はなみずき司法書士事務所
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9月 15 2015

特定調停成立後の過払い請求の可否(最高裁判決)

本日,過払金に関する最高裁判決が出ました。

内容としては,借主にとって良い点もありますが,悪い点もある判決です。

以下,簡単に説明いたします。 
 

事案の概要

  

借主たる甲さんは,昭和62年からユニマットライフ(最高裁判決ではA)及び平成に入ってからアイク(同B)と取引をしていました。何度か完済しては新たに借り入れるというのを繰り返していたようですが,平成10年に契約した取引について返済に困り,その2社との間で以下のような和解及び調停が成立しました。
 

ユニマット→特定調停を行い,分割弁済の調停が成立し,その後分割で弁済した。
 

アイク→任意で一括弁済する和解が成立し,甲さんは一括でアイクに弁済した。
 
 

実は,ユニマット及びアイクとも契約当初からの取引分も全部再計算すれば調停や和解が成立した時点ですでに過払いになっていたが,調停の対象としたのはあくまで平成10年以降の取引についてであり,その対象とした取引だけで再計算しても過払いにはならず,利息制限法に違反するような内容でもありませんでした。また,調停や和解書の中に「互いに債権債務なし」という文言(清算条項)が入っていました。 

この清算条項が言うところの債権債務は,事実上は「過払金と借金」という意味であり,調停や和解にて合意された過払金や借金以外は互いに何も請求できないことを確認する文言であるため,後になって過払金があったことが判明しても,「債権債務なし」の文言がある以上,過払金を放棄したものであると業者は主張してきます。 

これについて甲さんが,調停は無効であると主張して,過払金の請求をユニマット及びアイクを吸収したCFJに対して請求する訴訟を起こしました。
 

その結果,東京地裁及び東京高裁はともに,ユニマットとの調停について,「利息制限法に違反する内容の調停であるから,公序良俗に反し,調停は全体として無効である。」としました。これは,凄いことです。もし,これで勝てるとなると今まで調停の無効を争うのに皆さん四苦八苦していたわけですが,利息制限法に違反する調停及び和解が全部無効ってなるのであれば,世の中で問題になっている特定調停や和解が争点となっているすべてが該当しますので簡単に全勝してしまいます。 

ちなみに,私も過去に特定調停の無効を争って戦ったことがあります。その時は無事勝訴しましたが,その勝訴理由は公序良俗違反による無効ではなく錯誤無効でした。 

判決(PDF)
 

※東京高裁の判決書が手元にないため,アイク分については詳細がわかりませんがこちらについては過払い請求が認められており,今回の最高裁判決の争点にもなっていません。
 

これに対し,いつもがっつり争ってくるCFJですので,これが確定するはずもなく,今回の最高裁判決となりました。 
 
 

最高裁判決の内容

 

最高裁サイト

判決全文(PDF) 

ざっくり言うと次のような内容です。
 

本件調停における調停の目的は,A取引のうち特定の期間内に被上告人がAから借り受けた借受金等の債務であると文言上明記され,本件調停の調停条項である本件確認条項及び本件清算条項も,上記調停の目的を前提とするものであるといえる。したがって,上記各条項の対象である被上告人とAとの間の権利義務関係も,特定債務者である被上告人のAに対する上記借受金等の債務に限られ,A取引によって生ずる被上告人のAに対する過払金返還請求権等の債権はこれに含まれないと解するのが相当である。
→ 平成10年以降の取引についての合意であって,昭和からの取引を踏まえた場合に発生する過払金については合意の対象にはなっていない
 

本件確認条項は,上記借受金等の残債務として,上記特定の期間内の借受け及びこれに対する返済を利息制限法所定の制限利率に引き直して計算した残元利金を超えない金額の支払義務を確認する内容のものであって,それ自体が同法に違反するものとはいえない。 
→ 当該調停は平成10年以降の取引だけを対象としたものであり,それだけでみれば,利息制限法に違反するような内容の調停ではないから,調停は有効のままである。
 

本件清算条項に,A取引全体によって生ずる被上告人のAに対する過払金返還請求権等の債権を特に対象とする旨の文言はないから,これによって同債権が消滅等するとはいえない。 
→ 特定調停自体が平成10年以降の分のみを対象としたものであるから,「債権債務なし」の条項に昭和からの過払金は対象となっておらず,当然過払金が消滅することもない
 

A取引が終了した平成14年6月14日までに発生した過払金返還請求権等は本件清算条項等によって消滅したとはいえないが,同日以降の支払は法律上の原因 がないとはいえず,過払金返還請求権等が発生したとはいえない。
→ 調停成立までの過払金については放棄していないから請求できるけど,調停自体は有効なんだから,その調停に沿った内容の返済は有効のままであり過払金とはならない
 
 

上記の①と③については借主側が有利であり,②と④については業者側が有利な内容となっています。
 
「債権債務なし」の対象として過払金は含まれないという判決理由は,他の裁判所の判決でもよくある判決理由ですのでそんなに目新しいものはないと思いますが,これを最高裁が明言してくれたのは良かったと思います。勝ったから良かったものの,錯誤無効を立証するのは難しいですので,それが,最初から「債権債務なし」の文言の中に過払金は含まれないということになれば,確実に請求できることになりますから借主側にとってはかなり楽にはなると思います。
 
ところがです。④は参りました。調停成立後の返済分については,過払い請求できないということです。
 
特定調停によって,債権債務なしのゼロで成立しているような調停であれば特に影響はありませんが,特定調停の多くが,調停成立後に分割弁済をしています。その分割弁済が返還請求できないというのは困りました。
 
確かに,一応有効な調停が成立しており,その調停の内容通りの返済をしているわけですから,「法律上の原因が無いとは言えない」という理屈はわかりますが,このような借主側にとって不本意な調停が行われてしまうのは,業者に対して過去の取引履歴の開示を求めても,開示するのはその時点で生きている契約分のみであり,すでに完済した取引分については出して来ないことが大きな理由です。
この事件と同じように,実際は過去の取引分も含めれば過払いになっているのに,業者が一部しか取引履歴を開示しない結果,表面上は有効となってしまう調停が成立しているのに,ちゃんと開示をしなかった業者が得をするというおかしな結論になってしまいます。
 
ということで,調停成立後の支払い分まで返還を求めるとなると,やはり調停そのものを無効にしなければならず,錯誤無効やらで争わなければならないようですね。 

※本日付の最高裁判決であるため,詳細な分析をしておりません。また,内容に誤りがある可能性が多分にありますので,適宜修正する予定です。

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