はなみずき司法書士事務所
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法律のお話し

4月 26 2018

諸費用ローンを含んだ住宅ローン特則(個人再生)

個人再生手続を選択する大きな理由の一つに「住宅ローンを支払い続けることで家を手放さないで大きく負債を軽減できる」ということがあります。 

自己破産の場合,借り入れ自体は免責許可が出れば無くなりますが,家を含む大きな財産については原則として手放さなければなりません。もし,自己破産をしても当該家に住み続けたいということであれば,親族等の第三者に買い取ってもらって,その親族から借りて住むなど,自己破産手続とは別に何らかの方法を考える必要があります。
 

一方,住宅ローン以外の債権者については任意整理をして分割で返済するという方法も考えられますが,他の借り入れが減ることは少なくなってきているのであまり状況が変わりません
 

この点,個人再生であれば,基本的には住宅ローンはこれまでどおり支払い続ける必要がありますが,他の借り入れについては最大で8割カットしてもらえますので大きく負債を軽減できることになります。もっとも,住宅ローンといっても様々な状況があり,場合によっては使えない場合もあるため,今回はこの点についてまとめたいと思います。
 

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住宅ローン特則

 

いわゆる住宅ローン特則は,正式には「住宅資金特別条項」というもので,本来であれば個人再生手続きの開始に伴い,住宅ローンの返済が禁止され,最終的には住宅ローン債権者が競売等を行うことで自宅を手放さなければならいことになるのですが,この条項を含んだ再生計画案が認められると,他の債権のように最大8割カットとはならないどころか1円も減りませんが,住宅ローンを支払い続けることで自宅を手放さなくても良いこととなります
 

自宅を守りたい方にとっては,とても有用な手続となります。 
 

住宅ローン特則を使うための条件

住宅ローンであっても,実は必ずしもこの特則が使える訳ではなく,以下の条件を満たす必要があります。
 

1 住宅であること
 

住宅ローンというものである以上,申立てをする方が居住するための「住宅」でなければなりません。

「居住」に関しては,単身赴任や転勤などで一時的に当該住宅に住んでいない場合でも大丈夫ですが,当初から住まない予定の家族のための住宅や,純粋な投資用不動産等は該当しません。

「住宅」に関しては,一部(床面積の半分以下)が住宅ではない店舗や事務所であっても大丈夫です。
 

2 再生債務者所有であること
 

個人再生を申し立てる方の所有でなければなりませんが,単独所有ではなく,夫婦共有や親子で共有などでも構いません
 

3 借り入れが住宅ローンであること
 

住宅ローンとは,住宅の建設・購入のために必要な資金や住宅の改良に必要な資金であり,分割払いとなっているものを指します。

したがって,事業用の借り入れなどで自宅に担保が設定されている場合,住宅ローンではないためこの特則は使えないことになります。
 

4 自宅に住宅ローン以外の担保権が設定されていないこと
 

住宅ローンを組むと,まず間違いなく自宅に抵当権が設定されます。住宅ローン特則を使うことで,この抵当権の実行(競売)がされることがなくなりますので,自宅を手放さなくても良いこととなります。

しかし,住宅ローンの抵当権に加えて,事業用の借り入れなど住宅ローン以外の担保権が設定されていると,上記3のとおりこのような債権には住宅ローン特則の効力が及ばないため,抵当権の実行を防ぐことができません。したがって,自宅に住宅ローン以外の担保権が設定されている場合は住宅ローン特則が使えないということになります。

このような場合には,親族などに依頼して,住宅ローン以外の抵当権に関する債務について第三者弁済をしてもらって担保権を抹消してから個人再生の申立てをすることとなりますが,なかなか第三者弁済をしていただけるような方は多くないので,残念ですが手放さなければならない可能性が高いです。

他にも,保証会社が代位弁済して6か月経過していないことなど,他の要件もありますがここでは省略します。 
 

諸費用ローン

 

住宅を購入する際に,住宅本体(建物及び土地)の購入に加えて,外構の工事費用,テレビやエアコンなどの家電の購入費用,登記費用や仲介手数料などの住宅取得に関する費用,税金の支払いや保険の支払いなど結構お金がかかりますので,この点についてのローンを組むことがあります。

人によって呼称はや内容は変わりますが,一般的には上記のような住宅本体以外のローンのことを諸費用ローンと呼んでいます。

諸費用ローンの特徴としては,通常は住宅本体の取得に関する住宅ローンと比べて借入利率が高く金額が比較的少額(100~300万円程度),住宅ローン減税の対象にならないものであり,銀行によっては諸費用ローン単独で抵当権を設定することがあります(無担保のケースもあります。)。

上記のとおり,住宅ローン特則は住宅ローンにしか効力が及ばす事業用の借り入れなどには及びません。とすると,もし諸費用ローンが住宅ローンではないと判断されてしまうと,「住宅ローン以外の担保権が設定されている」ということになり,住宅ローン特則が使えないことになります

この点,各裁判所によって取り扱いが異なると思われるため確実な情報ではありませんが,先日諸費用ローンを含んだ住宅ローン特則が無事認可されましたので,ここで得た情報を記載いたします。
 

1 住宅の取得に密接なものであれば大丈夫
 

今回の手続においては,諸費用ローンの使途は,登記費用,住宅ローンの保証料,不動産業者の仲介手数料であり,住宅ローンを組んで住宅を購入する際には必ずかかる費用となります。

今回の手続では入っていませんでしたが,カーポートやガーデニング的な外構の費用は必ずしも必要とは言い難いため微妙かと思いますが,斜面に建てる際の擁壁の費用などは認められるのではないかと思います。また,テレビやエアコン等の家具の購入については,住宅取得と密接とは言えないので比較的難しいように思います。
 

2 疎明方法
 

諸費用ローンの使途が上記のような登記費用等のみであることを裁判所に説明しなければなりません。

通常,銀行との間の契約書には,「諸費用」としか書いておらず,具体的な使途が書いていないため,契約書だけでは説明ができません。そこで,金融機関の担当者から具体的な使途について聴取する必要があります。

今回の手続においては,サービサーが受託しており,サービサーの担当者から金融機関の担当者に問い合わせてもらって聴取したものを書面にして提出いたしました。
 
 

ということで,諸費用ローンについては,やはり名目だけではなく実態を調査する必要があります。今回はたまたまサービサーの方が協力的であったため問題なく進めることができましたが,金融機関の方が非協力的だと頓挫することにもなりかねません。もっとも,金融機関側の立場においても協力することがメリットである(住宅ローン特則が認められないと,個人再生を諦めて破産することになるため,結果的に全額の回収は極めて困難となる。)ことが多いため,この点を説明すれば概ね協力してもらえると思います。

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3月 23 2018

遥か昔の借金に関する支払督促について

毎年何件か時効債権の支払督促に関する対応のご依頼を受けておりますが,これが大きな問題になっているようで,先日も以下のようなニュースがありました。
 

「時効債権」で取り立て多発 静岡県内、相談200件超
 

以下,静岡新聞平成30年3月15日付の上記記事の一部を引用いたします(青字部分)。
 

金融機関などから不良債権を大量に買い取る債権管理回収業者(サービサー)が、借金を取り立てる権利のある期間を経過した古い債権「時効債権」を安値で買い取り、債務者に対し訴訟や督促によって支払いを請求する事案が静岡県内でも多発している。債務者が主張すれば時効が適用されるが、法律や裁判手続きが分からないと、支払ってしまうケースがあるという。

(中略)

「借金した業者と支払督促を起こしてきた業者が異なるため架空請求と勘違いし、放置してしまうケースもある」と指摘する。一部を返済してしまうと、時効が認められなくおそれがあることにも注意が必要と呼び掛ける。
 

引用終わり
 

ということで,時効債権に関する督促についてまとめたいと思います。

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1 支払督促

 

支払督促とは,一切の証拠なしに,債権者の申し立てにより裁判所が発送する督促状となります。したがって,裁判所は債権者の申立てが正しいかどうかを判断しないまま督促状を発送しているため,当然ながら実際には時効になっている債権でも支払督促の手続において請求することができてしまいます。この支払督促について争いたいということであれば,督促異議をする必要があります。もし,督促異議を出さないまま,書類が到達して2週間が経過してしまうと,当該支払督促は債権者の仮執行宣言の申立てにより判決と同様の効力を持つようになり,給与や預金の差し押さえなどをされてしまう可能性があります。 
 

2 督促異議とは

 

支払督促に不服がある場合は,無条件に異議を出すことができます。「無条件」と書いてあるとおり,支払督促に書いてある内容が正しいものだったとしても異議を出すことができますし,弁済済みだったり時効だったりという異議を出す理由を記載する必要もありません。なので,支払督促が届いたら,内容に関係なくとりあえず異議は出した方が良いと思います。

督促異議を出すことによって,督促手続から通常の訴訟手続に移行しますので,直ちに強制執行をされることはありません(ただし,通常訴訟で敗訴した場合は強制執行される可能性はあります。)。 
 

3 異議後の流れ

 

上記のとおり,督促異議を出すと支払督促から通常の訴訟手続に移行し,裁判所は債権者に対して,通常訴訟に移行したことによる追加費用を支払うよう通知を出します(通常訴訟と比べて支払督促は納める収入印紙が半額であるため,債権者は不足分を納める必要があります。)。もし,債権者が追加費用を支払わなかった場合には訴えが却下され訴訟手続は終了となり,支払督促申立て前の状態に戻ることとなります。
債権者が追加費用を支払った場合は,口頭弁論期日が開かれ,訴訟手続を進めていき,最終的には判決や和解,取下げ等で終了いたします。消滅時効が成立しているなど明らかに債権者に勝訴の見込みがない場合は取下げによって終了し,逆に確実に債務者に勝訴の見込みがない場合は,分割弁済の和解を申し入れるなどして,判決で終わらないことの方が多いかと思います。
 

上記のニュースのように時効債権に関する支払督促に関しては,多くのケースで追加予納することはなく,支払督促は取り下げたうえで債権債務無しの和解するか,消滅時効援用の内容証明郵便を送付して終了することが多いと思います。なお,時効の援用をした場合には,債権者によってはこのような証明書を発行してくれる場合もあります。
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4 異議が遅れた場合

 

(1)仮執行宣言後の督促異議

上記のとおり,支払督促を受け取ってから2週間以内に督促異議を出さないと,債権者の申立てにより仮執行宣言がなされ,財産の差し押さえを受ける可能性があります。また,仮執行宣言後でも督促異議は出せますが,すでになされた仮執行宣言が無効になるわけはありませんので,債権者の意向によっては異議を出したとしても強制執行が進むことがあります。その場合は,強制執行停止の申立てをして裁判所が認めてくれれば強制執行が停止することになります。もっとも,通常は担保を求められますので,まったく無償で強制執行を停止することはできません。

その後,督促異議によって移行した通常訴訟で勝訴した場合には担保を取り戻して終了となります。
 

(2)請求異議

支払督促を受け取って2週間以内に督促異議を出さず,また,債権者の申し立てにより仮執行宣言付の支払督促が発送され,これを受け取ってから2週間が経過すると支払督促は確定し,仮執行宣言後の督促異議も出せなくなります。したがって,この時点ではもう督促手続で争う手段はなく,債権者が強制執行したときに別途争うことになります。

通常,訴訟による確定判決や和解を根拠として強制執行をされた場合,基本的には確定判決や和解の内容に対して改めて不服を言うことはできません。もし,確定判決に何度でも文句が言えるのということになると,エンドレスに訴訟で争うことができてしまうからです。このいったん確定した内容について争えない効力のことを専門用語で「既判力」といいます。

しかしながら,確定した支払督促には既判力は無いと考えられており,確定した支払督促で強制執行をされた場合は支払督促の内容について請求異議訴訟にて争うことができます民事執行法35条1項)。

もっとも,請求異議訴訟は書類を作成すればどうにかなるような簡単なものではなく,また地方裁判所の管轄となりますので,一般的には弁護士さんにご依頼いただく必要があるかと思います。 
 

5 費用について

 

どこまで手続が進むかによってかかる費用は変わりますが,当事務所では以下のとおりです。なお,代理人として関与できるのは債権額が140万円以下の支払督促に限り,140万円を超える場合は書類作成のみとなります。

(1)督促異議を出して取下げや和解等で解決した場合→5万円
 

(2)通常訴訟に移行後取下げや和解等で解決せず口頭弁論が開かれる場合→10万円
 

(3)強制執行停止申立書作成(書類作成のみ)→上記に加えて5万円+担保相当額
 

(4)請求異議訴訟→基本的には弁護士さんを紹介させていただきます。 
 

当事務所にご依頼いただくほとんどのケースが(1)に該当するため,当事務所の報酬5万円(+消費税)と1000円前後の郵送料となることが多いです。

6 最後に

 

支払督促は,とにかく時間との勝負です。上記の記事のとおり,時効債権に関する支払督促は,何年も前,場合によっては何十年の前の債権に関する請求であり,現時点では会社名が変わっていることも多いため,「自分には関係ない」と無視してしまうと大変なことになってしまいます。支払督促がきたら,すぐに督促異議を出すか,お近くの弁護士や司法書士にすぐにご相談ください!

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3月 01 2017

時効援用における弁護士,司法書士,行政書士の違い

先日,債務整理のご依頼をいただいたところ,消滅時効の援用ができる状況でしたので,時効援用通知を送付し無事解決となりました。

この消滅時効の援用について,弁護士,司法書士,行政書士と様々な士業がご依頼をお受けできることとなっておりますが,この違いのご質問をいただくため,この点に絞って記載いたします。

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端的な違いとしては,「弁護士及び司法書士」と「行政書士」の違いは,代理人として取引履歴の開示請求及び交渉を行うことができるかどうかになります。

弁護士さんと司法書士(ただし,認定司法書士に限ります。以下,同じです。)に関しては,債権者である信販会社や消費者金融に対して代理人として過去の取引履歴の開示を請求するとともに交渉を行い,最終的には書面を作成して送付することができますが,行政書士さんは代理人にはなれませんので,取引履歴の開示をする場合はご本人に債権者に連絡していただく必要がありますし,債権者と交渉などを行うことができず,書類が作成できるだけとなります。

次に,「弁護士」と「司法書士」の違いは,弁護士さんは金額に制限がないのに対し,司法書士に関しては140万円以下の債務に限ります。ただし,140万円には利息や遅延損害金は含まず元金だけで判断します。

消滅時効の援用を行う場合,長年延滞しているはずですので遅延損害金が元金以上になっていることもあります。先日ご依頼いただいた件も元金が50万円程度に対して遅延損害金だけで100万円を超えておりましたので合計は150万円となりますが,あくまで元金は50万円ですので司法書士でも代理することができます。

つまるところ,弁護士さんは金額に関係なくオールマイティであり,司法書士は元金が140万円以下であればほぼ弁護士さんと同様であり,行政書士さんは単に書類を作成するだけということになります。

したがって,一般的には弁護士さんの費用が一番高く,順に司法書士,行政書士と安くなる傾向にあります。

なお,何らかの証拠により消滅時効の期間が満了していることが確実であれば消滅時効援用の通知を送付しても良いかと思いますが,通常は取引履歴の開示を請求し,それに加えて債務名義(判決や支払督促など)の取得の有無を確認したうえで送付することになります。調査をしてみなければ本当に時効期間が満了しているかどうかわからないためです。また,万が一,時効期間が満了していなかった場合は債務が残ることとなりますので,その返済方法について債権者と交渉をしなければなりませんが,上記のとおり行政書士さんではそのような対応ができません。

したがって,できれば弁護士さんまたは司法書士にご相談いただいた方が良いかと思います。

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5月 02 2016

破産手続開始決定と生命保険金

かなり久しぶりの記事となってしまいました。

前回の記事を書いて以降も過払い訴訟や任意整理,破産手続等は進めているのですが,特にトラブルなく解決していたため記事になるようなこともなく空いてしまいました・・・
 
 

さて,先日破産に関する最高裁判決が出ておりましたので紹介いたします。
 

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まず,大前提として,破産手続開始決定前と決定後の財産から説明します。 
 

<前提情報>

 

破産をしてしまうと,一部の例外(生活必需品,現金99万円など。「自由財産」といいます。)を除き,管財人によって破産者の財産は換価(現金化)され,債権者に分配されることになります。この「破産者の財産」の基準時が開始決定であり,その開始決定後に得た財産(「新得財産」といいます。)は債権者に分配されることはありません。ですので,極端な話,破産開始決定後に買った宝くじが当たっても当選金を債権者に取られることはありません。現実的に,宝くじの当選は極端だとしても,相続で取得するなんていうことは十分考えられることかと思います。
 

また,開始決定時には現実化していなくても将来の請求権も換価の対象となります。たとえば,将来もらえる予定の退職金が一番よくある例だと思います。ただし,会社の状況により退職金は必ずもらえるとは限らないため,名古屋地裁管内では,その時点の退職金のうち1/8(12.5%)についてのみ財産として計上する取扱いになっています。
 

ということで,この破産手続開始決定はかなり重要なターニングポイントということになり,これを前提に判例の事案について記載いたします。 
 

<事案の概要>

 

・甲と乙さんの間には,子ども丙さんがいます。

平成16年に丙さんは両親の甲乙さんを受取人として生命共済契約を締結しました。また,平成23年にも甲さんを受取人として生命保険契約を締結しました。

平成24年3月に,甲乙さんは破産手続開始決定を受けました。

・その翌月の平成24年4月に丙さんが亡くなり,甲乙さんは同年5月に合計2400万円の保険金を受け取りました。
 

という状況の下で,この保険金はどうなるか,という問題です。
 

甲乙さんが破産手続開始決定を受けたのが平成24年3月であり,平成24年4月に丙さんが亡くなって保険金を受け取ったのは5月なわけですから,破産手続開始決定後に得た新得財産であって換価されるものではないと考えることができそうです。しかし,退職金のような将来の請求権も換価の対象になっており,保険契約を締結した時点で(抽象的とはいえど)将来の請求権が発生しているのだから換価されると考えることもできそうです。この点,裁判所においても異なる結論が出ており,今回の最高裁判決で統一した見解が確定することになります。 
 

<最高裁の判断>

 

最高裁サイト

判決全文(PDF)
 

大事なところを引用します。

「この請求権は, 被保険者の死亡前であっても,上記死亡保険金受取人において処分したり,その一 般債権者において差押えをしたりすることが可能であると解され,一定の財産的価値を有することは否定できないものである。したがって,破産手続開始前に成立し た第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じ た原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして,上記死亡 保険金受取人の破産財団に属すると解するのが相当である。」
 

したがって,生命保険金はすべて管財に取られてしまうという結論になります。
 
 

とすると,少し腑に落ちない点が出てきます。

例えば,平成24年3月甲乙破産→平成25年3月に破産手続廃止&免責許可→平成25年4月に丙さん死亡だったら,そもそも破産手続が終わっているわけですから保険金は取られないと思うんですよね。そうすると,破産手続が早く終われば保険金は取られないけど,破産手続が長引けば丙さん死亡による保険金は取られることになり,「破産手続の長短」という破産者の力の及ばないところで換価されるか否かが変わってきてしまいます。破産手続開始決定時で線引きをした基準はどこへ行ってしまったのでしょうか。
 

なので,私個人としては,破産法34条2項に言う「破産手続開始前に生じた原因」というのは,保険契約ではなく保険給付の原因(保険事故)が生じたときで区別するのが良いと思います。つまり,甲乙さんの破産手続開始前に丙さんが亡くなっている(保険給付原因)のであれば換価され(管財人に取られ),開始後に亡くなったのであれば換価されない(破産者の新得財産)とした方が明確ですし,不公平感も無いと思います。
 

とはいえ,最高裁が上記の通り判決しており,問答無用で全部取られてしまいますので,お間違えの無いようお願いします<(_ _)>

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1月 27 2016

予備的相殺の抗弁(最高裁判決)

もう1か月以上前の最高裁判決なんですが,何にも触れていなかったので備忘の意味も込めてまとめておきたいと思います。 

ただ,このような相殺の抗弁はこれまで普通に主張しており,普通に判断されていたので,最高裁まで揉めている争点だとは正直知りませんでした。 
 
 

【事案の概要】

 

Aさんは,貸金業者B社との間で,以下の取引がありました。

平成8年~平成12年(第1取引)

平成14年~平成21年(第2取引)

第1取引だけで計算すると,すでに完済していますので当然過払いに,第2取引だけで計算すると借金が残り,第1取引と第2取引を一連のものとして計算すると過払いになるという事案でした。具体的な金額はわかりませんが,説明の便宜上,第1取引の過払いが30万円,第2取引の借金が50万円,一連として計算した場合は10万円の過払いになるとしておきます。

また,正確な日にちは不明ですが,少なくとも第1取引の完済より10年以上経過した後に本件訴訟は提起されています。

さらに,B社は,上記取引は一連のものではなく第1取引は時効だから第2取引の借金50万円を支払え,という反訴を提起しました。
Aさんは,第1取引と第2取引は一連のものであるとして10万円を請求したものの,仮に分断だと判断される場合は,第1取引の過払い金30万円と第2取引の借金50万円とを相殺するとの主張をしました(つまり,借金は差し引き20万円しか残らないという主張)。
高裁は,第1取引と第2取引は一連のものではないから第1取引の過払金は時効で消滅していると判断しましたが,相殺について判断することなく第2取引分の借金50万円を支払えというB社勝訴の判決をしました。 
 

【最高裁の判断】

 

最高裁サイト

判決全文(PDF)
 

二重起訴の禁止の部分が出てくるのでなかなか説明がしにくいのですが,結論としては,相殺の主張をすることは問題ないから高裁は判断すべきだという趣旨の判決になっており,Aさん側の勝訴となっています。
 

とはいえ,どこまで踏まえて訴訟を提起したのかわかりませんが,一連の主張をして過払い金の返還を求めた訴訟が,結果として借金が残る結果となってしまっているので困ります。上記のとおり,正確な金額がわからないので何とも言えませんが,できれば和解で終わらせておきたい事案ですね・・・。

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