相続に関すること

親族が行う必要のある死後の手続と相続手続

これまで相続についての手続を数えきれないほどご依頼いただいてきましたが、突如、私自身が当事者となる相続が発生してしまいました。

なかなか精神的に大変な時期であってもある程度は進めざるを得ないため、精神的のみならず身体的にも大変ではありますが、「他に考える余裕が無い方がある意味精神的には少し助かるものなのかもしれない」と、よくわからない気持ちになりながら進めました。 

ということで、今回は相続手続というよりも、親族の死後になすべきことを私の備忘録も兼ねてまとめたいと思います。なお、四十九日法要などの宗教的な行事は各家庭によって異なりますので記載しておりません。
 

 
 

1 葬儀会社の決定

 

多くの方がまずは病院に駆けつけることになると思いますが、もし事件・事故の場合は警察署に駆けつけることもあります。

病院や警察において、通常は遺体を長期間安置することができないため、早急に葬儀社に依頼して、遺体を自宅、葬儀会館、寺院等に搬送していただく必要があります。
 

この点、私は病院に着くや否や病院からすぐに葬儀社に連絡してほしいと、いくつか提携している葬儀社のパンフレットをいただきましたが、仕事上お付き合いがあり、信頼できる葬儀社があったので、そちらにお願いしました。 

葬儀会社の選択肢として、大手葬儀会社(平安閣、ティアなど)、ネット系(小さなお葬式、イオンのお葬式など)、地域の葬儀会社などいくつかの選択肢があるかと思います。私の場合はそもそもお付き合いのある葬儀社があったので良かったのですが、そうでないとなかなか選ぶのが大変なので、変な話ではありますが事前にある程度リサーチしておくと良いと思います。
 

なお、私個人の印象ですが、以下のような感じです。
 

【大手葬儀会社】

安心できるが比較的費用が高い。たくさん参列される方だとこちらが安心できると思います。
 

【ネット系】

費用が一律となっていることが多いものの、あくまで各地の葬儀会社に振ってるだけなので、各地の葬儀会社の質によって当たり外れがある。さらに、追加オプションのトラブルなどもあり、直葬なら良いかもしれませんが、そうでないのであれば選びにくいように思います。
 

【地域の葬儀会社】

こちらも当たり外れがあるとは思いますが、地域での評判が悪くなると仕事ができなくなるので、決定前にある程度話ができると良いと思います。特に、過去にどなたかがすでに葬儀をされているようであれば、その方からご紹介いただくとおかしなことをされる可能性も低くなるので良いと思います。
 

また、費用が確定してからでないと、葬儀後にもめる可能性がありますので、必ず葬儀の内容が確定した時点で見積書をは受領すべきだと思います。私は、2つのパターンで見積書を作成してもらい、プラン決定後に正式な見積書を受領してからすべての手続を進めてもらいました。葬儀終了翌日に請求書をいただきましたが、見積書の金額とまったく同一金額でしたので、費用についてはとても安心した覚えがあります。
 

なお、直葬(通夜や告別式等の宗教的儀式をしない)の場合は、通夜や告別式等が無いので、いきなり火葬となりますが、少なくとも死亡時から24時間は火葬ができない(墓地、埋葬等に関する法律第3条)ので、直葬だとしてもご自宅または病院や葬儀会社等で遺体安置をしていただく必要があります。 
 

2 死亡届の提出

 

死亡届が受理されないと火葬許可証がもらえませんので、葬儀を行う前に死亡届をお亡くなりになった方の住所地の役所に死亡届を提出する必要があります。 
 

3 葬儀等

 

遺体が葬儀会館等に搬送され、早ければその日の夜、時間帯によっては翌日から2日後程度に通夜が行われ、通夜の翌日に葬儀・告別式・出棺となり、霊柩車で移動して火葬になると思います。
 

基本的にはすべて葬儀会社が進めてくれますので、何も考える必要はないと思います。多くの方が通夜に来られるような場合は、香典の管理なども大変なので、私個人としては香典を受け取らないとした方がいろいろと良いように思いました。
 
 

ここまでが怒涛の勢いで行われることであり、ここからは落ち着いてからでも大丈夫だと思います。

ただし、日程が決まっているものもありますのでご注意ください。 
 

4 医療費等の清算

 

入院されていらっしゃった場合は、医療費の清算や入院時の荷物等の引き取りはこのタイミングで行うと良いと思います。 
 

5 役所での手続

 

死亡届はすでに提出済みですので、あとは以下のような手続きが必要となります。
 

(1)健康保険関係

国保であれば役所に、健康保険であれば勤務先等に保険証を返却しなければなりません。

国保の場合は、葬祭費の請求も合わせて行うことができます。健康保険や共済組合の場合は各健康保険協会や共済組合に請求することとなります。
 

(2)その他の書類の返却

マイナンバーカード、医療証、介護保険証、敬老手帳、敬老パス、障害者手帳、愛護手帳、障害福祉サービス受給者証などをお持ちであればそれらの返却及び重度障害者手当、児童手当等を受給していた場合は喪失届等も必要になる場合があります。 
 

6 年金事務所での手続

 

年金を受給されて場合は10日から14日の間に年金事務所に死亡届が必要となりますが、現在はマイナンバーと連動しており、別途死亡届を出す必要は無いとのことです。

ただし、未支給年金がある場合は未支給年金の申請をする必要があります。こちらは郵送でもできる場合がありますので、一度年金事務所にお問い合わせいただいた方が良いと思います。 
 

7 戸籍謄本等の収集

 

遺産がある場合、手続の際に必ず戸籍関係が必要となりますので、戸籍謄本等の収集を開始すると良いです。ただし、死亡の旨の記載が戸籍にされるまでに1~2週間程度かかりますので、亡くなってから2週間程度経ってから開始されることになります。

戸籍謄本等の収集は司法書士等の専門家が代理して行うこともできますので、ご自身で行うのが難しい場合はお近くの弁護士や司法書士にご相談いただいても良いかと思います。 
 

8 遺産の調査

 

不動産であれば不動産のある役所及び管轄法務局、預貯金があれば各金融機関、保険金であれば生命保険会社に調査を請求することになります。

これらの調査については戸籍謄本等が無いと進められないので、戸籍謄本等が揃ってからになります。 
 

9 遺産分割協議

 

遺産の全容が判明した後、相続人が複数いらっしゃる場合は、どのように遺産を分けるのかの協議をしていただく必要があります。ただし、生命保険金の受取人として相続人のどなたかが指定されていれば、その保険金はその相続人固有の財産となりますので、遺産とはならず遺産分割協議の対象に含めません。

最終的に協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成いたします。もちろん、司法書士等の専門家にご依頼いただくことも可能です。 
 

10 各種名義変更等の手続

 

上記の遺産分割協議に基づき、不動産であれば相続登記、株式であれば名義変更や売却・払戻手続、預貯金であれば解約手続等を行うことになります。繰り返しになりますが、こちらも司法書士等の専門家にご依頼いただくことも可能です。

なお、現時点(令和3年3月11日)では、上記手続について期限はありませんので、いつまでに行わなければならないというものではありません

しかし、相続登記については義務化する旨の法案が出ておりますので、近い将来一定期間内に申請しなければならなくなると思われます。 
 

11 相続税の申告

 

お亡くなりになった方の遺産が基礎控除(3000万円+法定相続人の人数×600万円)以上ある場合は相続税の申告が必要になります。逆に言えば、基礎控除内であれば相続税の申告は必要ありませんし、基礎控除額を超えていても各種の特例(小規模宅地等の特例等)を使うことにより申告自体は必要であっても相続税はかからないということもあります。

相続税の申告は、原則としてお亡くなりになった日から10か月以内に行う必要があります。

こちらは、弁護士や司法書士では代理して行うことができず、税理士さんにご依頼いただくこととなります。
 
 

以上の次第で、通常は最長でも10か月以内に手続を行うことですべての相続手続が終了となります。