はなみずき司法書士事務所
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6月 18 2015

最近のアイフル株式会社の作戦

アイフルの返還に関する対応は,以前とあまり変わらず訴訟前では元金の2~5割程度の和解提示しかないため,基本的には全件訴訟提起しております。 

また,訴訟提起後の流れもこれまでどおり,訴訟提起→移送申立て→却下→1~2回口頭弁論→判決→控訴→判決→全額支払いという経緯が多いです。ただ,最近は移送申立てをされないケースもありますし,1審判決後に和解して支払われたというケースもあります(控訴審の分だけ返還が遅くなってしまうことを考慮し,満額から千円単位だけカットして和解したケースがあります。)。
 

なお,訴訟提起後の和解提案でも最大で元金の7割程度であるため,訴訟提起後で判決前に和解したケースはほとんどありません。
 

さて,そんなアイフルですが,最近は債務不存在確認の訴えを先に提起してくるという話が出ております。 

これの何が問題なのかについて解説したいと思います。 
 

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二重起訴の禁止

  
民事訴訟法142条に「裁判所に係属する事件については,当事者は,更に訴えを提起することができない。」と規定されております。
 

例えば,Aさん(名古屋在住)がBさん(東京在住)に対して,100万円の返済を求める訴訟を名古屋で起こしたとします。それとまったく同じ内容の100万円の返済を求める訴訟をAさんが東京の裁判所で起こすことはできない,ということになります(なお,名古屋と東京というように別の裁判所の例を出しましたが,名古屋と名古屋でも同じ結論になります。)。
 

これは,万が一,名古屋の裁判所と東京の裁判所で結論が異なる結論の判決が出てしまうと大変なことになってしまいますし,Bさんとしては名古屋の裁判所と東京の裁判所の両方に対応しなければならず大変だからです。
 

逆に言えば,まったく別の100万円であれば問題ありません。
 

例えば,名古屋の裁判が平成25年6月18日にAさんがBさんに対して貸した100万円の返済を求めるものであるのに対し,東京の裁判が平成26年6月18日に貸した100万円の返済を求める場合です。この場合,事実がまったく別の事件ですので,名古屋と東京で別の結論が出ても何ら問題ありません(平成25年の100万円はすでに完済したけど,平成26年の100万円はまだ返済していないということもあり得ます。)。また,Bさんとしても移送等の手段を使って,どちらかの裁判所にまとめることも可能です。
 
 

給付訴訟と債務不存在確認訴訟

  
一方,一見すると違うような裁判だとしても,実質的には同じ内容の裁判の場合も二重起訴に該当します。良くあるのが,給付訴訟債務不存在確認訴訟です。
 

給付訴訟というのは,相手に何らかの行為を要求する訴訟であり,典型的な例は,貸金請求訴訟や不当利得(過払金)返還請求訴訟のように金銭の支払いを求める訴訟となります。
 

また,債務不存在確認訴訟というのは,文字通り債務がないことの確認を求める訴訟となります。
 

例えば,すでに借りた100万円は完済しているにもかかわらず,その後も「100万円返せ!」と言われたような場合に,「100万円の借金(債務)なんて存在しませんよ!」ということを裁判所に確認してもらいたいときに行う訴訟です。
 

さて,この給付訴訟と債務不存在確認訴訟ですが,実は表裏一体の関係にあります。
 

上記の例でいうと,

AさんがBさんに対して,「100万円を支払え」という訴訟が給付訴訟(貸金請求訴訟)となりますが,この裁判はAさんのBさんに対する100万円の貸金(債権)が存在するか否かを争う裁判であり,Aさんが勝訴した場合は「100万円の債権がある」,Aさんが敗訴した場合は「100万円は存在しない」ということになります。つまり,Bさんとしては,わざわざAさんに対して「100万円の借金なんか存在しない」ことの確認を求める訴訟なんか起こさなくても,単にAさんが起こした貸金請求訴訟に勝てば良いですよね。
 

したがって,AさんがBさんに対して100万円の貸金請求訴訟を起こした場合,BさんがAさんに対して100万円の債権に関する債務不存在確認訴訟を提起することはできません
 

さらに,逆の順番もしかりで,先に債務不存在確認訴訟を提起された後に,貸金請求訴訟を提起することはできません。上記のとおり,債務不存在の部分について二重起訴になるためです。ただし,反訴をすることは許されます。債務不存在確認訴訟が起こされている裁判所で貸金請求訴訟の反訴を提起すれば,同じ裁判所(裁判体)で審理されますので,矛盾した結論が出ることはないからです。なお,最高裁は,反訴の提起がされた場合は先に提起された債務不存在確認訴訟は確認の利益がない(貸金請求の勝訴または敗訴でちゃんと結論が出るのだから債務不存在確認の訴えを進める意味がない)としていますので,却下されることになります。
最高裁サイト

判決全文(PDF) 
 

具体的に

 
さて,アイフルの事件に話しを戻します。
 

上記の例でいうと,給付訴訟が契約者のアイフルに対する不当利得返還請求訴訟,債務不存在確認訴訟がアイフルの契約者に対する債務不存在確認訴訟ということになります。
 

順序として,不当利得返還請求訴訟の提起→債務不存在確認訴訟であれば,あまり問題はありません。アイフルの債務不存在確認訴訟は二重起訴の禁止に該当しますので,不適法な訴えとして却下されるからです。もっとも,必ず却下という訳ではなく,移送して合わせ技(併合して)で審理する可能性もありますので,しっかり却下されるべき旨の主張はしなければなりません。
 

しかし,債務不存在確認訴訟→不当利得返還請求訴訟だと面倒なことになります。まず,不当利得返還請求訴訟は基本的には二重起訴の禁止に該当しますので,不当利得返還請求訴訟の方が却下される可能性があります。また不当利得返還請求の反訴を提起することができますが,アイフルは必ず債務不存在確認訴訟を地裁に起こしてきますので,反訴提起も地裁に起こさなければならず,当事務所のような司法書士事務所にご依頼されている場合はご本人に裁判所までお越しいただく必要があります(弁護士さんだと問題はありません)。
 

さらに,今後進めるべき裁判所をアイフルによって決められてしまうという不都合があります。例えば,当事務所のある長久手市にお住まいの場合,すぐ近くの瀬戸の裁判所で手続ができたのに,わざわざ名古屋市中区にある名古屋地裁まで行かなければならなくなってしまいます。
 

また,アイフルが先に債務不存在確認訴訟を起こしてきた場合,必ず自宅に裁判所から訴状等が送られてきます。これは弁護士さんに依頼していても司法書士に依頼していても同じです。とすると,ご家族に内緒で手続を進められているような場合に,ご家族に知られてしまう可能性があります。
 

ということで,先に債務不存在確認訴訟を起こされて良いことは何一つありません。 
 

債務不存在確認訴訟を提起する理由は?

 
なぜアイフルがこのようなことをやりだしたかというと,私見ではありますが,もう完全に嫌がらせでしかないと思います。
 

従前よりアイフルが行っていた移送の申立てはアイフルの本店がある京都に移送を求めるものですので,各地の裁判所まで行く交通費や人件費などを考えれば,(時間稼ぎの側面があるにしても)理解できないことではありません。
 

しかし,債務不存在確認訴訟は京都ではなく,顧客の住所地を管轄する地裁に提起していますので本社から支配人が出頭しなければならず,交通費を節約というメリットはありません。また,アイフルは過払金が完全に不存在(つまり0円)という訴訟を提起するのではなく,「50万円を超えて存在しない」というように,いくらかは認めたうえでの債務不存在確認訴訟ですので,実際のところはこの訴訟では何も解決しません(仮にアイフルが勝訴したとしても50万円を超えて過払金は存在しないというだけであり,「50万円を返還せよ」という判決ではありません。)。しかも,移送申立てとは異なり,債務不存在確認訴訟を提起するに当たり,数万円の実費もかかっていますからね。
 

とすると,アイフルにとって何もメリットがない訳ですから,もう嫌がらせ以外の理由は無いと思います。もし,嫌がらせではないということであれば,どんなメリットがあるのかぜひ教えてほしいものです。
 

ちなみに,同じような嫌がらせ以外の理由はないというアイフルの戦法に調停申し立てがあります。こちらがすでに訴訟を提起しているにもかかわらず,依頼者本人宛に過払金の返還に関する話し合いがしたいとして調停の申立てをするものです。すでに訴訟を提起しているので,話し合いがしたいのであれば訴訟手続内で行えば良いのであり,わざわざ調停を起こす理由はありません。
 

ただ,調停の申立てをした場合,調停に関する書類は,訴訟について弁護士や司法書士を代理人としていても必ず裁判所からご自宅宛に送付されてくるため,ご家族に秘密にしている方は困ってしまいますね。もっとも,この調停作戦は最近はまったく聞かなくなりました。 
 

今後の対応

 
ということで,当事務所では,アイフルに限り,事前に過払金の請求は行わずいきなり訴訟をする方針をとることとしました。
 

私は,「相手に何の請求もせずにいきなり訴えを提起するという行為は社会人としての常識を欠く行為である」と考えておりますので,訴訟でなければ解決できない可能性が高いとはわかっていても,必ず事前に請求書を送り,請求書に対する回答が無い場合,または回答があっても交渉がまとまらない場合に初めて訴訟を提起しておりました。しかしながら,このようなアイフルの行為は,明らかに社会常識を逸脱した無益な訴訟提起だと考えますので,それを防ぐためにやむを得ず,事前に請求せずに訴訟提起することとしました。
 

アイフルは,交渉の度に「事業再生ADRを行っており,過払い金の返還が困難であるからどうにか減額してほしい」というような趣旨のことを言ってきます。しかし,こんな依頼者にケンカを売るようなことをしておきながら,減額してほしいとの要望はムシが良すぎるとしか思えません。実際に,このようなことをされて和解しようと考える依頼者は皆無であり,理解に苦しみます。
 

今後もしっかり手続を進めていきたいと思います。

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