はなみずき司法書士事務所
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6月 29 2011

安易な(無意味な)任意売却のススメにご用心

住宅ローンが返済できなくなったということで,任意売却を勧める不動産業者があると思います。

当事務所でも任意売却に力を入れられている不動産屋さんとお付き合いをさせていただいており,任意売却それ自体は適正な状況において有効な方法だと思います。

しかし,住宅ローンを抱えていらっしゃる方にとってまったくメリットが無いのにやたらと任意売却を勧めてくる業者さんも中にはいるようです。

 

 

そもそも任意売却とは,住宅ローン等の借入がある場合に,裁判所による競売ではなく通常の売買のように不動産屋さんを仲介して売却するというものです。
ざっくり任意売却のメリットを記載すると,次のようになります。

1・競売で売却されるよりも,高値で売れることが多い。
2・担保権者によっては引っ越し費用を出してくれることがある。
3・周りの住民の方に知られる可能性が低い。

 

しかしながら,例え競売よりも高く売れると言っても日本の住宅ローンは「リコースローン」と言って,売却後に残った借入については最後まで支払う義務があり,いくら任意売却の方が競売より高く売却できても結局は解決しないというケースが多々あります。

 

具体的な数字で説明すると,

住宅の売却価格→2000万円(競売だと1600万円)
住宅ローンの残債→3000万円

だとします。
上記の場合,任意売却で2000万円で売却できたとしても,残った1000万円は支払わなければなりません。また,競売で売却した場合も残った1400万円は支払わなければなりません
そして,一般的なサラリーマンの方の場合,残った債務が1000万円でも1400万円でも遅延損害金として年14%程度付いてしまうことを考慮すれば,支払えないことには変わりがないと思います。
とすると,結局不動産を売却したとしても自己破産等をしなければならないことには変わりがないため,任意売却をしても根本的な解決にはなりません
さらに,任意売却だと引っ越し費用がもらえる場合があるというメリットがありますが,競売だと任意売却よりも1年以上長く住めることが多いため,転居後の家賃が発生する場合には必ずしも引っ越し費用がもらえるということがメリットだとは限りません

 

以上から,任意売却にメリットがあったとしても,必ずしも任意売却によって解決できる訳ではありませんし,むしろ解決できないことの方が多いと思います。

 

 

また,一部の不動産業者さんが,「弁護士や司法書士は自己破産以外の方法を知らない,もしくは自己破産の方が楽だから任意売却ではなく自己破産を勧める」ということをおっしゃっているそうです(こう言うことによって,「弁護士でも知らない任意売却という裏技があるんですよ」と営業をしてくるようです)。

この「任意売却を知らない」または「自己破産の方が楽だ」という点についてはどう考えてもあり得ないので,以下のとおり明確に否定をします。

 

まず,自己破産の手続を業務として行っている弁護士や司法書士が任意売却を知らないということはあり得ません。というのは,任意売却で解決できる場合,そもそも法的に自己破産をすることはできないからです。

自己破産の申立が認められるためには,「支払不能」の状態になければなりません(破産法15条)。
この「支払不能」というのは,難しい言葉で言うと,「債務者が,支払能力を欠くために,その債務のうち弁済期にあるものにつき,一般的かつ継続的に弁済することができない状態」(破産法2条11項)であり,もうちょっとわかりやすい感じで言うと「給料日前までだから今だけ払えないんです」という訳じゃなくて,「今後入ってくる予定の給料を支払いに充てるどころか,持ってる財産を全部売却しても全然返せないようなパンク状態」ということです。
これを逆に言えば,財産を全部売却して完済できるようなら「支払不能」状態ではないということになります。
ですので,任意売却をすれば解決できるような状態は,そもそも支払不能ではないため,破産申立をしても棄却されてしまいます。

したがって,検討の順番として任意売却で解決できるか→それがダメなら自己破産であり,弁護士等が任意売却を知らないということは絶対にあり得ません。

 

また,同じ理由で,楽だとか面倒くさいだとか関係なく,任意売却で解決できるのであればそもそも自己破産は出来ないわけですから,「自己破産の方が楽だから任意売却ではなく自己破産を勧める」などということもあり得ません。

 

 

 

誤解の無いよう申し上げますが,大多数の不動産業者さんは依頼者の方の状況を考え,自己破産をすべきなのか任意売却をすべきなのかを検討した上で任意売却を勧められていると思いますが,極めて少数の不動産業者さんが仲介手数料欲しさに「弁護士も知らない自己破産を回避する方法がありますよ」と言ってまったく意味のない任意売却を勧める不動産業者さんにお気を付けいただきたいというだけであって,任意売却自体は必要なものですし,実際に,不動産をお持ちの方で自己破産をされる場合は競売になるよりも圧倒的に任意売却の方が多いと思います。というのは,競売になると破産手続が終わるまでに時間がかかるため再出発に時間がかかるという点やどうせ売却しなければならないのであれば上記の通り金融機関によっては引っ越し費用を出してもらって引っ越した方が良いと考える方が多いためです。
ただ,これは自己破産をされるということが決まって,ちゃんとご自身で理解をされたうえで任意売却をしているのであって,自己破産を避けられないにもかかわらず「自己破産を避けるために任意売却をしましょう」と勧められてまったく理解されずに任意売却をすることとはまったく違います。
ですので,安易に任意売却で解決できるという甘い言葉に左右されず,できればお近くの弁護士,司法書士にご相談いただいてから任意売却されるか否かをしっかりご検討いただきたいと思います。場合によっては個人再生の申立をすることで住宅を残せることもありますからね。

 

住宅を残すことをご希望されている場合は,住宅ローン特則を使った個人再生を検討しますが,自己破産同様,個人再生においても支払不能状態になければ申立ては認められませんので,任意売却をして解決できる場合は,やはり個人再生もできませんし,逆に支払不能状態にある場合はその後の住宅ローンの返済が難しい方もいらっしゃいますので,住宅ローン特則を使った個人再生の申立をすれば必ず残せるというわけではありません。

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