はなみずき司法書士事務所
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1月 07 2022

時効の援用をするも明確な解決ができない場合

基本的に、消費者金融やカード会社などの負債については、最後の返済予定日から5年間返済しないと時効となり、援用することによって返済義務が無くなります。

今回、時効の援用をしたものの明確な解決に至らなかったため、この点についてまとめたいと思います。

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1 時効援用の方法

上記のとおり、5年間返済しないと時効が完成し、時効の援用をすることで返済しなくても良くなります(民法166条1項民法145条)。

具体的に申し上げると、5年間経過後に債権者に対して、「消滅時効が完成したので援用します。」という通知を送ることになります。この通知の方法については法律上特に決まりが無いため、直接口頭で伝えても良いですし、はがきや手紙、メールやLINEで通知しても構いません。ただし、債権者から「そんな通知は受け取っていない」と言われてしまうと困るので、通常は記録が残る方法である内容証明郵便で通知をすることが一般的です。
 

2 時効の援用ができない場合

いくつか時効の援用ができないケースがあります。

まず、当たり前ですが時効の期間が満了していない場合です。上記のとおり借り入れの返済については最終の返済予定日から5年であり、最終の借入日から5年ではありません。とすると、借入日から5年経過した時点ではまだ満了しておらず、その時点で時効の援用通知を送っても無意味となってしまいます。
 

また、途中で債務承認をした場合には時効が更新され(民法152条)、その時点から5年が経過する必要がありますし、訴訟等を起こされていた場合は判決等が確定したときから10年が経過しなければ時効は完成しません(民法169条1項)。
 

さらに例外的なケースとして、例えば債権者が未成年者で親権者等が不在の場合には時効は完成しないことになっています(民法158条)。 
 

3 時効援用は一方的な通知で終わる

 

時効援用の通知を発し、債権者にその通知が届けば法律上は効力を生じます。債権者から「受け取りました」とか「時効の援用をされたことを認めます。」というような行為が無くても自動的に返済義務は無くなります。
 

とすると、仮に時効が完成していないにも関わらず時効援用通知を発し、債権者としては特に反論をしなかったものの、その1年後に債権者が実は時効が完成していないことに気づいて貸金請求をしてくるということもあり得ます。
 

もちろん、私どもがご依頼をお受けする場合には、いきなり時効援用通知を発送するのではなく、まずは債権者に対して受任通知を発送して取引履歴を取り寄せて、時効期間が満了しているかどうかの確認や過去に訴訟を起こされていないかどうかを確認をしてから時効援用通知を発送いたします。
 

さらに、アコムやプロミスなどの大手の消費者金融等の場合には、交渉をしたうえで返済義務が無くなった旨の書面を発行してもらうこともあります。 
 

4 明確な解決ができなかったケース

 

上記のとおり基本的には通知を発送すれば完了するのですが、債権者から「過去に債務承認をしているので時効はまだ完成していない」と主張されることがあります。
 

例えば、すでに時効が完成していると分かっていながら、突然債務者の自宅を訪ね、「とりあえず100円でも良いから払ってくれればいったん帰ります。」と告げ、債務者としても100円であれば良いかと思って支払ってしまうことがあります。そうすると、外見上は債務承認をしたことになってしまいますので、時効の援用ができなくなると考えることもできます。
 

ただ、実際にはこのようなケースでは債務承認に当たるとは考えられておらず、問題なく時効の援用ができるケースが多いです。
 

もっとも、このような場合には債権者から証明書などを発行してもらうことはできませんので、もしかしたら将来的には時効が完成していないとして訴訟を起こされる可能性も無いわけではありません。かといって、債務不存在の訴訟をこちらから起こすのも不経済ですので、そのようなことを行うことは無く、結果として「なんとなく終了」ということになります。
 

先日も、同じようなケースで時効援用通知を送ったところ、時効は完成していないとの主張をされましたので、「そのようにお考えなのであればしょうがないので、訴訟を提起してください。」と告げましたが、その後特に何もありません。実際、当該ケースでは、ご本人は年金受給者ですので、仮に債権者が勝訴したとしても差し押さえる財産も無いので訴訟を起こすことは無いと思います。
 
 

このように、時効の援用については明確な解決とはならないまま終わることがあります、というお話しでした。

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