不動産売買に関すること

印鑑手帳(カード)>実印>権利証

先日,取引先の金融機関の担当者さんと不動産の登記に関してお話しているときに,印鑑手帳(印鑑カード),実印,権利証でどれが一番大事か,という話になりました。
 

当然ながら,すべて大事に保管していただくべきものとなりますが,あえて順位を付けるとしたら,私は①印鑑手帳(カード),②実印,③権利証という順番だと思います。
 

以下,簡単に理由を書いてみたいと思います。

 
 

それぞれの物

 

<印鑑手帳(印鑑カード)>

お住まいの役所にて印鑑証明書を発行してもらうために必要な手帳(カード)となります。

名古屋市の場合だと手帳が発行されますが,豊田市だとカードが発行され,各自治体によって異なります。この手帳(カード)と来庁者の本人確認書類(運転免許証等)があれば役所にて印鑑証明書を発行してもらうことができます。

なお,印鑑手帳等を紛失した場合は,役所において再発行してもらうこともできます
 

<実印>

「実印」という印鑑が売っているのではなく,お住まいの役所に登録している印鑑のことを実印と言います。

100円ショップに売っているような量産されている印鑑は本来は印鑑登録できないのですが,役所の担当者に量産されているものなのかそうでないものなのかは判断できませんので,現実的には100円ショップの印鑑でも登録してしまえば,その瞬間からその印鑑は「実印」ということになります。

→ 印鑑について

実印を紛失した場合,役所において印鑑登録の廃止をするか,別の印鑑を再登録することによって失くした印鑑は「実印」ではなくなります。
 

<権利証>

不動産を購入した際に法務局から発行される書類であり,平成17年以前は物々しい感じの紙で表紙が付いていることが多いと思いますが,平成17年以降,登記識別情報通知書という緑色の紙にパスワードが書かれた紙が発行されるようになりました。この権利証が無いと,不動産を売却したり担保に入れたりするのが大変です。

この権利書はいかなる理由においても絶対に再発行されません。


 

権利証が無くても不動産は売却できるが,印鑑証明書が無ければ不動産は売却できない

 
さて,話を戻し,どれが大事かという点についてですが,印鑑手帳は再発行してもらえるし,実印も別の印鑑を登録することで解決できますが,権利証は絶対に再発行してもらえませんので,権利証を一番大切にしておかなければならないような気もします。
 

しかしながら,権利証が無くても不動産の売却はできます。というのは,もし権利証を失くしたら売却できないということになると,権利証は再発行されない書類ですので何があっても売却できないことになってしまいますよね。それでは困ってしまいますので,権利証が無くても売却するための方法がいくつか定められています。

→ 権利証を失くしてしまった場合
 

したがって,権利証を紛失してしまっていても不動産を売却することは可能です。
 

一方,印鑑証明書はそういう訳にはいきません。権利証があっても無くても絶対に必ず必要になります。実印も同様ですし,これに例外はありません。 
 

悪用される可能性

 

では,印鑑登録や実印,権利証が盗難にあった場合に悪用される可能性を考えてみます。
 

まず,印鑑手帳が盗難にあった場合,印鑑証明書を取得することができます。その際,窓口に行った人の身分証明書は必要ですが,本人からの委任状は必要ありません。とすると,事実上,印鑑手帳が悪意ある人に盗まれてしまった場合,簡単に印鑑証明書を取得されてしまいます。とすると,実印そのものの偽造もできてしまいますので,印鑑証明書と実印のセットが悪用されてしまう可能性があります。印鑑証明書と実印があれば,自動車の名義変更ができてしまいますし,不動産の名義変更ももう1つステップを踏めばできてしまいます
 

次に,実印が盗難にあった場合ですが,印鑑証明書が盗まれていない限りあまり大きな問題になりませんが,日本は印鑑社会ですので,たとえ印鑑証明書が無くても実印が押された偽造の契約書が出てきた場合には大問題となります。
 

最後に権利証についてですが,正直なところ盗まれたからと言って悪用される可能性はほぼありません

というのは,権利証だけでは何もできないからです。上記のとおり,不動産の名義変更や担保権の設定をする場合,権利証の有無に関係なく印鑑証明書及び実印が必要になりますからね。

また,誤解されている方も多いのですが,権利証はあくまで名義変更や担保権の設定等の際に必要になるだけの書類であり,所有権を証明する書類でもありません(所有権の証明は「登記事項証明書」で行います。)。

さらに,権利証が盗まれた場合に,変な登記申請があった場合は登記手続がストップして本人確認をする,という不正登記防止申出制度もありますので,ますます権利証が悪用される可能性は低くなります(不動産登記法24条)。ちなみに,不正登記防止申出制度は印鑑証明書の盗難でもできます。
 
 

以上から,ども書類等も大事ではありますが悪用の危険性を考えると,①印鑑手帳>②実印>③権利証の順ではないかと思います。
なお,すべてのものをまとめて保管していると,一気にいろんなことをされてしまうため,印鑑手帳,実印,権利証はそれぞれ別のところに保管されることを強くおススメいたします。