法定相続情報証明制度
なかなか記事を書く時間がなく,少し時機を逸した感がありますが,先月末から新しく始まった法定相続情報証明制度についてまとめたいと思います。
法定相続情報証明制度とは?
端的に言えば,戸籍謄本などを基に家系図のような書面を作成して法務局に持っていくと,法務局が調査のうえ,その家系図が正しいものであることを証明してくれるという制度です。その証明された家系図のような図面のことを「法定相続情報」といいます。
通常,相続の手続を行う際には,亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が必要になり,亡くなった方との関係が兄弟姉妹だったりすると,亡くなった方のご両親の出生から死亡までの戸籍が必要になるため,かなりの量の戸籍が必要になります。この大量の戸籍を金融機関や役所などに毎回提出しなければなりませんので大変な手間だったのですが,今後は法務局に一度戸籍を持って行って証明書が取得できれば,その後の手続は「法定相続情報証明」を1枚ですべて事足りることになるということです。
メリットなど
この制度の大きなメリットは,相続手続に際して,法定相続情報証明1枚のみで足りるということであり,逆に言えばこれ以外のメリットはありません。強いて言えば,発行手数料が無料ということもメリットかもしれません。
一方,勘違いされる方が多い要素がありますので,むしろこちらの方が大事かもしれません。
(1)戸籍はやっぱり必要です
法定相続情報証明を法務局に発行してもらうためには,出生から死亡までの戸籍謄本等を法務局に提出する必要がありますので,戸籍謄本等の取得が楽になるわけではありません。
(2)発行してもらえる法務局が決まっている
全国どこの法務局でも発行してもらえるわけではなく,以下の4つに限定されております。ただし,郵送でも申請(申出)をすることができます。
・亡くなった方の最後の住所地を管轄する法務局
・亡くなった方の本籍地を管轄する法務局
・証明書を請求する方の住所地を管轄する法務局
・亡くなった方が所有していた不動産を管轄する法務局
(3)図面は自分で作成しなければなりません
法務局のサンプルだと下記のような書類となりますが,この家系図のような部分についてはご自身で作成する必要があります。私ども専門職は,作成するための専用のソフトがあるので簡単に作れるのですが,一般の方はエクセルで作成していただくか手書きで作成していただくことになると思います。
(4)外国籍の方は使えません
戸籍を基に作成するものであるため,外国籍の方はご利用できません。日本人の方が外国に住んでいて亡くなった場合は問題ありません。
(5)再交付は5年間
申出をしてから5年間は法務局に情報が保管されているため,何度でも再発行は可能ですが,5年経過後は改めて戸籍謄本等を添えて改めて申出をする必要があります。
(6)代理ができるのは親族か資格者代理人のみ
申出ができるのは相続人に限られておりますが,ご自身で手続ができない場合には親族または専門職(弁護士,司法書士,税理士等)に依頼する必要があります。
(7)亡くなった方毎に必要
不動産が祖父名義になっている場合などで,祖父と父親の両方の相続を同時に行うというような場合がありますが,その場合は祖父の法定相続情報と父の法定相続情報とでそれぞれ別に2件の申出をする必要があります。
かかる費用について
上記のとおり,法定相続情報証明そのものについては発行手数料は無料です。しかしながら,戸籍謄本等を取得する必要がありますので,その取得費用はかかってしまいます。
また,専門職に依頼した場合はその報酬がかかります。当事務所の場合は,法定相続情報証明の発行のみのご依頼をお受けした場合は,亡くなった方1名につき3万円及び戸籍謄本等取得の実費となり,相続登記等の相続業務をご依頼いただいた場合は,亡くなった方1名につき1万円(戸籍謄本等の取得費用は無料です。)となります。