7月 06 2009
任意売却か競売か(その1)
※記事が長くなるので,2回に分けて掲載します。
さて,昨年からの大不況により,住宅ローンの支払いが難しくなり,住宅が競売(けいばい)にかけられてしまうケースが増えているそうです。
→記事
また,それに関連して,任意売却での詐欺的行為もあったようです。
→記事
住宅ローンがある場合の債務整理について考えられる手続きは次の5通りになるかと思いますので,ご説明していきます。なお,銀行との話合いによる条件変更(リスケジュール等)については,債務整理ではないので除外しています。
<住宅を残す場合>
①住宅ローン以外の債務(以降,「他社の債務」といいます。)を任意整理や特定調停で減額したり過払い金を取り返し,毎月の返済額を減らす。
債務整理の方法としては,この方法が一番良いと思います。ただし,他社の債務の減額ができない場合(取引期間が短い,当初より利息制限法内の利率で契約している,など)は,現実的な手段ではありません。当事務所の依頼者の中には,他社の債務がなくなったどころか,逆に過払い金が返還されて,そのお金で繰り上げ返済された方もいらっしゃいます。
②住宅ローン特則を使った個人再生の申し立てを行い,他社の債務を圧縮し,住宅ローンを返済していく。
この場合,住宅ローンは原則としてこれまでどおり返済していただきますが,他社の債務は最大1/5(ただし,最低でも100万円は返済します)まで減額し,大幅な債務の圧縮ができますので,十分住宅ローンが返済できるようになる方も大勢いらっしゃいます。
この方法は,上記①のように,他社との取引が短かったり,元から利息制限法内での契約の場合,任意整理等での減額が期待できないため,裁判所の力を借りて借金を圧縮することとなります。
なお,住宅ローン特則を使った個人再生を考える場合,よくひっかかってしまう点が次の点です。
(1)住宅の価値が高い場合
住宅ローンの頭金を多く入れていたり,返済期間が長い場合,オーバーローンになっておらず,住宅の価値が大きい場合があります。この場合,財産が多くあるため,債務が圧縮できないことがあります。
この点は,ブログで説明するのが難しいので,直接弁護士,司法書士にご相談ください。
(2)無職の場合
住宅ローンの返済が難しい理由が,「給料の減額」であれば,他社の債務を圧縮することで住宅ローンの支払い原資を作り出すことができる場合もありますが,無職になってしまった場合は,いくら他社の債務を圧縮しようが収入自体が無いので個人再生の申し立てができません。ですので,申し立てまでにいち早く就職していただく必要があります。しかし,このご時勢なので,なかなか再就職ができないのが実情だと思います。
(3)消費者金融等の担保になっている場合
住宅ローン特則を使うためには,その住宅が住宅ローン以外の担保に入っていないことが条件となっています。CFJやアイフルなど不動産担保ローンを利用されている場合は,その担保を消してからでないと,こちらの手続きは使えません。
以上,2つの方法が住宅を残す場合です。
しかし,上記の通りの任意整理や個人再生を行っても住宅ローンの返済ができない場合もありますので,その場合は,残念ですが住宅を手放さなければなりません。手放す方法としては,「任意売却」,「競売」の2つの選択肢があります。
この任意売却及び競売については,専門のホームページたくさんがありますので,そちらを検索していただければと思いますが,簡単に記載すると以下の通りとなります。
<任意売却>
強制的に売却する手続きではなく,通常の不動産の売却のように仲介業者さんを通して売却するため,競売と比べて高く売れるケースが多いと思います。
任意売却のメリット
①比較的高く売れるため,売却後も返済を続ける場合は,金額的に競売よりもかなり有利になる。
②通常の売却手続きであるため,周辺住民の方に対する印象も悪くない。
③売却後は,当然転居しなければなりませんが,住宅ローン会社によっては,引越し費用を出してくれる場合があります。
任意売却のデメリット
①競売と比べると短い時間で終了するため,早めに転居しなければならない。
<競売>
裁判所による強制的な売却手続きですので,落札代金が任意売却と比べて低い傾向にあります。しかし,売却手続きにかかる時間が比較的長いため,長く住み続けることができるケースが多いと思います。
競売のメリット
①任意売却と比べると長い時間がかかるため,その分長く住める。
競売のデメリット
①裁判所の担当者が家に来る。
②様々なところに競売情報が掲載されるため,周辺住民の方に知られてしまう可能性がある。
③引越し費用が出ないにも関わらず,競落された後,いきなり退去を迫られることがある。
④任意売却と比べると,売却価格が低い傾向にあるため,その後に返済を考えている場合は,多くの債務が残る可能性を覚悟しなければならない。
となっております。
以上から,どちらが絶対に有利と言うことはでき
せんが,個人的には任意売却の方が精神的にも経済的のも良いのではないかと思っております。
以下,住宅を手放す場合の債務整理については,また次回に。