が出されることもあります。
下記のとおり,証拠として出された関東地方の裁判所で出された業者の主張を認める判決について,該当する判決理由の部分だけアップしておきます。この判決は約定返済日から2日遅れて返済して以降,すべての取引を遅延損害金利率で計算するとしており,過払金を請求できるどころかまだ借り入れが残っているとしています。恐ろしい・・・。
少しでも勝訴の可能性を高くするためには,やはり証拠が多いに越したことはありませんので,もし,お手元に契約書や領収書などの関係書類が絶対に捨てずにおいてください。たった1枚の領収書があることで逆転することだってありますからね。
ということで,なかなか難しい話かもしれませんが,現在ホットな争点である遅延損害金問題でした。
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