はなみずき司法書士事務所
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3月 19 2010

最高裁判決にみる人の陥れ方

最高裁で出された業務に関係がありそうな判例は必ず読んで検討しますが,その他にも政教分離に関わる判例インターネットの個人の書き込みによる名誉毀損など,世間の話題になるような判例も読んでいます。

そんな中,特に業務とも関係がなく,さらに大きな話題になったわけでもありませんが,最高裁の判例の中に,まさに「ナニワ金融道」的なスリリングな展開の判例がありましたのでご紹介いたします。

なかなか,登場人物が多いのでまずは簡単にまとめます。

ただし,あまり展開とは関係ない人(会社)もありますので,関係ある人だけ抽出します。また,記号(AとかB)はすべて判決文に合わせていますが,当事者は判決文の中では記号ではないので,甲社(被上告人),乙さん(上告人)とします。

<会社>
A社 たくさんあるグループ会社の元締め会社。
F社 A社のグループ会社
J社 A社のグループ会社。
K社 人材派遣や業務請負を業とする会社。A社のグループ会社であり,Bが社長。
M社 K社の神戸支店が法人化してできた別会社にすぎず,当然A社のグループ会社。
甲社 今回訴えた会社。元はA社の財務部門を独立させた会社。現在は,A社のグループ会社にのみ融資をするための会社で,当然,甲社もA社のグループ会社。

<個人>
Bさん グループの元締めであるA社の筆頭株主でもあり,社長でもあるオーナー社長。また,A社の子会社のうちほとんどの会社の社長でもある。
乙さん 今回訴えられた人。昭和55年9月22日生まれ。K社にアルバイトとして入社。


さて,今回の事件の事前情報は次の通りです。ただし,かなり簡略化しています。

<事前情報>
1・M社は同じグループであるA社と経営顧問契約を締結して,M社はA社に1ヶ月25万円の顧問料を支払うこととなっている。

2・M社は同じグループであるJ社とも経営顧問契約を締結して,M社はJ社に1ヶ月10万円の顧問料を支払うこととなっている。

3・ただし,M社に損失が生じても,A社やJ社は責任を負わないとされており,A社とJ社がM社からお金を巻き上げるシステムが完成。

4・M社の売上げ金額に対し,その7割近い金額をA社グループに対する顧問料の支払っており,M社は560万円程度の赤字である。

5・M社の会社の実印や銀行印などはすべてA社グループのF社が管理・保管しており,M社のお金の出し入れや人件費の支払なども全部F社が管理していたし,M社はA社の社長であるBなどから直接指示を受けていた。つまり,M社にはほとんど自主性がなかったということですね。


そして,ここからが今回の事件の流れです。ただし,上記同様,かなり簡略化しています。

<事件の流れ>
1・平成15年頃,当時22歳の乙さんがK社神戸支店にアルバイトとして入社。翌年,神戸支店がM社になるというのを機に,M社の正社員となる。

2・平成17年頃,M社の資金繰りが極めて悪くなっており,経営が成り立たなくなるおそれがあることが判明。

3・そんな中,BさんらはM社の正社員になってから数ヶ月しか経っていない24歳の乙さんに,M社の社長になるよう強く要請。断り切れない乙さんはやむなくM社の社長就任

4・A社のグループ会社である甲社は,M社に400万円を融資し,BさんらはM社の代表者である乙さんにその保証人になるよう指示をした。形式上は社長といえども,A社グループ全体から見れば単なる従業員に過ぎない乙さんに断る権限もなく,乙さんは連帯保証人となる

5・その400万円は,A社のグループ会社であるF社によってきれいさっぱり遣われた

6・平成17年5月頃,怖くなった乙さんは,弁護士に相談してM社の社長を辞めたい旨通知し,以降出勤しなくなった

7・その半年後である平成17年11月にM社は倒産し,M社は甲社へ返済ができなくなる。

8・甲社は,連帯保証人だった乙さんに返済を求め,訴訟提起

つまり,倒産間際のM社に融資をしてM社の対外的な借金は甲社に対する400万円の借金に一本化し,断ることのできない状況にある乙さんをその借金の保証人にすることで,A社グループ全体としては乙さんから回収すれば損失が無くなるという構図になります。

この点に付き,原審の大阪高裁は甲社の請求を認め,乙さんに対して全額支払う旨の判決をしています。

皆さんは,どうお考えでしょうか。

当時24歳とはいえ,未成年でもないのだから,社長に就任することの意味(中小企業への融資に対して,社長が連帯保証するのが普通)を認識していただろうし,自分で保証契約書にサインしたのだから全額支払う義務と考えますか。
それとも,全体としてみれば,乙さんはまったく断ることの出来ない状況でA社に嵌められたとみて,支払う義務は無いと考えますか。

その答えはココにある!!

最高裁要旨
判決全文(PDF)

たまには,こんな記事もアリかと思いますが,いかがでしょう?

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