養子縁組と相続
先日、養子縁組をされている方の相続手続を進めさせていただきました。その際に実子と養子とで差がある部分と無い部分があるため、今回は養子縁組と相続についてまとめたいと思います。
1 基本的には実子と養子は同じ立場です
父Aさんと母Bさんとのに実子である甲さんと養子である乙さん(AさんとBさん双方と養子縁組)がいたとします。
この状況で、Aさんが亡くなった場合、甲さんと乙さんの相続分はまったく同じであり、法定相続分としては、Bさんが1/2、甲さんと乙さんがともに1/4ずつとなります。
もし、養子として他に丙さんや丁さんなど増えたとしても割合が1/6ずつ、1/8ずつとなるだけで実子であっても養子であっても何も変わりません。
ただし、相続税における基礎控除については養子がたくさんいても無制限に控除されるわけではないため、その点は注意が必要です。
2 養子になっていない場合は相続できません
父Aさんと母Bさんとのに実子である甲さんと養子である乙さん(Aさんのみと養子縁組)がいたとします。
この場合において、Aさんが亡くなった場合は上記1とまったく同じ結論になりますが、Bさんが亡くなった場合は乙さんはBさんの養子にはなっていないので、乙さんはBさんの相続においては一切相続できません。
3 縁組前に生まれた子と縁組後に生まれた子
父Aさんと母Bさんとのに実子である甲さんと養子である乙さん(AさんとBさんと養子縁組)がいたとします。さらに、乙さんにはCさんという子どもがいる場合、Cさんが生まれたタイミングによってAさんやBさんの相続権について大きく変わってきます。
(1)乙さんが存命でAさんやBさんが亡くなった場合
これは、上記1と同じであり、乙さんが相続するだけなので特にCさんには何の影響もありません。
(2)Aさんが亡くなる前に乙さんが亡くなっており、Aさんとの養子縁組後にCさん生まれている場合
この場合、乙さんがAさんより先に亡くなっているため、CさんはAさんの代襲相続人としてAさんの財産を相続することができます。法定相続分は乙さんの分をそのまま引き継ぎます。
(3)Aさんが亡くなる前に乙さんが亡くなっており、Aさんとの養子縁組前にCさん生まれている場合(いわゆる「養子の連れ子」)
この場合、CさんとAさんとの間には何の関係もありませんので、CさんはAさんの財産を相続することができません。
(4)Aさんが亡くなった後に乙さんが亡くなっている場合
この場合、まずAさんが亡くなった時点でBさんと乙さんがAさんの遺産を相続します。その後に乙さんが亡くなった場合は、CさんはBさんの遺産を相続することになり、その中にはもともとAさんの遺産も含まれます。このCさんが乙さんを相続することについてはCさんが生まれたタイミングは関係ありませんので、CさんがAさんと乙さんの縁組前の子でも、縁組後の子でもAさんの財産も含めた乙さんの遺産を相続できます。
養子縁組が関係する場合でも基本的には通常の相続と同じ考え方で良いのですが、代襲相続が発生する場合は養子縁組のタイミングによって孫の立場にある方が相続できない可能性があるため、遺言書を作成される場合においても養子縁組が関係する場合は注意が必要です。
以上、養子縁組と相続についてでした。