はなみずき司法書士事務所
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12月 16 2013

粋な(?)裁判官からの裁判欠席のススメ

友人・知人間のお金の貸し借りなど,商売としてお金を貸している人以外からお金を借りた場合,返済期限から10年が経過すると返済しなくても良くなります民法167条)。 
 
saibanchou

延滞した場合,通常は遅延損害金という名の高い利息がどんどん付いていくので,利率によっては10年近く経過すると借金が2倍,3倍と膨れ上がっていることがあります。
ただ,10年を経過したとたんに,遅延損害金どころか借金の元金すら返済しなくても良くなっちゃうわけですね。
 
 

これは,10年も放っておいたのであれば,そんな権利者(お金を貸した方)を法律で保護してあげる必要は無いという考えによるもので,法のことわざでは「権利の上に眠るものは保護しない」というように言われています。
 

また,銀行や消費者金融など,商売としてお金を貸している場合は,原則として5年になります(商法522条
なお,信用金庫から商売外の理由(住宅ローン等)で借り入れた場合は10年です。
 
 
 

さて,この時効期間ですが,債権者側から見れば,ずっと放っておくと貸金が消えてしまうことになるので,できれば時効の進行を止めたいと考えるのが普通です。その方法で一般的なのが,請求及び承認です(民法147条)。
 

請求とは,口頭や手紙による請求ではなく,裁判所を使った請求(訴訟や支払督促等)の事を指します。
一方,承認は特に制限はなく,債務者(借主)が口頭だろうが手紙だろうが,借金が存在することを認めればOKです。
 
 

上記,請求や承認があった場合には,時効期間がリセットされ,再度10年や5年といった期間がスタートすることになります。
 
 
 

このうち,今日の記事は,上記のうち請求に関するものです。
 

請求とは,上記の通り裁判所を使った請求となりますが,これにはいろいろと細かい決まりがあります。
 

時効が中断する日は,訴えを提起等をした日,つまり裁判所に訴状等が到達して受け付けてもらった日です。なので,時効が完成する前日に訴えを提起し,判決が出るころには10年経過していても問題ありません。 

そして,裁判が進み,貸主が勝訴した場合には勝訴判決が出ますが,判決に対して控訴がなければ,2週間で判決が確定します。いったん中断した時効は,この判決の確定した日からリスタートすることになります。 

さらに,時効については,10年や5年のみならず,早ければ1年で時効になってしまう債権(例えば,飲み屋のツケ民法174条))もありますが,判決が出た場合には,すべての債権について10年となります(民法174条の2)。
 

というように,判決まで行けば問題ありませんが,ここには落とし穴があります。というのは,いったん訴訟を提起したにも関わらず,途中で取り下げてしまった場合は,初めから訴訟をしなかったことになるので,結果として時効は中断しないということです。 

さらに,もう一つのポイントとして,訴えを提起しておきながら,2回連続で双方欠席すると取り下げたことになってしまうという規定があります(民訴法263条)。

 
 

かれこれ1か月ほど前ですが,某簡易裁判所に訴訟のために行きました。
通常,裁判は同じ時間に数件の事件が入っていますので,自分の番が来るまでは傍聴席で待機し,他の方の裁判を傍聴しています。
 

私の番の前の方の事件ですが,とある銀行から債権を買ったと思われる債権回収会社(原告)が訴えを提起したもので,被告が言うには自営業時代に銀行から運転資金として借り入れたが,不況にあおりで倒産し今は日雇いの仕事で日々何とか生活しているような状況なので,とても返済する余裕はないとのことでした。
また,支払期限から4年10か月程度で訴訟を提起されているようですので,残念ですが時効にはなりません。
 

ただ,この事件の特徴として,原告は裁判所に出頭しておらず被告本人のみが出頭していました。簡裁の事件については,両方欠席はダメですが,どちらか一方が出頭していれば問題なく裁判は進められることになっていますので,この点は問題ありません(民訴法277条)。
 
 

したがって,法的には時効が完成しておらず,かつ,被告が出頭したうえで借金の存在を認めているので,法的には原告勝訴の判決が出ても何らおかしくない状況にあります。
 
 

ところがです。
 
 
ここで裁判官が被告に対して一言。
 

「今日,せっかく出頭おられますが,欠席ということでよろしいですか?
 

被告は意味がわからないらしく,ずっと,
 

「?????」
 

という表情です。
 

そこで,再び裁判官が発言。端的に言うと,下記のようなことを被告に仰っていました。
 
 

裁判は,原告被告双方が2回連続して欠席すると取り下げたことになる。
原告の債権回収会社は愛知県からはかなり遠方にある会社であり,恐らく愛知県内に支店とかも無いので,次回の期日も多分出頭しない。
今日,あなた(被告)が出頭していないことにし,もし,次回も原告も出頭しなければ2回連続欠席になり,取り下げたことになる。
取り下げたことにされる頃には,すでに5年が経過しているので時効が完成する。

 

恐らく被告が弁護士や司法書士等の専門家に相談していれば,リスクがあることを前提に同じようなアドバイスをしたと思いますが,まさか中立の立場にある裁判官が,しかも法廷内でそのようなアドバイスをすることは夢にも思わずビックリしました。
 
 

被告は,上記説明について,あまり理解されていないようでしたが,裁判官のススメに従って,欠席したことにしていました。
 

そして約1か月後。
 

裁判官の予想通り原告は出頭しませんでしたので,晴れて裁判は取り下げとなりました。
今後,再度この原告が請求するのかどうかはわかりませんが,すでに時効が完成していますので,この被告は返済する必要はありません。
 

世間的には,裁判官は血も涙もないようなドライな印象があるかもしれませんが,(法的に良いか悪いかはさておき)かなり人情的な裁判官もいるようですよ。
 

なお,当事務所でも何度かこの裁判官に判決を書いていただいていますが,今のところ全件勝訴していますので,当事務所的にも非常に助かっています(笑)

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