不動産売買に関すること

不動産の交換について

個人の方が所有されている不動産の名義変更を行う場合、多くの場合が売買または相続というケースであり、たまに贈与ということがあります。

また、法人の場合だと、合併や会社分割といった組織再編によって名義変更を行う場合もあります。
 

今回、上記にはいずれも当てはまらない「交換」にて名義変更を行いましたので、税金の特例なども踏まえてまとめておきたいと思います。 
 

1 交換とは

 

売買とは、物をもらう対価として金銭を支払うことであり、この対価として支払うものが金銭ではない場合はすべて交換となります。

今回は不動産の名義変更の話であるため当然ながら一方は不動産である必要がありますが、もう片方は必ずしも不動産である必要は無く、株式等の有価証券だったり、目に見えない権利などでも構いません。もちろん、不動産同士を交換しても構いません。いずれにしても、金銭以外の対価であればすべて交換ということになります。 
 

2 交換差金

 

交換の対象となっている物同士が完全に等価であれば問題ありませんが、通常は完全に価値が一致しているという事は少ないと思います。
 

例えばAさんが所有している甲土地が1000万円、Bさんが所有している乙土地が1200万円でこの甲土地と乙土地を交換する場合、完全な等価では無いためAさんは甲土地を譲渡することに加えて現金200万円も合わせてBさんに支払うことがあります。この200万円が交換差金と呼ばれるもので、交換を成立させるための調整となるお金になります。 
 

3 登記手続

 

基本的には通常の売買の登記手続と変わりはなく、不動産の所有者の方は権利書(登記識別情報通知)や印鑑証明書等が必要になります。
 

なお、不動産同士の交換の場合、当事者双方が不動産の所有者であるため双方が権利書や印鑑証明書等をご準備いただく必要があります。
 

また、土地の名義変更に関しては、売買の場合は登録免許税の税率が15/1000という軽減措置があるものの、交換の場合は軽減措置の適用が無いため20/1000と少し高めの税率になっております(租税特別措置法第72条第1項第1号)。さらに、売買であれば1件の登記で良いところ、不動産同士の交換の場合は少なくとも2件以上の登記が必要となりますので、必然的に売買と比べると登記費用が高くなります。 
 

4 譲渡所得税の軽減措置

 

交換の場合は、譲渡所得税について交換が無かったものとする「固定資産の交換の特例」という制度があります。こちらの適用があると譲渡所得税がかかりません

なお、私は税理士ではなく司法書士であるため、詳細については税理士さんにお尋ねいただきますようお願いいたします。
 

今回は不動産の交換を前提としているため不動産に限定してまとめておりますが、実際には不動産に限らず固定資産全般について適用があります。 
 

1 交換により譲渡する資産及び取得する資産が、いずれも不動産(土地または建物)であること。

ただし、不動産業者などが販売するために所有している土地などの資産は固定資産ではなく棚卸資産であるため特例の対象にはなりません。

 

2 交換により譲渡する資産及び取得する不動産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。
ただし、借地権は土地の種類に含まれ、建物に附属する設備および構築物は建物の種類に含まれます。

 

3 交換により譲渡する不動産は、双方が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
この交換特例を受けるためだけに第三者から不動産を取得して交換の対象にした場合は、この特例は受けられないということになります。

 

4 交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
例えば、田として利用していた土地を交換により譲渡する場合は、交換により取得した土地も田として使用する必要があります。

 

5 交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20パーセント以内であること。
上記の例でAさんが所有している甲土地が1000万円、Bさんが所有している乙土地が1200万円である場合、甲土地と乙土地の差額は200万円であるのの対し、高い方の土地である乙土地の価格の20パーセントは240万円であるため、このケースであれば大丈夫ということになります。
ただし、交換差金として200万円の現金を支払っている場合は、この部分についての譲渡所得税はかかります。

 

6 確定申告をすること
特例を受けるわけなので、その旨の申告が必要となります。

 
 

以上、なかなかお目にかかることが少ない交換のお話しでした。