12月 02 2011
17条書面と特段の事情についての最高裁判決
12/1に悪意の受益者に関する最高裁判決がありました。
以下,ざっくりですが,この判例について記載します。
————前提情報———————-
①みなし弁済
契約書の作成や交付,領収書の作成や交付など,消費者金融が法律に規定されている厳しい条件をすべて満たした場合に限り,高金利を取ってもいいよ,という規定。今は改正で無くなりました。
②悪意の受益者
悪意の受益者というのは,上記のみなし弁済の適用が無いと知りながら借主からの返済を受領し,過払いとなっている場合には,その過払金について返還するのみならず,利息を付けて返還しなさい,というものです。
そして,この悪意の受益者であることの立証責任,つまり,「消費者金融等がみなし弁済の適用が無いことを知っていた」ということを借主側が立証しなければならないのが原則です。
ところが,平成19年に最高裁は「業者側がみなし弁済の適用があると信じてもしょうがない,というような例外的な事情が無い限り(特段の事情),消費者金融等は知っていたでしょ」として,業者側が,その例外的な事情の存在を立証しないかぎり,みなし弁済の適用がないことを知っていた,すなわち,悪意の受益者として利息を支払う義務がある,と判示しました。
———-ここまでが前提—————
で,今回の訴訟で何が問題になっているかというと,業者側は,「平成17年に最高裁がみなし弁済の条件の一つである借主と契約する際に交付する契約書の内容について厳しい判決を出す前は,その契約書の内容でもいいよ,という裁判例や学説,行政の取扱いがあったのだから,少なくとも平成17年まではみなし弁済の適用があると信じてもしょうがないという事情があり,悪意の受益者ではない,というものです。そして,原審の東京高裁は業者の主張を認めて,悪意の受益者では無いと判示しました。
その上告審が今回の最高裁判決です。
すんごいざっくり言うと,
確かに,そのような内容の契約書でもいいよ,という裁判例や学説等があったのは事実だけども,そのような見解が多数を占めていたとは言えないし,そのような見解が貸金業法の立法関係者によって明確に示されていたものでもないんだから,消費者金融等が信じてもしょうがないよね,という事情ということはできない。だから,悪意の受益者だよね。
というものです。
もっとも,このピンポイントの論点で争われることは多くないため,どこまで影響があるかはわかりません。むしろ,例外的な事情の存在につき,一般的立証(個々の契約書ではなく,会社全体としてそういう体制をとっていた)で足りるという点の方が大きな論点かと思います。
いずれの結論になったとしても最高裁がビシッと判示してくれると助かるんですけどね。
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