令和3年に入って新型コロナウイルスの猛威は収まるどころかますます拡大しており、本日(令和3年1月4日)時点において菅総理が再度緊急事態宣言を発出する予定であると報じられております。
このような状況下で、休業要請や時短営業の要請など、飲食店の方々には大変なダメージが生じることはもちろんのこと、多くの業種にも影響が出ることは間違いないと思います。
そして、住宅ローンを組まれている方については、収入減によって住宅ローンの支払いについてお困りの方も多いと思いますので、この対応策についてまとめてみました。
条件変更(リスケ)
いわゆる「リスケ(リスケジュール)」と呼ばれるもので、住宅ローンの返済内容を変更することです。例えば、毎月の返済額を減らす代わりに、返済期間を延長するような方法になります。
このリスケについては、銀行側からお客さんに対して話が来るものではありませんので、お客さん自らが銀行に相談に行っていただく必要があります。
あまり大々的に広告されておりませんが、大手銀行では下記のとおり公表しておりますので、住宅ローンを組まれている金融機関に直接ご相談ください。
→ 三菱UFJ銀行(当行住宅ローンをご利用中のお客さま :ご返済条件の変更)
→ 三井住友銀行(住宅ローン 「返済プラン」の見直し)
→ みずほ銀行(返済額増減サービス)
→ りそな銀行(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う、ご返済に関するご相談)
なお、金融庁から銀行に対して、柔軟に応じるよう要請をしておりますので、基本的には要望に応じていただけるものと思います。
→ 住宅ローン等に係る要請について
→ 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた対応について(PDF)
自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン
台風や地震などの比較的目にする自然災害に加えて、今回の新型コロナウイルスの蔓延も自然災害に当たり、こちらの債務整理ガイドラインに沿って調停を進めることができます。
上記のリスケは、基本的には返済額の減額と返済期間の延長がメインとなりますが、こちらの債務整理は債務自体を減額したりカットしてもらうことができる場合があります。
また、いわゆるブラックにならないため今後の借入に関する障害が少なく、手続を進める際の弁護士費用が無料という点が大きなメリットです。
→ 新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則について
こちらの利用を希望する場合、借入をされている銀行を経由して進めることとなりますので、まずは銀行にご相談いただくこととなります。
→ 手続の流れ
債務整理(任意整理)
上記の「自然災害による被災者の債務整理」は必ずしも希望されるすべての方が手続を進められるわけではありません。
具体的には、免責不許可事由がある場合や新型コロナウイルスが蔓延する前から延滞されていた場合(ただし、債権者の同意があれば可)などは手続を使うことができません。
→ Q&A(この特則に基づく債務整理の対象となり得る個人の債務者とは、どのよ うな債務者を指すのですか。)
そのような場合には、住宅ローン以外の借入があれば、その他の借入について任意整理によって返済額を調整し、住宅ローンについてはそのまま支払っていくということが考えられます。
ただ、住宅ローンそのものについて減額できるわけではないので、あくまで他の借入がネックになっているときに使える手続であり、いわゆるブラックになってしまうというデメリットもあります。
債務整理(個人再生)
上記の任意整理によっても住宅ローンの返済が難しい場合に、他の借入について最大で1/5まで減額し、住宅ローンをそのまま支払うということが考えられます。
例えば、住宅ローンの返済が毎月10万円、他の借入の返済が毎月10万円の合計20万円ある場合に、他の借り入れの返済を毎月3万円程度まで減額し、合計13万円の支払いが可能なのであればこちらの方法を進めることができます。
加えて、状況によっては住宅ローンのリスケをしたり、一定期間元本を据え置いた上で利息のみの支払いとすることなどができる場合があります。
個人再生は、他の借入がある場合に大きな減額が見込めますので、住宅ローン以外の借入がある場合は「自然災害による被災者の債務整理」よりも大きなメリットがあります。
もっとも、個人再生はそれなりの費用(30万円~50万円)がかかりますし、いわゆるブラックにもなるうえ、ご家族の協力が不可欠など手続自体がかなり大変です。
まとめ
以上から、住宅ローンの返済が難しくなった場合または難しくなりそうな場合は、まず銀行にリスケのご相談をしていただき、リスケでは対応が難しい場合に債務整理をご検討いただくことになると思います。
当事務所でも、任意整理や個人再生は数多く手続を行っておりますので、遠慮なくご相談いただければと思います。