亡くなった方の遺産や負債の調査
当事務所では、不動産の相続手続のみならず、預貯金や株式の相続手続、さらには負債の調査なども行っております。この点、専門家にご依頼いただければ、基本的にはすべて進めさせていただくのですが、ご自身で行う場合はどのように調べて良いか分からないことも多いかと思います。
そこで、今回は財産や負債の調査についてまとめてみたいと思います。なお、完璧にすべての財産を探し出す方法は存在しませんのでご注意ください。
1 不動産
まず、一番大きな財産である不動産ですが、所有しているかどうかは基本的には法務局にある登記で確認することになります。
ただ、いわゆる登記簿謄本である登記事項証明書を請求する場合、正確な地番等が必要であり、ご自宅であればまだしも別荘だったり、田畑などの場合には番地が分からないことがあります。そのような場合、各市町村役場の税務課に対し、亡くなった方(被相続人)の「名寄帳」(なよせちょう)や「名寄証明書」(なようせしょうめいしょ)を請求すると良いと思います。
なお、必ずしも「名寄(なよせ)」という名称ではなく、例えば名古屋市だと「課税明細書」という名称になりますが、役所の担当者に「名寄が欲しい」とお話しいただければ分からない人はいないと思います。
この名寄は、端的に言えば、「被相続人が当該市町村内に所有している不動産の一覧表」です。名寄には地番や家屋番号等が記載されていますので、こちらを基に登記事項証明書を取得していただければ、正確な所有関係が分かります。ただ、あくまで「当該市町村内」という限定がありますので、日本全国色んな場所に不動産をお持ちの場合は、それぞれの市町村で請求をしなければならず、まったく手掛かりが無いような市町村に不動産をお持ちの場合は、見つからないということもあり得ます。
さらに、この名寄は課税される不動産についてしか載らないことが多いため、非課税の不動産だと名寄でも見つからないこともあります。
2 預貯金
預貯金の有無については、残念ですが全金融機関の一覧表などは存在しないため、資料が手元に無ければ手あたり次第調査をするしかありません。
ただ、金融機関次第ではありますが、口座の有無についてだけであれば電話で聞いても答えてくれるところもありますし、1つの支店に聞くと全支店の口座の有無が分かりますので、まったくどうにもならないものではありません。
通帳等の資料があれば問題無いのですが、遠方に居住している兄弟の相続などのケースにおいてはまったく分からないということもありますので、被相続人の最後の住所地の近隣にある全金融機関を周って調査をすることも多いです。過去にご依頼いただいた件では、そのような調査をして相続人の方がまったく認識していなかった金融機関で1000万円以上の預金を見つけたこともあります。
3 株式
証券保管振替機構において、個々の株式の銘柄までは分かりませんが、どこの証券会社に口座を持っているかということを調査することができます。
この調査により証券会社名が分かりますので、あとは個々の証券会社において相続人から残高証明書を請求すれば個々の株式の銘柄等が判明します。
→ ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合(証券保管振替機構)
4 生命保険
生命保険も上記の株式と同様に、個々の保険の内容までは分かりませんが、どこの生命保険会社に契約があるかについて、生命保険協会において調査をすることができます。調査を請求すると下記のような書類が送付されてきますので、あとは個々の保険会社に電話で尋ね、保険金請求手続を進めることになります。
→ ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合(生命保険協会)
5 借金
相続においては、上記のようなプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も相続することになります。
この点、一般的な金融機関、カード会社、消費者金融などは信用情報機関に登録する制度がありますので、当該信用情報機関に照会をすることで借金の状況を調べることができます。ただし、あくまで信用情報機関に登録しているものだけしか分からないため、個人間のお金の貸し借りなどについて調査する方法はありません。
一般の金融機関 → 全国銀行個人信用情報センター
カード会社関係 → CIC
消費者金融関係 → 日本信用情報機構
6 遺言
遺産そのものではありませんが、被相続人が遺言を作っていたかどうかを調べることができる場合があります。
まず、公正証書で遺言書を作成されている場合は、全国どこの公証役場でも被相続人が作成した遺言の有無についての検索ができます。ただし、昭和64年1月1日以降に作成されたものに限定され、さらに遺言者が130歳を迎える年になると削除されてしまいます。
また、自筆証書遺言で作成されている場合で、法務局の保管制度を利用している場合に限り、全国の法務局において「遺言書保管事実証明書」の請求をすることで、遺言書が保管されているかどうかを調べることができます。
以上のような方法で、被相続人の遺産を調査していただき、相続手続を進めてください。また、最初に記載のとおり、当事務所では不動産の相続登記のみならず、遺産全般の相続手続も行っておりますので、ぜひご相談いただければと思います。