はなみずき司法書士事務所
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3月 23 2018

遥か昔の借金に関する支払督促について

毎年何件か時効債権の支払督促に関する対応のご依頼を受けておりますが,これが大きな問題になっているようで,先日も以下のようなニュースがありました。
 

「時効債権」で取り立て多発 静岡県内、相談200件超
 

以下,静岡新聞平成30年3月15日付の上記記事の一部を引用いたします(青字部分)。
 

金融機関などから不良債権を大量に買い取る債権管理回収業者(サービサー)が、借金を取り立てる権利のある期間を経過した古い債権「時効債権」を安値で買い取り、債務者に対し訴訟や督促によって支払いを請求する事案が静岡県内でも多発している。債務者が主張すれば時効が適用されるが、法律や裁判手続きが分からないと、支払ってしまうケースがあるという。

(中略)

「借金した業者と支払督促を起こしてきた業者が異なるため架空請求と勘違いし、放置してしまうケースもある」と指摘する。一部を返済してしまうと、時効が認められなくおそれがあることにも注意が必要と呼び掛ける。
 

引用終わり
 

ということで,時効債権に関する督促についてまとめたいと思います。

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1 支払督促

 

支払督促とは,一切の証拠なしに,債権者の申し立てにより裁判所が発送する督促状となります。したがって,裁判所は債権者の申立てが正しいかどうかを判断しないまま督促状を発送しているため,当然ながら実際には時効になっている債権でも支払督促の手続において請求することができてしまいます。この支払督促について争いたいということであれば,督促異議をする必要があります。もし,督促異議を出さないまま,書類が到達して2週間が経過してしまうと,当該支払督促は債権者の仮執行宣言の申立てにより判決と同様の効力を持つようになり,給与や預金の差し押さえなどをされてしまう可能性があります。 
 

2 督促異議とは

 

支払督促に不服がある場合は,無条件に異議を出すことができます。「無条件」と書いてあるとおり,支払督促に書いてある内容が正しいものだったとしても異議を出すことができますし,弁済済みだったり時効だったりという異議を出す理由を記載する必要もありません。なので,支払督促が届いたら,内容に関係なくとりあえず異議は出した方が良いと思います。

督促異議を出すことによって,督促手続から通常の訴訟手続に移行しますので,直ちに強制執行をされることはありません(ただし,通常訴訟で敗訴した場合は強制執行される可能性はあります。)。 
 

3 異議後の流れ

 

上記のとおり,督促異議を出すと支払督促から通常の訴訟手続に移行し,裁判所は債権者に対して,通常訴訟に移行したことによる追加費用を支払うよう通知を出します(通常訴訟と比べて支払督促は納める収入印紙が半額であるため,債権者は不足分を納める必要があります。)。もし,債権者が追加費用を支払わなかった場合には訴えが却下され訴訟手続は終了となり,支払督促申立て前の状態に戻ることとなります。
債権者が追加費用を支払った場合は,口頭弁論期日が開かれ,訴訟手続を進めていき,最終的には判決や和解,取下げ等で終了いたします。消滅時効が成立しているなど明らかに債権者に勝訴の見込みがない場合は取下げによって終了し,逆に確実に債務者に勝訴の見込みがない場合は,分割弁済の和解を申し入れるなどして,判決で終わらないことの方が多いかと思います。
 

上記のニュースのように時効債権に関する支払督促に関しては,多くのケースで追加予納することはなく,支払督促は取り下げたうえで債権債務無しの和解するか,消滅時効援用の内容証明郵便を送付して終了することが多いと思います。なお,時効の援用をした場合には,債権者によってはこのような証明書を発行してくれる場合もあります。
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4 異議が遅れた場合

 

(1)仮執行宣言後の督促異議

上記のとおり,支払督促を受け取ってから2週間以内に督促異議を出さないと,債権者の申立てにより仮執行宣言がなされ,財産の差し押さえを受ける可能性があります。また,仮執行宣言後でも督促異議は出せますが,すでになされた仮執行宣言が無効になるわけはありませんので,債権者の意向によっては異議を出したとしても強制執行が進むことがあります。その場合は,強制執行停止の申立てをして裁判所が認めてくれれば強制執行が停止することになります。もっとも,通常は担保を求められますので,まったく無償で強制執行を停止することはできません。

その後,督促異議によって移行した通常訴訟で勝訴した場合には担保を取り戻して終了となります。
 

(2)請求異議

支払督促を受け取って2週間以内に督促異議を出さず,また,債権者の申し立てにより仮執行宣言付の支払督促が発送され,これを受け取ってから2週間が経過すると支払督促は確定し,仮執行宣言後の督促異議も出せなくなります。したがって,この時点ではもう督促手続で争う手段はなく,債権者が強制執行したときに別途争うことになります。

通常,訴訟による確定判決や和解を根拠として強制執行をされた場合,基本的には確定判決や和解の内容に対して改めて不服を言うことはできません。もし,確定判決に何度でも文句が言えるのということになると,エンドレスに訴訟で争うことができてしまうからです。このいったん確定した内容について争えない効力のことを専門用語で「既判力」といいます。

しかしながら,確定した支払督促には既判力は無いと考えられており,確定した支払督促で強制執行をされた場合は支払督促の内容について請求異議訴訟にて争うことができます民事執行法35条1項)。

もっとも,請求異議訴訟は書類を作成すればどうにかなるような簡単なものではなく,また地方裁判所の管轄となりますので,一般的には弁護士さんにご依頼いただく必要があるかと思います。 
 

5 費用について

 

どこまで手続が進むかによってかかる費用は変わりますが,当事務所では以下のとおりです。なお,代理人として関与できるのは債権額が140万円以下の支払督促に限り,140万円を超える場合は書類作成のみとなります。

(1)督促異議を出して取下げや和解等で解決した場合→5万円
 

(2)通常訴訟に移行後取下げや和解等で解決せず口頭弁論が開かれる場合→10万円
 

(3)強制執行停止申立書作成(書類作成のみ)→上記に加えて5万円+担保相当額
 

(4)請求異議訴訟→基本的には弁護士さんを紹介させていただきます。 
 

当事務所にご依頼いただくほとんどのケースが(1)に該当するため,当事務所の報酬5万円(+消費税)と1000円前後の郵送料となることが多いです。

6 最後に

 

支払督促は,とにかく時間との勝負です。上記の記事のとおり,時効債権に関する支払督促は,何年も前,場合によっては何十年の前の債権に関する請求であり,現時点では会社名が変わっていることも多いため,「自分には関係ない」と無視してしまうと大変なことになってしまいます。支払督促がきたら,すぐに督促異議を出すか,お近くの弁護士や司法書士にすぐにご相談ください!

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