はなみずき司法書士事務所
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4月 16 2013

債務整理の依頼者が弁護士を訴えた事件の最高裁判決

全然知りませんでしたが,債務整理の依頼者が,債務整理をした弁護士を訴えるという事件の最高裁判決がありました。 

 

 

ざっくり事案を説明すると次の通りです。 

 

Aさんは5社に対して合計250万円の債務を負っていた。 

 

弁護士に債務整理を依頼した(債務整理報酬30万円,過払い報酬30%)。 

 

このうち,3社については過払いであり,約160万円を回収した。また,残る2社についてはB社約40万円+C社約10万円の合計約50万円の債務が残った(ただし,C社の金額は弁護士の計算結果によるものでC社の主張額は約30万円)。 

 

弁護士は,B社,C社に対し,「8割を一括で返済するから和解してほしい。もし,和解できない場合は時効完成まで待つ。訴訟してもいいけど,無駄だと思いますよ。。」という趣旨の提案をし,B社については和解できたものの,残るC社については和解できなかった。 

 

C社との和解が難しいため,過払金から報酬や弁済金等を控除し,残金を依頼者に返還した。その際に,弁護士は,「時効完成まで待つ方針だけど,もし,C社から裁判等を起こされた場合は対応するから連絡してね」,と伝えた。 

 

実は,弁護士は他の依頼者から債務整理を放置したとのことで訴えられており,その旨が報道されていたので,Aさんは弁護士を解任し,別の弁護士に債務整理を依頼した。 

 

別の弁護士は,C社と交渉し,約50万円を分割で支払う内容で和解が成立した。 

 

当初の弁護士の債務整理方針がおかしく損害を被ったとしたAさんが弁護士を提訴。 

 

これについて,原審の福岡高裁は,弁護士はちゃんとAさんに説明しているから問題ない,との判決を出していました。そして,今回の最高裁判決です。

最高裁サイト
判決全文(PDF)

 

 

ざっくり判決内容を記載すると,

「弁護士が採った時効待ち方針は,C社がAさんに対して裁判等をしないことを一方的に期待して残債権の消滅時効の完成を待つというものであり,債務整理の最終的な解決が遅れるという不利益があるばかりか,当時の状況を考慮すると,C社がAさんに対する残債権の回収を断念し,消滅時効が完成することを期待し得る状況にはなかったのであるから,C社から提訴される可能性を残し,一旦提訴されると法定利率を超える高い利率による遅延損害金も含めた敗訴判決を受ける公算が高いというリスクをも伴うものであった。(中略)もし,時効待ち方針を採るのであれば,Aさんに対し,時効待ち方針に伴う上記の不利益やリスクを説明するとともに,回収した過払金でC社に対する債務を弁済するという選択肢があることも説明すべき義務を負っていたというべきである。」

として,Aさん勝訴としています。 

 

 

簡単に言うと,時効が完成するまで放置するという方針は極めてリスクが高いにも関わらず,それをほとんど説明せずにその方針を採ったことは依頼者に対する説明責任を果たしていないということです。 

 

正直なところ,いろいろ突っ込みどころが・・・

 

何はともあれ,報酬が高い!
債務整理報酬が30万円ってことは,1社当たり6万円です。しかも,C社に関しては和解はできていないので,実質的には4社で30万円です。とすると1社当たり7.5万円!
そして,過払い報酬も30%(税込31.5%)!

 

 

次に,時効待ち方針という作戦が意味不明です。上記最高裁は,時効待ち方針はリスクが高いんだから説明しろとのことですが,そもそも上記の事案において時効待ち作戦をとるということ自体がナンセンスです。

 

一般的に,業者は時効が完成する5年が経過する間際に訴訟等をしてくることが多いです。訴訟等を行うことで時効の完成を防ぐことができるからです。ただし,債務が極めて少額で訴訟費用だけで足が出る場合や借主が行方不明になっていて訴訟をしても意味がないという場合には訴訟をしてこないケースもあります。
なので,業者が借主の所在を把握できておらず,しかも時効完成まであと少しという状況であれば時効待ち作戦というのもありかもしれません

ところが,今回のケースだとすでに弁護士が間に入っているわけですから,依頼者Aさんの身元はバッチリC社にバレています。また,C社主張額は約30万円なので訴訟費用を使っても十分元が取れます。なので,時効待ち方針を採ったとしても,5年経過前に極めて高い確率でC社に提訴されると思われます。また,最高裁も触れていますが,提訴されることによって,まるっと遅延損害金が付加されますし,場合によっては訴訟費用まで負担しなければなりませんが,そんなリスクを負わなくても今回のAさんは過払金でC社の債務を一括で返済できるという,とても恵まれた状況にあります。

余談ですが,まったく分割弁済や利息カットの和解に応じない業者として,日本保証「武富士」承継会社)やクレディア,旧ネオライン系などがあります。これらの業者は,和解に応じないどころか一定期間遅れた時点でガンガン提訴してきます。上記判例のC社がどの業者なのかわかりませんが,和解に応じない業者は訴訟対応も迅速であるため,ますます時効待ち作戦はあり得ません。

 

以上の前提で時効待ち方針を採るなどあり得ません。だからこそ,新たに受任した弁護士もすぐにC社と交渉し分割弁済で和解したのだと思います(もっとも,分割金額が50万円になっているため,相応の遅延損害金が付されていると思われます)。

この点について,一切分割には認めないとか利息の減免はしないという東京弁護士会三会統一基準に応じない業者の言いなりになると,せっかく苦労して浸透してきた三会基準の意味が無くなるとの意見もあります。もちろん,この基準のおかげでたくさんの依頼者の方が救われたのも事実ですし,当然当事務所のこの基準に沿って和解交渉を進めています。しかし,いくら声高に正当性を説いたところで,三会基準は法的に強制力があるものではないため,業者が一切応じない場合にはどうにもなりません。仮に,業者に訴えられた場合に「三会基準がぁ・・・」なんて反論しても,裁判官と相手方の失笑を買って一蹴されるだけですからねぇ。

 

 

なお,当事務所の場合,ご相談いただいた時点で時効が完成しているかどうか疑わしいという場合には,時効完成についてのメリットとデメリット(リスク)について説明し,依頼者の判断にお任せしています。

説明内容は,「ご依頼をお受けして調査した結果,時効が完成していれば時効援用の手続きを行いますが,時効が完成していない場合は時効完成まで待つことはできないので分割弁済等の和解交渉をします。もし,支払いが難しいのであれば,確実に時効が完成するまで何もしないという選択肢もありますので,ご依頼をお受けせずにお帰りいただいた方が良いかもしれません。ただし,時効完成前に提訴された場合にはキッチリ遅延損害金まで付加されますし,もう和解には応じてもらえないかもしれません。」という感じです。

また,少なくとも,ご依頼をお受けした後に時効待ち作戦を採ることはありません。なぜなら,債務整理をお受けした弁護士等は,債権者(業者)に対して,誠実かつ衡平に対応する義務があるからです。受任しておきながら,時効完成まで放置するというのは,とても債権者に対する誠実な対応とは言えませんよね。なので,ご依頼をお受けした後に,どうしても時効待ち作戦を採りたいということであれば辞任せざるを得ません

 

 

しかし,依頼者からクレームが入るだけでも大ショックなのに,依頼者に訴えられ,さらに最高裁までいってしまって日本中に公表されるなんて想像しただけでも恐ろしい・・・。そうならないよう,誠実に業務を進めていきたいと思います。

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