はなみずき司法書士事務所
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7月 17 2013

判決→強制執行→財産開示→過料??

1つ前の記事で強制執行の話を書きました。 

 

結果としては,予想していたよりは回収できましたが,残念ながら全額の回収には至りませんでした。 

 

次のステップとして財産開示手続に進みます。

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財産開示手続とは,文字通り財産がどれだけあるのか債務者に開示させるよう裁判所にお願いする手続きです。
つまり,「本当は財産持ってるんでしょ?あるなら出しなさいよ。あるのに隠してると制裁するよ?」ってことをこちらに代わって裁判所から言ってもらうってことですね。

 

 

この手続ができた理由は,判決イコール回収ではないことにあります。
裁判をやって判決を取ったとしても,裁判所が代わりに回収してくれるわけではありません。あくまで,裁判所が(合法的に)強制的にぶんどっちゃっていいよというお墨付きをくれたにすぎません。なので,相手がまったく財産を持っていない場合は現実的には回収不能ですし,財産を隠していた場合にはそれを自力で探して回収しなければなりません。
そして,前者の場合はどうにもなりませんが,後者の場合については一応自力で調査をし,それでもダメなら上記の財産開示手続を使うことになります。

 

ただ,この財産開示手続,現実的には実効性に乏しいところがあります。

というのは,破産手続などと異なり,強制的に相手を裁判所に連れてくることができませんので,裁判所の命令を無視する可能性があります。
※破産の場合は強引に連れてくる(引致する)ことができます(破産法38条

 

もともと,裁判所の判決や差押命令により支払えと言われているにも関わらず払ってない訳ですから,財産開示についても無視する方が自然かもしれません。
そして,無視をした場合の制裁が「30万円までの過料」となっています(民事執行法206条)。

この「過料」というのは,罰金みたいなものですが,最大で30万円なので数百万円,数千万円の支払いを拒絶しているような債務者にとっては果たして30万円の過料が制裁になるのかどうかわかりませんよね。

 

 

もっとも,業者によってはこの過料の制裁を恐れ,キッチリ満額支払っているというケースも多々ありますので,実費として1万円程度しかかからないことも考慮すると試してみる価値は十分にあると思います。

 

ということで,次のステップである財産開示手続を進めたいと思います。

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6月 24 2013

強制執行あれこれ

過払い訴訟において,大手と言われているような業者であればあまり問題になりませんが,中小以下の業者が相手だと判決を取ってもなかなか回収ができません。

 

その理由は単純で「無い袖は振れない」という一言に尽きます。

 

そんな業者は,こちらの足元を見て平気で10%や5%といった極めて低い割合の和解提示しかありませんので,お金をかけて訴訟をしたは良いものの,かけた費用以下の過払金しか回収できなかったということもあります。

さらに,和解をせず業者の預金口座などを差し押さえて回収する方法もありますが,お金が全然入っていないか入っていても他の過払金を持っている方とバッティングしてしまい,あまり回収できないというケースも多くあります。なので,依頼者の判断によりますが,最初から訴訟をせず和解をするということもあります。

 

 

さて,今回のご依頼は,あまりにも相手の業者の和解提示額が低いため,訴訟を進め判決を取って強制執行をすることとなりました。

 

まずは,口座を差し押さえるわけですが,その差し押さえる口座も十分に吟味しなければなりません。

というのは,強制執行においては,どの銀行どの支店の口座について,いくら分を差し押さえるのかをこちらで指定しなければならないからです。

 

例えば,甲社に対して100万円の過払金があり,甲社は,A銀行の名古屋支店,B銀行の名古屋支店と豊田支店に口座を持っていたとします。

この場合,仮にA銀行の名古屋支店の口座を100万円押さえるという申立てをした場合,バッチリA社銀行の名古屋支店に100万円以上入っており,誰ともバッティングをしなければ全額回収できます。しかし,A銀行の名古屋支店の口座にお金が入っていない場合は,例えB銀行の口座にお金が入っていたとしてもまったく回収できないことになります。

また,仮にA銀行の名古屋支店に30万円,B銀行の名古屋支店に20万円,豊田支店に50万円と分けて口座を押さえた場合,全部の口座を押さえるので外れる可能性は低くなりますが,もしA銀行の口座に100万円以上入っており,B銀行の名古屋支店及び豊田支店にはまったく入っていなかった場合でも,最大で30万円しか回収できないこととなります。

さらに,差し押さえのタイミングも重要です。というのは,強制執行は基本的には差し押さえた時点での口座を押さえられるに過ぎず,その後に口座に入金されたお金については強制執行は及ばないこととなります。

 

以上から,回収するために重要なこととしては,

 

お金が入っていそうな口座を

できる限り他の方とバッティングせずに

お金が入っていそうな時期に

差し押さえをする。

ということになります。

 

このうち,①については,会社の本店近くにある金融機関の方が入っている可能性は高いと思いますが,そうでないケースも結構ありますので,一概には言えません。

次に,②については,他の方の動向などさっぱりわかりませんが,基本的にはインターネット上に出てる口座は危ないです。つまり,一般の方が差し押さえをしようにも,ご自身が取引をされていた口座以外の口座は知らないと思います。そこで,インターネットで検索しどこか口座が無いかを調べられると思いますが,同じように考えている方も多いのでバッティングする可能性が高いと思われます。

当事務所は,過去取引をされていた方の口座や任意整理等で和解した場合の振込先を把握していますので,インターネット上では見つけられない口座を押さえることができます。またひとつのポイントとしては,業者の名前が変わっている場合に,とある口座は口座名義人の名前がちゃんと変えられているのに,とある口座は前の名前のままになっていることがあります。その場合,名前がちゃんと変えられている口座を現在も使っていると判断できますので判断材料になります。

最後に,お金が入っていそうな時期というのは,基本的には顧客の給料日です。つまり,押さえようとする口座は,その業者に借り入れがある方が返済するための口座なので,借り入れの返済日付近で差し押さえをした方がお金が入っている可能性が高いからです。では,いつが多いかと言うと,当事務所で任意整理をした方で一番多い返済日は月末です。世間で言われている通り,当事務所の依頼者の給料日は20日や25日が一番多いのですが,皆さんが給料日その日に返済できるわけではないので月末にしています。もちろん,月末の期限ギリギリではなくちょっと前に返済される方が多いので,実際には27日とか28日くらいが一番多いかと思います。

なお,差し押さえの日は裁判所に申し立てをした日ではなく,裁判所から口座のある金融機関に書類が届いた日になりますので,差し押さえようとする日の数日前に申し立てをしなければならないこととなります。

 

 

ということで,本日,上記の条件を満たした選りすぐった口座をいくつかピックアップし,申立てをしてみました。

正直なところ,それでも全額の回収は厳しいとは思っていますが,和解するよりは少しでも多く回収できることを願っています。

 

少し話は変わりますが,昨年,NISグループ(旧ニッシン)という業者が破産しました。

先日,破産による配当があり,債権額に対して3.5%しか返還されなかったそうです。つまり,100万円の過払金があっても.35,000円しか返還されないということになります。

実は,当事務所で一昨年から昨年にかけてNISに強制執行の申立てをしました。その際,①本店近くの口座,②大都会にある顧客が多そうな口座,③依頼者とはまったく関係のない関東の銀行の口座の3つを押さえました。

結果としては,②と③は全額回収できましたが①については競合してしまいました。ただ,①は差し押さえの割合を低めにしていたため,結果としては満額から95%程度の過払金が回収できました。もし,①の口座を全力で押さえていたら,あまり回収できず,さらに時間切れで破産手続きに巻き込まれていたかと思うとゾッとします。

 

強制執行は,「出たとこ勝負」,「やってになきゃわからない」という側面がありますので,申し立てをして銀行から回答が来るまでは本当に心配です・・・。

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5月 08 2013

上訴された際の担保に関する最高裁判決

昨日,愛知県司法書士会で相談員をやっていたんですが,相談の合間に最高裁のHPを見たら,10日ほど前にかなり大事な最高裁判決が出てました。 

 

ただ,これを解説するのはかなり難しく,正直なところ私自身も完璧に理解しているとは思えませんが,備忘録として書いてみたいと思います。 

 

 

さて,金銭等の請求に際して,第1審で勝訴したとします。その場合,多くのケースで「仮執行宣言」というものが付されることがあります。
この仮執行宣言というのは,「判決が確定する前でも強制執行してもいいよ」というものです。というのは,判決が出たとしても,控訴や上告によって結論がひっくり返るかも知れませんので,判決に基づく強制執行は勝訴が確定して初めてできることとなっています。ただ,日本の裁判は終わるのに何年もかかることが多いため,事件の内容によっては,勝訴判決が出た場合に確定する前でも「」に強制「執行」をしてもいいよ,という「宣言」を裁判所がしてくれることがあるわけですね。
当事務所でも,判決によってすぐに返してもらえる業者は別として,多くの業者について判決が出たら即強制執行に着手しています。 

 

一方,敗訴した側としては,仮にでも強制執行されると甚大な被害を被ることがあります。例えば,会社が日ごろ使っている預金口座等を差し押さえられたら日常業務に影響が出まくることは想像に難くありません。 
そこで,申し立てにより,敗訴した側が一定程度の担保を入れることを条件に強制執行を停止させることができます。この担保というのは金銭を法務局に預けることによって行います。また,金額も裁判所の裁量であり明確な基準は無いと思われますが,私の感覚としては,判決で認められた金額の8~9割程度の担保を積ませているようです。 

 

 

 

やっと,本題に入ります。
今回の最高裁判決は,上記担保の扱いです。
具体的な内容としては,武富士に対して過払い請求をして勝訴したものの,武富士は控訴してきました。ただ,第1審で仮執行宣言が付いていたため,武富士は判決で認められた金額の8割程度の担保を法務局に支払い,強制執行の停止決定がされました。

ところが,ご存じのとおりその後に武富士は会社更生の申立てを行い倒産しましたので,過払金は3.3%しか返還されておりません。

 

そこで,問題になるのがこの担保はどうなるのか,ということです。というのは,この担保の性質は,過払金が返還されないときの担保ではなく,控訴等によって被った損害賠償を担保するものと解されているため,安易に過払い債権者がもらえるという結論にはなりません。 では,どうなるのか,というのが下記最高裁判決です。

 

最高裁サイト
判決全文(PDF)

 

 

正直なところ,かなり難しい・・・。ただ,これを超ざっくり記載すると下記のような感じです。

 

「担保を入れてもらった過払い債権者(損害賠償請求権者)は,担保金から他の債権者よりも優先して回収することができる権利がある。ただ,この債権は更生担保権という権利ではなく更生債権に過ぎない。そうすると,本来はやっぱり回収できないことになるんだけど,担保を入れさせたのは,回収できないというリスクを軽減するためのものなんだから,会社更生によって回収できないと解するのは問題がある。なので,更生計画(武富士だと3.3%しか返さない)というのとは無関係に供託されている担保金を請求できる。もっとも,供託された担保金を回収するためには,会社更生の管財人を被告として,担保金を回収できる権利があることを確認する判決を取らなければならないよ。」

 

う~ん。難しい・・・。 

 

 

なお,当事務所では,武富士の会社更生をした翌日に判決という事件はありましたが,担保を入れて控訴されている事件はありませんでしたので,この判決を使う事件はありません。 

 

とはいえ,さらに確認訴訟をしなければならないとのことですので,やはり回収までのハードルは高そうですね。

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5月 07 2013

代理権の有無と移送は無関係(司法書士向け)

4~5年前くらいに,アイフルが「約定利率で計算すると債務が残るが,法定利率で計算すると過払いとなる場合に,司法書士の代理権が無い」という謎の主張をして移送申立てをしてくることがありました。 

 

アイフル側としては勝ち目が無いと悟ったのか,そのような主張をしてくることはまったく無くなったのですが,久しぶりに謎の主張を根拠に移送申立てをされました。
当然,却下になるわけですが,どなたかの役に立つかもしれませんので念のためアップしておきます。 

 

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本当に今更な却下決定ですので,大したことは書いてありません・・・。 

 

 

 

 

なお,関係があるのは司法書士が代理人になった場合,簡裁に提起したものの地裁に移送申立てされた場合に限りますので,あまり活用されるシーンは無いと思いますが,一応内容を説明いたします。 

 

例えば,約定利率だと80万円の債務が残るが,法定利率だと90万円の過払いになるとします。

この場合,訴額は返還を求める90万円となりますので,簡裁に管轄があります(裁判所法33条1項1号)。
ところが,アイフル側は,80万円の債務も無くなるのだから80万円+90万円で訴額は170万円となり,地裁で審理すべきと主張してきます。 

 

ただ,この点は法律でバシッと返還を求める90万円が訴額になると書いてあるので,どうにもなりません(民事訴訟法8条)。 

 

さらに,140万円超だと司法書士の代理権が無くなることとなりますが,上記の通り140万円以下ですので,司法書士の代理権が問題になることはあり得ません。
なお,仮に司法書士の代理権が無かったとしても,代理権の不存在は移送事由ではなく却下事由(訴訟要件未充足)ですので,根本的にアイフルの主張は意味不明です。 

 

もし,本人訴訟などで簡裁に提起し,地裁への移送申立てをされた場合には上記を理由に反論してください。

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4月 26 2013

訴訟をするのにかかった費用(実費)も回収できます。

過払金等,お金の支払いを求める訴訟を提起して勝訴した場合,判決主文には通常次のような記載がされています。 

 

主文

 被告は,原告に対し,○○円及びうち○○円に対する平成○○年○○月○○日から支払い済みまで年○○%の割合による金員を支払え。
 訴訟費用は被告の負担とする。 

 

 この記載のうち,「1」については,訴訟で求めていた過払金等のお金の支払いそのものです。
その下の「2」が今回の記事のメインである「訴訟費用」です。 

 この訴訟費用については,別途法律が用意されております。
民事訴訟費用等に関する法律 

 

訴訟費用というのは,訴訟にかかった実費等で,具体的には下記のようなものです。 

・訴状に添付した収入印紙
・訴状等の郵送のために使った郵券(切手

資格証明書

 

 

さらに,これに加え,下記のようなものも認められます。 

・代理人が出頭した場合は,その日当
・代理人が出頭する際にかかった交通費
・書類作成の手間賃 

  

当事務所では,裁判所の出頭の際にかかった交通費や日当を別途請求しているわけではありませんので,この部分はかかった費用以上に依頼者のお手元にお金が返ることになりますね。 

  

ちなみに,裁判所から発行される訴訟費用額確定処分の書類はこんな感じです。

 

 

なお,以下の点についてご注意ください。 

 

①和解した場合は支払われません
通常,裁判上の和解が成立した場合,和解条項の最後に「訴訟費用は各自の負担とする」という文言が入っておりますので,訴訟費用を互いに請求することはできません。つまり,かかった費用は自己負担ということになります。 

 

②代理人の日当や交通費は,言い値が通るわけではありません
極端な例えを出すと,依頼した弁護士等との間で1回裁判所に出頭する度に10万円の日当を支払うという契約だったとしても,10万円の日当を相手方に請求することはできません。代理人の日当は一律3950円と定められています。逆に言えば,弁護士等との間で日当を支払うという合意が無かったとしても日当を請求することができます。
また,交通費については,実費が出ることもありますが,基本的には裁判所と事務所の直線距離に応じて定められます。これが結構安くて,長久手市にある当事務所から春日井簡裁に1往復する交通費は300円しかもらえません・・・。 

 

③手続をするのが少し後になります
訴訟費用は裁判が確定した後,第1審の裁判所書記官に請求します。
第1審で判決が確定すれば,そのあとすぐに手続ができますが,控訴審や上告審まで行ったあと請求する場合は,関係書類が第1審に戻った後に手続をしなければなりません。
名古屋簡裁から名古屋地裁,名古屋高裁に行った場合などは比較的早期に帰ってくると思いますが,他県の高裁や最高裁まで行った場合には第1審の裁判所まで書類が戻ってくるまで数か月かかることもあります。しかも,裁判所は書類が戻ってきたことを教えてくれるわけではないので,ちょくちょく確認の電話をしなければなりませんね。 

 

④支払ってくれないこともある
これは,訴訟費用に限らず,通常の請求しているお金についてもそうなんですが,判決というものは差し押さえ等をして強制的に回収することを認めてくれるだけであり,相手にお金がなければ現実問題として回収することはできません。
なので,判決を取ったとしても,相手の状況によってはお金が返してもらえないのみならず,訴訟費用も持ち出しになってしまい赤字になる可能性もあります。 

 

⑤訴訟費用に代理人報酬は含みません!
これが一番誤解されることが多いのですが,上記の通り,訴訟費用というものは基本的には実費に関するものだけです。例えば,過払い請求の場合,当事務所は成功報酬として21%をいただいておりますが,この21%相当額を相手方に請求することはできません

 

判決を取得したあとであれば,訴訟費用の請求手続きはそんなに難しいものではありませんが,弁護士や司法書士の中でもここまで請求している人はそんなに多くないと思います。
もし,すでに弁護士等にご依頼している場合,判決後に訴訟費用も相手に請求するようお願いされた方が良いと思います。

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4月 16 2013

債務整理の依頼者が弁護士を訴えた事件の最高裁判決

全然知りませんでしたが,債務整理の依頼者が,債務整理をした弁護士を訴えるという事件の最高裁判決がありました。 

 

 

ざっくり事案を説明すると次の通りです。 

 

Aさんは5社に対して合計250万円の債務を負っていた。 

 

弁護士に債務整理を依頼した(債務整理報酬30万円,過払い報酬30%)。 

 

このうち,3社については過払いであり,約160万円を回収した。また,残る2社についてはB社約40万円+C社約10万円の合計約50万円の債務が残った(ただし,C社の金額は弁護士の計算結果によるものでC社の主張額は約30万円)。 

 

弁護士は,B社,C社に対し,「8割を一括で返済するから和解してほしい。もし,和解できない場合は時効完成まで待つ。訴訟してもいいけど,無駄だと思いますよ。。」という趣旨の提案をし,B社については和解できたものの,残るC社については和解できなかった。 

 

C社との和解が難しいため,過払金から報酬や弁済金等を控除し,残金を依頼者に返還した。その際に,弁護士は,「時効完成まで待つ方針だけど,もし,C社から裁判等を起こされた場合は対応するから連絡してね」,と伝えた。 

 

実は,弁護士は他の依頼者から債務整理を放置したとのことで訴えられており,その旨が報道されていたので,Aさんは弁護士を解任し,別の弁護士に債務整理を依頼した。 

 

別の弁護士は,C社と交渉し,約50万円を分割で支払う内容で和解が成立した。 

 

当初の弁護士の債務整理方針がおかしく損害を被ったとしたAさんが弁護士を提訴。 

 

これについて,原審の福岡高裁は,弁護士はちゃんとAさんに説明しているから問題ない,との判決を出していました。そして,今回の最高裁判決です。

最高裁サイト
判決全文(PDF)

 

 

ざっくり判決内容を記載すると,

「弁護士が採った時効待ち方針は,C社がAさんに対して裁判等をしないことを一方的に期待して残債権の消滅時効の完成を待つというものであり,債務整理の最終的な解決が遅れるという不利益があるばかりか,当時の状況を考慮すると,C社がAさんに対する残債権の回収を断念し,消滅時効が完成することを期待し得る状況にはなかったのであるから,C社から提訴される可能性を残し,一旦提訴されると法定利率を超える高い利率による遅延損害金も含めた敗訴判決を受ける公算が高いというリスクをも伴うものであった。(中略)もし,時効待ち方針を採るのであれば,Aさんに対し,時効待ち方針に伴う上記の不利益やリスクを説明するとともに,回収した過払金でC社に対する債務を弁済するという選択肢があることも説明すべき義務を負っていたというべきである。」

として,Aさん勝訴としています。 

 

 

簡単に言うと,時効が完成するまで放置するという方針は極めてリスクが高いにも関わらず,それをほとんど説明せずにその方針を採ったことは依頼者に対する説明責任を果たしていないということです。 

 

正直なところ,いろいろ突っ込みどころが・・・

 

何はともあれ,報酬が高い!
債務整理報酬が30万円ってことは,1社当たり6万円です。しかも,C社に関しては和解はできていないので,実質的には4社で30万円です。とすると1社当たり7.5万円!
そして,過払い報酬も30%(税込31.5%)!

 

 

次に,時効待ち方針という作戦が意味不明です。上記最高裁は,時効待ち方針はリスクが高いんだから説明しろとのことですが,そもそも上記の事案において時効待ち作戦をとるということ自体がナンセンスです。

 

一般的に,業者は時効が完成する5年が経過する間際に訴訟等をしてくることが多いです。訴訟等を行うことで時効の完成を防ぐことができるからです。ただし,債務が極めて少額で訴訟費用だけで足が出る場合や借主が行方不明になっていて訴訟をしても意味がないという場合には訴訟をしてこないケースもあります。
なので,業者が借主の所在を把握できておらず,しかも時効完成まであと少しという状況であれば時効待ち作戦というのもありかもしれません

ところが,今回のケースだとすでに弁護士が間に入っているわけですから,依頼者Aさんの身元はバッチリC社にバレています。また,C社主張額は約30万円なので訴訟費用を使っても十分元が取れます。なので,時効待ち方針を採ったとしても,5年経過前に極めて高い確率でC社に提訴されると思われます。また,最高裁も触れていますが,提訴されることによって,まるっと遅延損害金が付加されますし,場合によっては訴訟費用まで負担しなければなりませんが,そんなリスクを負わなくても今回のAさんは過払金でC社の債務を一括で返済できるという,とても恵まれた状況にあります。

余談ですが,まったく分割弁済や利息カットの和解に応じない業者として,日本保証「武富士」承継会社)やクレディア,旧ネオライン系などがあります。これらの業者は,和解に応じないどころか一定期間遅れた時点でガンガン提訴してきます。上記判例のC社がどの業者なのかわかりませんが,和解に応じない業者は訴訟対応も迅速であるため,ますます時効待ち作戦はあり得ません。

 

以上の前提で時効待ち方針を採るなどあり得ません。だからこそ,新たに受任した弁護士もすぐにC社と交渉し分割弁済で和解したのだと思います(もっとも,分割金額が50万円になっているため,相応の遅延損害金が付されていると思われます)。

この点について,一切分割には認めないとか利息の減免はしないという東京弁護士会三会統一基準に応じない業者の言いなりになると,せっかく苦労して浸透してきた三会基準の意味が無くなるとの意見もあります。もちろん,この基準のおかげでたくさんの依頼者の方が救われたのも事実ですし,当然当事務所のこの基準に沿って和解交渉を進めています。しかし,いくら声高に正当性を説いたところで,三会基準は法的に強制力があるものではないため,業者が一切応じない場合にはどうにもなりません。仮に,業者に訴えられた場合に「三会基準がぁ・・・」なんて反論しても,裁判官と相手方の失笑を買って一蹴されるだけですからねぇ。

 

 

なお,当事務所の場合,ご相談いただいた時点で時効が完成しているかどうか疑わしいという場合には,時効完成についてのメリットとデメリット(リスク)について説明し,依頼者の判断にお任せしています。

説明内容は,「ご依頼をお受けして調査した結果,時効が完成していれば時効援用の手続きを行いますが,時効が完成していない場合は時効完成まで待つことはできないので分割弁済等の和解交渉をします。もし,支払いが難しいのであれば,確実に時効が完成するまで何もしないという選択肢もありますので,ご依頼をお受けせずにお帰りいただいた方が良いかもしれません。ただし,時効完成前に提訴された場合にはキッチリ遅延損害金まで付加されますし,もう和解には応じてもらえないかもしれません。」という感じです。

また,少なくとも,ご依頼をお受けした後に時効待ち作戦を採ることはありません。なぜなら,債務整理をお受けした弁護士等は,債権者(業者)に対して,誠実かつ衡平に対応する義務があるからです。受任しておきながら,時効完成まで放置するというのは,とても債権者に対する誠実な対応とは言えませんよね。なので,ご依頼をお受けした後に,どうしても時効待ち作戦を採りたいということであれば辞任せざるを得ません

 

 

しかし,依頼者からクレームが入るだけでも大ショックなのに,依頼者に訴えられ,さらに最高裁までいってしまって日本中に公表されるなんて想像しただけでも恐ろしい・・・。そうならないよう,誠実に業務を進めていきたいと思います。

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4月 12 2013

過払い利息の充当に関する最高裁判決

あまり大した影響は無いと思われますが,借主側に有利な最高裁判決が出ましたのでご紹介いたします。 

 

まず,判決内容の前提として何が問題となっているかを記載いたします。

法定利率よりも高い利率で取引を継続していた場合,とある時点から過払いになります。しかし,借主としては取引をしている時点ではどの時点で過払いになっていることを知らないため,過払になった後にまた借り入れをする場合があります。 

 

例えば,

 

平成25年1月1日時点の借入残高が法定利率で計算すると,残り1万円だったとします。

平成25年1月1日に2万円を返済したとすると,法定利率だと逆に1万円の過払いとなります。この過払いになった時点で,通常,貸金業者は「悪意の受益者」として,1万円だけではなく,1万円+返済するまでの利息(年5%)を付けて返還しなければなりません。

平成25年2月1日になると,過払金1万円に対して1か月分の利息が付きます(実際には毎日利息は付いています)。1万円の1か月分の利息は約42円ですので,平成25年2月1日時点での過払い金は1万円+過払い利息42円の合計10042円となります。

平成25年2月1日に5000円を再度借り入れたとします。ただし,計算上は,5000円は借り入れをしたのではなく,過払金の一部として5000円を返還してもらったとして計算をします。

 

<ここからが争いのポイント!>

 

平成25年2月1日時点で,10042円から5000円を差し引いた5042円の過払金が残っていることとなるのですが,この内訳が争いになっています。
つまり,この5000円を過払金から差し引く場合に利息から充当するとなれば,まずは過払い利息42円,続いて過払金元金の1万円から4958円を差し引き,過払金元金として5042円が残っていることとなり,以降,全額返還してもらうまで5042円に対して利息が付いていきます

一方,利息には充当せず,過払金元金に充当されるとすると,過払金元金1万円から5000円を差し引くこととなるため,過払金額5000円と利息42円が残っていることとなり,利息に利息は付かないため,以降は5000円に対して利息が付いていきます
つまり,前者だと過払金元金と利息はまとめて清算,後者は元金と利息を別途清算するという内容になり,借主側としては前者の方が過払金元金が大きくなる結果,有利となります。

 

 

ということで,最高裁判決です。
最高裁サイト
判決全文(PDF)

 

内容としてはあっさりしたもので,「過払金について発生した法定利息を過払金とは別途清算するというのが当事者の合理的な意思であるとは考えにくいから,過払金について発生した法定利息の充当につき,別途合意があると評価できるような特別な事情が無い限り,まずは法定利息に充当し,その後に過払い金の元本に充当すべきである。」としております。

 

ということで,過払金発生以降に借り入れをした場合には,まずは過払い利息に充当され,その後に過払金元金に充当されるということで確定いたしました。

 

 

なお,上記説明は42円という微々たる金額の差になっておりますが,取引が長い場合だと,ものすごい差が出てきます。実際に現在進行形で当事務所で進めている事件でも,充当するかしないかで100万円以上差が出ています
また,充当すると過払いになるけど,充当しないと未だ借り入れが残るというケースもありますので,かなり重要な論点であることには間違いありません。ただ,現実的に,業者は充当うんぬんという次元ではなく,そもそも過払い利息自体が発生しないという形で争ってくることがほとんどであり,実際過払い利息が発生した場合には,この充当で争ってくることはあまりありません。この点で争ってくるのはアイフル株式会社くらいだと思いますが,少なくとも当事務所ではこの論点で負けたことはありませんし,負けたという話もあまり聞きません(もっとも,今回の最高裁判決の原審の大阪高裁では負けているようですが・・・)。

 

いずれにしても,良い内容であることには間違いありませんので,この点については対応が楽になりましたね。

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3月 25 2013

過払い返還,密約で法律事務所などが勝手に減額

1364265544639昨日,朝日新聞の社会面にこんな記事が載りました。

記事(ネットだと一部しか見られません。)

 

 

平成25年3月24日朝日新聞社会面の一部を引用いたします。

以下,引用部分

朝日新聞は、全国展開する消費者金融業者の内部資料を入手した。それによると、協定は「包括和解」などと呼ばれ、相手先には、過払い金の返還請求を主に扱う大都市圏の弁護士や司法書士の法律事務所などの名前が20ほど並んでいる。
法律事務所などは多数の債務者から相談を受けるが、返済した合計額から正しい金利で計算した借金を引いた結果、(1)まだ借金が残る人(2)借金は完済し、業者から過払い金を取り戻せる人――に二分される。

協定は、(1)には借金の金利免除や分割での返済を認める一方、(2)には本来の返還額の9~5割をカットし、(1)(2)についてこの業者と一括で和解する。法律事務所などに今後依頼する債務者にも適用される。

和解は、それぞれの債務者の事情や要望に応じて個別に判断するのが本来のあり方だ。協定により、法律事務所は1件あたりの手間が減り、短期間に大量の依頼を処理できるため手数料を稼げる。業者も返還の支出を減らせ、双方にメリットがある。だが、(2)の返還請求ができる人には不利益しかなく、協定を知らないまま返還額を減らされているのが実態だ。

この業者は取材に「和解は個別に行っている。ご指摘のような協定はない」と回答。資料に名前のあった法律事務所などのうち十数カ所にも取材を申し込んだが、いずれも「お答えすることはない」などと拒否した。

各業者に取材したところ、複数の大手業者は、法律事務所との交渉に際し「減額をお願いする中で、具体的な割合や数字を『目安』として示すことはある」と回答。しかし「提案は和解内容を拘束するものでなく、交渉は個別にしている」「和解交渉は個別の事情、意向に応じて行う」として、協定の存在を否定している。

引用終わり

 

 

すごく簡単に記事の内容を引用すると,一部の消費者金融と一部の法律事務所,司法書士事務所が密約(包括和解協定・包括的和解契約)を結んでいたとのことです。
この包括和解協定(包括的和解契約)とは,

法律事務所としては借り入れが残る方の分割弁済で有利な条件で和解できる。また過払い金についても一定の金額を早期に返還してもらえ,事務量が大幅に削減できる。

消費者金融としては,過払金をかなり減額した割合で和解してもらえる。

という双方にメリットがある内容となっております。ただ,一番肝心な依頼者の目線が抜けており,減額してでも良いからどうしても早期に返還してほしいという方であれば別ですが,時間がかかってもいいから多くの過払い金を返還してもらいたいという方にとっては裏切り以外の何物でもありません。 

 

 

 

 

昨年12月頃,当事務所に朝日新聞の記者さんから電話があり,当事務所のブログ記事をご覧になり,取材をしたいとのことで,わざわざ東京から当事務所まで取材に来られました。つまり,上記の記事に関する取材先の一部は当事務所です。当事務所としても知りうる限りの情報を提供いたしました。 

 

まだ記事になっていない段階だったので,同業者にも黙っていましたしブログやツイッターにも書いておりませんでしたが,昨日記事になったことで各方面に聞いてみたところ,実際,上記のような密約をもちかけられることはあったものの,誰一人として密約を結んだ方はおらず,むしろ,そんな密約を本当に結んでしまった事務所が存在したことに驚いていました。 

 

また,取材を受けた際に,密約を結んだと思われる事務所の一覧表を見ましたが,テレビに出ているような大手事務所もあり,衝撃を受けました。 

 

私は決して大手事務所だからダメだとか良いだとかは申し上げませんが,少なくともその事務所またはその弁護士や司法書士がどのようなスタンスで業務を進めているかをちゃんと聞いてからご依頼された方が良いかと思います。

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3月 01 2013

時効消滅した過払金を貸金債務と相殺できるか(最高裁判決)

時効消滅した過払金と借入債務との相殺についての最高裁判決が出ました。

ただ,これを簡単に解説するのが難しく専門用語が出てくるため興味が無い方はつまらないと思います。ですので,興味の無い方は飛ばしてください・・・。 

 

 

ということで,いくつか事前知識が必要となります。 

 

 

AとBが互いに相手にお金を貸している場合,「現実的に双方が双方に返済するのではなく,対当額で貸金を消滅しましょう」というのが相殺ですが,相殺するためには基本的に双方の貸金について支払日が来ていなければなりません(これを「相殺適状」と言います)。
実際には,相殺適状にあるためには,「同種の債権であること」など,他の条件もあるのですが,この判例では他の条件は問題ないのでこれをもって相殺適状とします。

 

 

例えば,AがBに100万円を貸しており,BがAに30万円を貸している場合,AもしくはBが相殺すると,30万円部分について互いに消滅し,Bは残り70万円をAに返済すれば良いこととなります。

 

しかし,AがBに30万円を返済する期日が平成25年5月1日,BがAに100万円を返済するのが平成25年3月1日だった場合,平成25年3月1日にAからは相殺できますが,Bからはできません。なぜなら,相殺というのは一種の返済であり,Aは平成25年5月1日まで返済しなくても良い(これを「期限の利益」と言います。)ので,Aとしては強制的にBから相殺される言われはないからです。しかし,Aが進んで早めに返済するのは自由なので,平成25年3月1日時点において,Aから相殺することは可能です。この,自ら進んで早めに返済する,ということを専門用語で「期限の利益の放棄」と言います。また,契約により,返済に遅れた場合は,分割で返済していたものを一括で返済しなければならなくなるケースが多いです(これを「期限の利益の喪失」と言います。)。

 

さらに,民法580条に「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。」と規定されています。

 

例えば,上記の例でAがBへ返済する期日が平成15年2月1日,BがAへ返済する期日が平成25年4月1日だったとします。
通常,債権は10年経過すると時効により消滅してしまうので,AがBへ返済する義務は平成25年2月1日に消滅してしまっています。とすると,AはBに貸している100万円を請求できるかというとそうではなくて,民法580条により,Bは時効で消滅したはずの30万円の債権を使って相殺し,残り70万円のみAに支払えば良いということになります。

 

 

 

以上が前提知識です。

 

 

 

そして,やっと最高裁判例を説明すると,事情は下記の通りです(説明しやすくするためにちょっと簡略化しています)。 

 

 

Aさんは,B業者と平成8年から9年にかけて取引をしており,この取引により約20万円の過払い金が発生していた。

平成14年1月,AさんはB業者と取引を再開し,平成22年当時まで取引を継続していた。

平成22年7月に,Aさんは返済を延滞してしまい,一括で返済しなければならなくなった(期限の利益を喪失した)。

平成22年8月,Aさんは,B業者に対し,①で発生した過払金と約20万円について相殺し,約20万円を差し引いた残りを一括で返済した。

B業者は過払金は時効により消滅しているから,約20万円についても払えと主張している。 

 

というものです。 

 

 

 

これについて最高裁は,過払金を使って相殺できないと判示しました。 

 

 

最高裁サイト
判決全文(PDF) 

 

 

 

その理由は,相殺の条件として法律の規定では「双方の債務が弁済期にあるとき」となっている以上,単に自ら進んで返済ができるような状況にあったというだけでは足りず,期限の利益を放棄したり喪失したりして,現実的に弁済期が到来していなければ相殺適状に当たらないから,としています。 

 

つまり,期限の利益を喪失した平成22年7月の時点ですでに過払金は時効により消滅してしまっており,過払金と取引再開後の借金は相殺適状になっていないから,Aさんの相殺は認められない,ということとなります。 

 

なお,あくまで相殺適状時に過払金が時効になっているかどうかが問題であり,相殺の意思表示をした時点ではありません。 

 

ですので,

平成15年2月 過払金発生
平成20年3月 新たな借金発生
平成25年1月 新たな借金について延滞し,期限の利益喪失
平成25年3月 相殺の意思表示 

 

という場合,過払金が発生したのが平成15年2月ですので,平成25年2月に過払金は時効により消滅していますが,平成25年1月に期限の利益の喪失により相殺適状になっていますので,平成25年3月の時点でも相殺は可能ということになります。 

 

実際,かなり昔に取引をして解約をしたのち,同じ業者と再度契約したものの返済が難しくなり債務整理をされるという方はかなり多くいらっしゃいます。
当初の契約を解約しておらず,期間も離れていないなど,一連取引として検討できるのであればまったく問題ないのですが,別取引と認定されるような事案だと相殺の可否はかなり重要です。
また,省略していますが,判例の事案のように同じ会社ではなく合併等により相殺適状が問題になるケースもあります。
有名どころだと,アコムとキャッシュワンプロミスとアットローンなんかがまさにそうです。 

 

 

 

正直なところ,自分で書いておきながら,この解説がわかりやすいとは思えないのですが,上記のような事案に該当する方は,少しでも早めに手続きをされた方が良いかと思います。

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2月 26 2013

奨学金問題

本日,こんな記事がありました。

→「金融事業化」する日本の奨学金制度 「返済できない若者」が急増 

 

内容を端的にまとめると,最近は奨学金の返済を滞る方が増えてきており,それに伴い奨学金の回収が厳しくなってきている,というものです。 

 

そして,こういった状況にある方における「救済手段」として,①自己破産等の債務整理を行う②時効を援用する,の2点を挙げています。 

 

しかしながら,上記の「救済手段」で解決できる場合はあるとは思いますが,極めて厳しいと思います。そして,私の結論としては,奨学金の借り入れが残っている場合について,何の問題もなく解決できる手段は無いと思っています。 

 

以下,上記の「救済手段」について私が思うことを記載いたします。 

 

 

①自己破産等の債務整理

上記の記事によれば,「自己破産や個人再生などの債務整理手続きがある。お金のない人は法テラスを利用して、費用援助を受けながら、専門家の支援を受けるという方法もある」としています。
確かに,手続費用がご用意できない場合でも法テラスを利用することによって手続きを進めることができます。実際,当事務所でも常に法テラス利用の案件をお受けしている状況にあります。
そして,破産手続きをすれば奨学金の返済義務はなくなりますので,ご自身としては確かに奨学金の問題は解決できたかもしれません。

しかしながら,自己破産しても個人再生にしても,保証人には効力は及びません

奨学金を借りる場合,通常は2名の保証人が求められ,1名はご自身の両親(一般的には父親),もう1名は生計を別にする方でなければならないため,親戚の方などに保証人になってもらっていると思います。

つまり,自己破産や個人再生により,ご自身は返済義務がなくなるかもしれませんが,その代わり,保証人のもとへ請求が行きますので,ご家族,もしくは親戚を含めた全体からすれば何の解決にもなっていません。

したがって,奨学金以外にも多額の借り入れがあり,その他の借り入れが無くなれば奨学金を返済していけるということであれば自己破産等を行ったうえで,免責許可が確定したのち,保証人の方と相談をして返済を継続していくことなり,奨学金以外の借り入れが無いのであれば返済猶予制度を使って返済していくべきだと思います。

なお,上記記事では,「非常に厳しい要件が課されている上に、運用上も様々な制限が課され、申請方法なども複雑で不明瞭なため、制度を利用できない返済困難者が多い」とありますが,少なくとも自己破産の手続をすることと比べたら全然こちらの方が簡単です。 

 

 

 

②時効の援用

返済期日から10年間返済しないと,時効によって返済しなくてもよくなります(民法167条)。ただし,単に10年経過するだけではダメで,10年経ったので時効により借金(奨学金)は無くなりましたよ,と通知を出さなければなりません(民法145条)。これが「時効の援用」です。

したがって,実際に返済期日から10年経っていらっしゃるのであれば確かに時効の援用により解決できます。

しかし,記事にもあるとおり,日本学生支援機構は奨学金の回収を強化しており,支払督促や訴訟などの裁判手続をかなりしてくるようになりました。実際に,私が裁判所に行くと,最近は結構奨学金の回収の裁判を見かけます。
そして,裁判手続きを使って回収手続きに入られると,時効が中断され(民法147条),さらに裁判手続きが終わったときから,再び10年が経過しなければ時効にはなりませ(民法157条)ん。

ですので,上記の通り,10年経過しているのであれば時効の援用をしていただければ良いのですが,10年経過するまで裁判手続きをされないまま放置されているという方はかなり少ないと思われ,現実的な解決方法ではないと思います。

なお,ご自身は裁判手続きをされていなくても,保証人が日本学生支援機構から裁判手続きをされた場合にも時効が中断しますので,ご注意ください(民法458条民法434条)。

 

 

以上から,奨学金の解決手段としては,正直なところ抜本的な解決手段はなく,返済猶予を求めるか,他の借り入れを含めて債務整理によって減額または免除したうえで,保証人と相談して奨学金を返済していくしかないと思います。

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