はなみずき司法書士事務所
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7月 08 2015

時効の援用について(文案など)

以前も書いたような気がするのですが,最近時効の援用に関するご相談が多いため,改めて記載したいと思います。 

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原則10年,例外的に5年で借金は消えます

 

「債権は、十年間行使しないときは、消滅する。」と民法に規定されており,文字通り10年経つと債権は消えてしまいます(民法167条1項)。この「債権」は貸主側からの言葉であり,借主からすれば10年経つと借金が消える,ということになります。 

また,この10年というのは原則であり,商売上の借金の場合は「商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。」と商法に規定されており,5年が経過すると時効により消滅してしまいます商法522条)。

この「商売上の借金」というのは,正確ではありませんが,ざっくり言えば貸主が金融機関や信販会社,消費者金融など,商売としてお金を貸している人(会社)から借りたような借金または貸主は金融機関等ではなくても事業資金などで借りたような借金の場合です。

なお,信用金庫や農協,労金,住宅金融支援機構などは会社ではありませんので,5年ではなく10年となります。

 

起算日はいつ?

 

条文には,「十年間行使しないときは」,「5年間行使しないときは」というように記載されていますが,そもそも10年や5年がいつからスタートするのかというと,「権利の行使ができるときから」とされています(民法166条1項)。以下,いろんなケースをまとめてみます。

 

<返済日が決まっている場合>

平成27年1月1日にお金を貸し,返済期日が平成27年12月31日の場合,いつから時効がスタートするかと言うと,平成28年1月1日からとなります。なぜなら,借主は平成27年12月31日までは返さなくても良いので,貸主はそれまでは返せとい言うことができない(権利の行使ができない)からです。

 

<特に返済日を決めていない場合>

貸したその日からスタートします。

 

<いわゆる出世払いの場合>

前提として,出世の定義(何をもって「出世」とするのか)について予め定める必要がありますが,出世した場合にはその日から,出世しないことが確定した場合はその日からスタートします。決して出世しなければ払わなければなりません。

 

<分割弁済の場合>

基本的には,個々の分割支払分ごとにスタートします。

例えば,10万円を毎月1万円ずつ,7月31日から毎月末日に支払うという場合,1万円ずつ毎月スタートすることになります。したがって,仮に7月31日の返済を怠ったとしても,消滅時効がスタートするのは1万円分だけとなります。ただし,貸金業者等からの借り入れの場合,通常は期限の利益喪失約款が入っており,一度でも支払いを怠った場合は残っている債務の全額を一括して支払うことになりますので,最初に遅れた時から全額についてスタートします。

 

なお,よく勘違いされている方がいらっしゃるのですが,最終返済日からではありませんのでご注意ください。

例えば,取引履歴を業者から取り寄せていただいたところ,最終の返済日が平成22年6月30日だったとします。今日は平成27年7月8日ですので,すでに5年以上経過しているようにも思えますが,通常,最終返済日から1か月程度先がその次の支払日となっているはずですので,実際に時効がスタートするのは平成22年8月1日頃になるはずです(この点は,契約ごとに異なります。)。したがって,最終返済日が平成22年6月30日となっている場合,恐らく消滅時効は完成していないと思います。

 

時効は過ぎるだけではダメ

 

時効という制度は,時効期間が満了するだけでなく,時効の効果を受けたい旨の意思表示したときに初めて効果が発生します(民法145条)。これを「時効の援用」と言います。

したがって,消滅時効期間が満了していたとしても,それとは関係なく返済することも可能です。ただし,時効期間満了後に一度でも返済する意思を表示したときは,もう時効の利益を放棄したとみなされ,改めて時効の援用をすることはできませんのでご注意ください。

 

時効中断事由にご注意ください

 

5年や10年が経過する前に,時効の進行を止められることがあります。これを「中断事由」と言い,よくある中断事由は「請求」と「承認」です(民法147条)。一度中断があると,それまでの進行分はリセットされ,その時点から5年や10年が経過しなければ消滅時効とはなりません。

 

<請求>

請求とは,単なる請求を受けることではなく,裁判手続上の請求を受けた場合に限り時効は中断します。具体的には,訴訟支払督促が多いと思います。

この点,訴訟等を起こされた場合は通常は知らない間に敗訴していたということは考えにくいですが,債権者に転居先を告げずに転居した場合,知らぬ間に訴訟を起こされていたということはあり得ますので注意が必要です。これを裁判所に聞いて調べることはできませんので,債権者に確認するしかありません。

 

<承認>

承認とは借金があることを認める行為であり,直接的に「借金があることを認めます!」という行為はもちろんですが,実際には返済という行為が承認をしたことになります。というのは,借金が無いようであれば返済するはずがないからです。

 

この点,上記の時効の利益の放棄とも関連がありますが,消費者金融等の債権者は,時効の主張をされないようにあの手この手で返済をするように迫ってきます。

例えば,いきなり勤務先に押しかけてきて,「借金が利息で膨れ上がっているが1000円だけでも払ってくれれば今日のとことは帰るからとりあえず払って」と言われてしまうと,同僚の目などもあるので払ってしまいますよね。そうすると,これをもって承認となってしまい,時効が中断または時効の利益の放棄となってしまいます。

なお,上記のような事例で,承認ではなく時効の利益の放棄ですが,返済したことを時効の利益の放棄とはせずに消滅時効を認めた裁判例もあります。ただ,裁判になれば必ず勝てるというものでもありませんので十分ご注意ください。

 

時効の援用はどうするのか

 

特に時効の援用について方法は決められておりませんので,債権者に伝わるのであれば,口頭でも書面でも何でも構いません。ただ,言った言わないの争いになってしまう可能性がありますので,通常は,内容証明郵便(配達証明付)で時効を援用する旨を通知することになります。

 

また,内容も特に形式が決まっている訳ではありませんので,時効を援用する旨が伝われば何でも構いません。とは言ってもそれだけではわからないと思いますので,内容証明の文案をアップしておきます。適宜修正してご利用ください。なお,消滅時効の援用通知書に押印は必須ではありませんが,押印されておいた方が良いかと思います。

→ 消滅時効援用通知書

以上,時効の援用についてでした。

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