相続に関すること

「法定相続情報証明制度」の導入

本日,法務省より新たな相続手続制度についての発表がありました。
 

→ 相続手続きを簡素化=戸籍書類一元化へ新制度-法務省
 


 

以下,時事通信社2016年7月5日14時58分の記事(http://www.jiji.com/jc/article?k=2016070500470&g=soc)を引用します。
 

現行制度では、被相続人の出生から死亡まで全ての戸籍謄本など大量の書類を集め、銀行などの窓口ごとに提出する必要がある。新制度では、戸籍関係の書類を一元化し、1通の証明書を提出するだけで済ませられるようになる。
具体的には、遺産の相続人は法務局に戸籍関係の書類一式を提出すれば、相続手続きに必要な「法定相続情報」を記した証明書を交付してもらえる。相続人は被相続人の預貯金、不動産などを管理する銀行や法務局の窓口に対し、この証明書を提出すれば良い。

 

以上,引用終わり。
 
 

不動産に関する相続登記や預金の相続手続において,必ず亡くなった方(被相続人)の出生から亡くなるまでの全戸籍(除籍)謄本が必要になりますが,法務局や金融機関など,ほとんどのところで原本は返却してもらえますので,複数取得する必要はなく1通ずつあれば大丈夫です。
 

ただし,手続中は預けたままになっている場合が多いため,同時並行で手続を進めることができず,一つ一つ進めていかなければなりません。
 

来年から始まる「法定相続情報制度」は,上記記事によれば,法務局に戸籍関係を提出することで相続に関する証明書を発行してもらえるとのことですので,複数発行してもらえれば同時に様々な手続を進めることができるようになると思われます。このように,いったん戸籍謄本等を集めてしまえばその後は「法定相続情報証明書」だけで手続ができることになりますが,結局は戸籍謄本等をすべて集めなければならないわけですから,劇的に手続が楽になるかというとあまり変わらないように思います。
 

むしろ,楽ができるようになるのは,各金融機関などの手続を受ける側です。金融機関などは,これまではすべての戸籍謄本をチェックし,さらにたくさんの量のコピーを取っていたわけですが,今後は1枚の紙を確認すれば良いだけですから大幅な事務の削減になりますね。
 

まだ,発表されたばかりで,どのような証明書になるのかさえわかりませんが,上記報道を見る限りでは,相続手続を行う側としてはあまりやることは変わらないのではないかと思います。

※7/6追記

朝日新聞の記事によれば,無料で発行され,その形式は相続関係説明図に法務局が奥書する形になるようです。
相続関係説明図とは,いわゆる家系図のようなもので,相続登記のご依頼をいただいた場合には司法書士が作成しているものですので,特に余計な手間がかかるものではないですね。

ただ,上記記事の末尾に「各地に散在する不動産を相続する場合、手続きの煩雑さから、特に資産価値の低い土地では名義が書き換えられないケースがあった。このため、山間部などで道路や宅地の造成をする際、登記上の所有者と実際の地権者が異なり、買収が進まない例があった。同省は「利用者の負担を軽くすることで、相続の登記を促したい」としている。」とありますが,これまでも,そして新制度が発足してからもやっぱり戸籍謄本等はすべて取得する必要があるわけですから,「利用者の負担を軽くする」というのはよくわからないですね。