7月 13 2015
泣く子も黙る包括根保証契約
先週末,こんな記事がありました。
記事で説明されている情報が少ないため,推測になってしまう部分がありますが,今は法改正によりあり得ない部分もありますので,誤解の無いよう補足しておきたいと思います。
記事の内容
「夫の経営する会社のみずほ銀行に対する債務について,包括根保証契約を締結した妻がこの包括根保証契約について何も知らされておらず,それにより会社の債務を負うことになった結果,破産した。」というものです。
上記記事の「妻」が本当に知らなかったのかどうか私にはわかりませんが,もし知らなかったのであれば,自分の借金ではない借金で破産させられるのはやりきれない思いもあるでしょう。
泣く子も黙る包括根保証契約
上記記事で問題になっているのは,包括根保証契約というものです。この契約は,保証期間及び保証金額の制限無く主債務者の債務を保証をするというもので,保証人にとっては白紙の契約書にサインをしてしまうくらい恐ろしい契約です。
似たようなものに,根抵当権というものがあります。これは一定の限度額(極度額)まで一定の取引によって発生した債務について,不動産をもって担保に供する制度です。例えば,夫と金融機関の銀行取引によって発生する債務について,妻が所有する不動産に極度額2000万円の根抵当権の設定をした場合,夫と金融機関の取引について夫が支払えなくなった場合は,妻所有の不動産を強制的に売却し,その中から2000万円を優先的に返済してもらうことができることになります。逆に言えば,最大でも2000万円ですので,どうしても不動産を取られたくないというような場合は,妻は2000万円を現金で支払えば不動産を売却されることを防ぐこともできます。
ところが,包括根保証契約は金額の制限がないため,上記ニュースの事案だと夫の会社が仮に100億円の負債を負ってしまった場合,妻は100億円を返済しなければなりません。しかも,主債務者である会社が借金をする際に,その都度包括根保証人である妻の承諾など必要ありませんので,妻は当初は1億円の負債を保証していたものが,知らないうちに100億円の負債を保証していたということもあり得ます。
法改正
上記のとおり包括根保証というのは,白紙の契約書にサインをしてしまうくらい,恐ろしい契約であることから,借主側の保護のため,平成17年4月1日に保証契約に関する改正が行われました。今後日常生活を送る中で重要な点もありますので,覚えておいて損は無いと思います。
<保証契約は必ず書面で>
改正前までは,保証契約は口頭でも有効に成立することになっていました。しかしながら,保証によるトラブルを少しでも防ぐため,保証契約は書面でしなければならないことになりました(民法446条2項)。
なお,これはすべての保証契約に適用されますので,包括根保証だけではなく,通常の個人間の貸金に関する保証や住宅ローンの保証などもすべて書面で行う必要があります。
<上限を決めましょう>
包括根保証契約を締結する場合,負担する債務の上限である極度額を必ず定めなければならないこととなっています(保証人が個人の場合に限る)。これは保証契約の内容ですので,当然ながら極度額も書面に記載する必要があります(民法465条の2第2項)。
<期間は最長5年です>
保証する上限額が定められているとはいえ,永遠に保証するのは大変です。そこで,保証人が個人の場合は保証期間は最大で5年間となっております(民法465条の3)。
したがって,現在はニュースになっている包括根保証契約のような無制限な期間及び金額について責任を負わされることはありませんのでご安心ください。
なお,「書面でなければ保証契約は有効に成立しない」という点は重要ですので,これは覚えておかれた方が良いと思います。
たまにですが,「親がお金を借りる時に,私が知らないうちに私を保証人にしたため,債権者から返済を迫られていますがどうしたらいいでしょうか?」というご相談を受けることがあります。保証契約を締結するに当たって書面で行わなくても良い時代でもまったく関与していないのであれば当然ながら保証人になっているということはあり得ないのですが,保証契約は口頭でも成立してしまうので,本当に保証契約が成立していないのかはなかなか判断ができませんでした。しかし,書面で行うことが義務化されたことにより,「債権者に保証契約を締結した際の書面をもらってください。もし書面が無いようであれば,契約は成立していませんので支払う必要はありませんよ。」と,確実な回答ができることになりました。
最後に
今は金融機関の契約は厳格になってきているので,まったく説明をしないで契約をするということはほとんど無いと思いますが,上記記事だと1978年の契約ということですので,もしかしたらそのような杜撰な契約をしていたのかもしれません。ただ,30年以上前の契約ということは,当時の金融機関の担当者は退職している可能性が高いですし,死亡している可能性だってありますので,「説明した・説明していない」ということを立証していくことはかなり難しいと思います。
この手の裁判は,訴えを提起したときは話題になることはあっても,金融機関側が敗訴するようなものでもない限り,結果について報道されることはほとんどありませんので,どういう結論になったのかは,世間は知らないまま終わってしまうかもしれませんね・・・。
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