相続に関すること

自筆証書遺言の方式の緩和

本記事の作成は平成31年1月9日ですが,週末の1月13日から遺言書について少しだけ変更と言いますか,緩和された方式が始まります。

その他の変更点も踏まえて,まとめておきたいと思います。
 

 
 

自筆証書遺言とは

 

よく使われる遺言の方式としては,(1)公正証書遺言(2)自筆証書遺言の2つがあります。
 

弁護士さんや私ども司法書士などの専門家が関与する場合,少しでも紛争が生じること及び遺言書が無効になるのを防ぐために公正証書遺言で行うことがほとんどですが,専門家が関与しない場合は自筆証書遺言で作成されているケースもあります。
 

自筆証書遺言とは,文字どおり「自筆」で書く遺言書でなければなりませんので,パソコンで作成したり,第三者が作成したものは無効になってしまいます。
 

この点,「遺言者の遺産のすべてを●●に相続させる。」というような簡単なものであれば自筆で書くこともそれほど大変ではないと思いますが,「A不動産は甲さんに,B不動産は乙さんに,C銀行D支店口座番号●●●●の預金は丙さんに・・・」というように財産が多かったりするとすべてを自筆で書くのは大変ですよね。
 

ということで,今回少しだけですが「自筆」の部分が緩和されることとなりました。 
 

自筆でなくても良くなったもの

 

上記の例でいうと,「A不動産」や「B不動産」,「C銀行の預金」など,財産に関する目録については自筆で無くても良いこととなりました(ただし,財産目録に署名捺印が必要です。)。
 

「自筆でない」というのは,下記のようなものでもすべてOKとなります。
 

(1)パソコンで作成してプリントアウトしたもの

(2)遺言者ではない第三者が書いたもの

(3)登記簿謄本や通帳などの財産が分かるもののコピー
 

したがって,遺言書を作成する場合には,「遺言者は,遺言者の長男である甲に財産目録1番の土地を相続させる。」のように記載すれば良いこととなります。

注意点としては,あくまで自筆でなくても良いのは財産目録だけですので,上記の文章は自筆で記載する必要があります。 
 

自筆証書遺言に関する新設の制度

 
 

上記の財産目録に関する改正は,最初に記載したとおり平成31年1月13日からとなりますが,平成32年(2020年)7月10日から施行される新しい制度があります。それが,法務局における遺言書の保管制度です。

公正証書遺言の場合,原本は公証役場に保管されることとなっておりますが,自筆証書遺言によって作成された遺言書の保管方法は定められておりません。したがって,遺言者ご自身が貸金庫等で保管しても良いですし,相続人の方に預けても良いですし,食器棚にしまっても良いです。
 

とすると,場合によっては遺言書が第三者に変造されてしまう可能性がありますし,紛失してしまうことも考えられます。
 

そこで,法務局に遺言書を預かってもらうことができる制度が始まりました。さらに凄いのは,法務局が遺言書を画像データとして保管してくれることとなり,相続人がその写しの交付することができることに加えて,自筆証書遺言の最大のネックだった検認手続が不要となります。
 

上記の財産目録の緩和に加えて法務局の保管制度が始まると,公正証書遺言ではなく自筆証書遺言で進めるケースも多いかと思います。
 

当事務所では,自筆証書遺言作成のサポート等も行っておりますので,お気軽にご相談いただければと思います。