公正証書遺言の書類の種類・保管・検索について
本日、公証役場にて公正証書遺言の証人となり、立ち会ってまいりました。その際に、公証人から遺言書の種類や保管期間等の説明があり、事前に遺言者の方にお伝えしておいた方が良い場合もあるかと思いますので、今回はこちらについてまとめておきたいと思います。
1 公正証書遺言の書類の種類(原本・正本・謄本)
公正証書遺言は必ず公証役場にて作成することとなりますが、一般的には3通の書類が作成されます。
(1)原本
文字通りこちらが遺言書そのものであり、この世に1通だけしか存在しません。原本には遺言者や証人が署名押印したうえで公証役場にて保管してもらい、公証役場から外に持ち出すことができないことになっています。また、通常はデータ化して保存もされています。
原本が公証役場に保管されますので、紛失や改ざんなどの心配が一切ありません。
また、遺言書原本の保管期間は時代によって変更がありますが、現在は①遺言者の死亡後50年、②遺言書作成後140年、③遺言者の生後170年間のいずれか短い期間は保存されるという取扱いになっています。
例えば、西暦1950年生まれの方が西暦2024年に遺言書を作成して西暦2030年に亡くなったとすると、①2080年、②2164年、③2120年となりますので、①の西暦2080年までは保管されていることになります。ただし、通常は公証役場は遺言者の方が亡くなったということは知りませんので、そうすると③の2120年までは保管されていると思います。
(2)正本
上記のとおり、原本は公証役場から持ち出すことができませんので、実際に金融機関で預貯金の解約をしたり、不動産の名義変更をするために持ち出すことができる書類が必要となります。そこで、原本と同一の効力を持っているコピーという特別な書類が発行され、それが「正本」と呼ばれる書類になります。公証役場に保管されている遺言書原本のコピーに公証人が「この正本は遺言者の請求により、〇年〇月〇日下記役場において原本に基づき作成した。公証人〇〇印」という公証人の証明が入ることによって法的な効力を有することとなります。
一般的には金融機関等で手続をする際は正本を使用することになりますので、もし遺言執行者が指定されている場合はその方に、遺言執行者の指定がない場合は相続人や受遺者に正本をお渡しいただくと良いかと思います。
正本を保管するのは遺言執行者や相続人等になりますので保管期間というものは特にありませんが、万が一紛失してしまったとしても、遺言者本人であれば公証役場で再度正本を交付してもらうことができますし、遺言者が亡くなっている場合は遺言執行者や相続人等の利害関係人も再度正本を交付してもらうことができます。
(3)謄本
謄本も正本と同様に遺言書原本のコピーとなりますが、原本と同一の効力はありませんので、基本的には金融機関等において謄本では手続をすることができません(ただし、金融機関によっては受け付けてもらえる場合もあります。)。
謄本は遺言書の内容を確認するための書類という位置づけであり、通常は遺言者の方が保管されることが多いと思います。
謄本も正本と同様に、紛失等をしてしまっても再度交付してもらうことができます。
2 遺言書があるかどうかわからない場合
遺言者ご自身がお手元に謄本がなく、どこの公証役場で作成したか分からない場合であっても、ご本人が公証役場にて検索してもらい閲覧したり、正本や謄本の交付を受けることができます。
ご本人がご健在の場合はご本人のみが検索等が可能であり、例え家族であってもご本人以外の方が検索等をすることはできませんが、ご本人の代理人は検索等は可能です。代理人が請求する場合はご本人からの委任状+ご本人の印鑑証明書+代理人の本人確認書類が必要となります。また、検索のみであれば無料ですが正本の交付を受ける場合は1ページ当たり250円の費用がかかります。
一方、ご本人が亡くなっている場合は、相続人等の利害関係人及びその代理人は検索をしたり正本等の交付を受けることはできます。この場合は、ご本人が亡くなっていることを証明する戸籍謄本等や利害関係があることを証明する資料も必要になります。
とはいえ、検索や再交付は手間も時間もお金もかかりますので、最初に交付された正本や謄本を紛失されないよう大切に保管をお願いいたします。