相続に関すること

被相続人の同一性証明について

先日、「相続登記で被相続人の住所が繋がらない」という場合についての記事をまとめておりましたが、新たに法務省から通達が出ましたので、この点についてまとめたいと思います。

 

 

 

第1 原則は本籍地と登記簿上の住所

戸籍謄本等の本籍地と登記簿上の所有者として登記されている被相続人の住所が一致している場合、それだけで「戸籍謄本に死亡の記載がある方」=「不動産の所有者」となるため、あとは通常必要となる被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等と相続人の現在の戸籍謄本、相続人(不動産取得者)の住民票等があれば良いことになります。

 

 

第2 本籍地と登記簿上の住所が一致しない場合

この点についてまとめたのがこの記事となりますが、「4」において様々な書類が必要である旨の説明をさせていただいております。

このうち、いくつかの書類を取得し、条件を満たすようであれば、それだけで被相続人と不動産の所有者が同一であると判断し、上申書が不要になるとの通知がありましたが、原典はかなり分かりづらい表記になっているのでまとめてみます。

 

1 取得する書類

通常の相続登記に必要な書類に加えて、下記の(1)~(3)までの書類を取得する必要があります。

 

(1)除票または戸籍の附票の写し(以下、合わせて「除票等」といいます。)

被相続人の最後の住所が記載されていて、本籍地が記載された除票等を取得します。

 

(2)固定資産税の評価証明書または納税証明書(以下、合わせて「評価証明書等」といいます。)

相続登記を申請する予定の不動産に関する評価証明書等を取得します。このうち、評価証明書は各不動産についての証明書となりますので問題ありませんが、納税証明書についてはあくまで被相続人が納税したという証明でしか無いため役所によっては不動産の表示が無いことがあります。その場合は役所の担当の方に事情を説明して納税証明書に不動産の表示を入れてもらう必要があります。

また、評価通知などでは所有者(被相続人たる納税義務者)の住所や氏名が記載されていないため、必ず被相続人の住所及び氏名が入った証明書が必要になります。

 

(3)不在籍証明書及び不在住証明書

登記簿上の所有者として登記されている被相続人の住所地において、現時点で被相続人の戸籍も住民票も存在しないことを証明する不在籍証明書と不在籍証明書を取得します。多くの役所において窓口には申請書が準備されていないことが多いため、役所の窓口の方に説明していただく必要があります。

 

2 書類の内容の確認

上記1の書類をすべて取得したうえで、次の点について確認します。

 

(1)相続登記を申請予定の不動産に関する登記簿謄本と評価証明書等を確認し、登記簿謄本に記載されている①不動産の表示と②所有者の氏名評価証明書等に記載されている①不動産の表示と②氏名が一致している。

(2)除票等と評価証明書等を確認し、除票等に記載されている被相続人の①住所と②氏名評価証明書等に記載されている①住所と②氏名が一致している。

(3)被相続人の戸籍謄本と除票等を確認し、戸籍謄本等に記載されている①本籍地と②氏名除票等に記載されている①本籍地と②氏名がが一致している。

 

これらのすべてを満たすようであれば、不動産の権利書や相続人全員の上申書等が無くても不動産の所有者と被相続人が同一人物であると判断され、相続登記が受理されることになります。

もし、これらを満たさないようであれば別の方法(権利書や上申書の添付)を検討することになります。

 

第3 公正証書遺言の場合

公正証書遺言で住所が異なる場合についても同じ通達にて下記のとおりとされております。

 

1 取得または準備する書類

 

(1)固定資産税の評価証明書または納税証明書(以下、合わせて「評価証明書等」といいます。)

相続登記を申請する予定の不動産に関する評価証明書等を取得します。このうち、評価証明書は各不動産についての証明書となりますので問題ありませんが、納税証明書についてはあくまで被相続人が納税したという証明でしか無いため役所によっては不動産の表示が無いことがあります。その場合は役所の担当の方に事情を説明して納税証明書に不動産の表示を入れてもらう必要があります。

また、評価通知などでは所有者(被相続人たる納税義務者)の住所や氏名が記載されていないため、必ず被相続人の住所及び氏名が入った証明書が必要になります。

 

(2)遺言書

公正証書遺言にて相続登記を申請する場合は遺言書が必要であるため、改めて取得しなくてもお手元にあるかと思います。もし、お手元に無い場合でも公証役場にて再発行してもらうことは可能です。

(3)被相続人及び相続人の戸籍謄本等

こちらも上記の遺言書と同様に、公正証書遺言にて相続登記を申請する場合は必ず必要となります。通常の相続登記と異なり、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本等は必要無く死亡の記載のある戸籍謄本があれば良いです。

 

2 書類の内容の確認

上記1の書類を用意したうえで、次の点について確認します。

 

(1)相続登記を申請予定の不動産の登記簿謄本と評価証明書等を確認し、登記簿謄本に記載されている①不動産の表示と②所有者の氏名評価証明書等に記載されている①不動産の表示と②氏名が一致している。

(2)評価証明書等と公正証書遺言を確認し、評価証明書等に記載された納税義務者の①住所と②氏名公正証書遺言に記載された遺言者の①住所と②氏名が一致している。

(3)遺言者及び不動産を相続するとされている相続人の戸籍謄本と公正証書遺言を確認し、遺言者及び相続人の戸籍謄本等に記載された①氏名と②生年月日公正証書遺言に記載された遺言者及び相続人の①氏名と②生年月日が一致している。

 

上記のすべてを満たすようであれば、上申書等は不要となります。

 

正直なところ、権利書があれば上記を考える必要が無いので、権利書があればベストかと思いますが、遥か昔の不動産だと紛失している場合も多いため、上記を使って申請することは今後多くなると思います。

 

以上、被相続人の同一性証明についての解説でした。