成年後見・任意後見に関すること

成年後見人に選任されるパターン(親族・専門職)

現在、私は6名の方の成年後見人に選任されており、日々後見業務を行っております。

成年後見人が裁判所から選任される場合、親族の方のみが選任されることもありますし、司法書士などの専門職のみが選任されることもありますし、親族の方と専門職の複数名が選任されることもあります。さらに、私どもが関与していないため詳細は存じ上げないのですが、市民後見人(親族でも専門職でもない一般の方)が選任されることもありますし、成年後見人のみならず成年後見監督人が選任されることもあります。

今回は、この選任されるパターンについてまとめたいと思います。

なお、下記の内容は地域差がありますので、必ずしも日本全国に共通するものではないことを予めご留意ください。

 

 

1 親族の方のみが選任される場合

通常考えられるのは、申立ての際に「候補者」として親族の方を記載し、そのままその親族の方が裁判所に選任されるケースになると思います。

多額の預貯金等が無く、ご本人と当該親族の方との間に利益相反関係(例えば、ご本人と親族の方がともに共同相続人であるなど)がなく、他の親族としても特に反対の意向を示していないような場合になります。

例えば、ご本人の財産からご本人が施設への入所するための費用を支払いたいと考えているが、普通預金では足りずにご本人の定期預金を解約するしかないような場合に親族の方が選任されるということが考えられます。

なお、最高裁判所の統計によれば、後見人として親族の方が選任される割合は20%弱となっておりますので、実はあまり多くはありません。

 

 

2 専門職のみが選任される場合

これは、申立ての際に、そもそも候補者として親族の方の記載をしていない場合やご本人と親族の方との間に利益相反関係がある場合、親族間で紛争がある場合、ご本人が法的問題(遺産分割・不動産の売却等)を抱えていて法的手続が必要な場合などが該当します。

例えば、親族の方が遠方にお住いの場合は現実的に後見業務を遂行することができないので、ご本人さんのお近くに事務所を構える専門職が後見人に選任されることが考えられます。また、親族の方を候補者として申立てをしていても、他の親族の方が反対している場合はそれをもって新たな紛争が生じる可能性がありますので、中立である専門職が選任されるということがあります。

現在、私どもが単独で選任されている方に関しては、親族の方が高齢だったり遠方にお住まいだったりで親族の方が後見業務を遂行することが難しいケースになります。

なお、遺産分割等の法的問題が解決した場合は、専門職は辞任して新たに親族の方が後見人に選任されて引き継ぐというリレー方式もあります。

 

 

3 親族の方と専門職の複数名が選任される場合

この場合、親族の方が「身上監護」を、専門職が財産管理など身上監護を除いた部分を担当するという分業(権限分掌)になっているケースが多いと思います。さらに、専門職は後見制度支援信託等の手続を行った後、特に問題が無ければ辞任し、親族の方のみに移行するというパターンが多いと思います。上記のリレー方式と似ておりますが、リレー方式は最初は専門職のみが選任されて、専門職の辞任と同時に親族後見人が選任されますが、この場合は同時に2人の成年後見人が選任されているところが異なります。

どのような場合にこのパターンになるかというと、通常はご本人が1200万円以上の流動資産をお持ちだったり、相続や不動産売却など専門知識が必要な後見業務があるがそれが解決すれば特に問題ない場合になると思います。専門職は専門知識が必要な業務を終え、さらに普通預金などに200~300万円程度を残して残額を後見制度支援信託等の手続を行います。

この「後見制度支援信託(または後見制度支援預金)」とは、簡単に申し上げると「裁判所の許可を得ないと引き出すことができない預金」というようにご理解いただければと思います。つまり、上記の200万円程度を除いた預金を引き出す際には、事前に裁判所にご相談いただき、引き出すの理由が適切だった場合に裁判所から許可を得たうえで引き出すことになるので、ご本人の財産が守られやすくなります(例えば、通帳や銀行印などを盗まれたとしても、裁判所の指示書が無いので犯人に勝手に引き出されることはありません。)。

 

4 親族の方が選任されて後見監督人が選任される場合

件数としてはあまり多くないと思いますが、親族の方だけで後見業務を遂行するのに少し心配があるので、後見人が定期的に後見監督人に対して通帳などを提出し、チェックを受けてもらうというものです。私も以前は後見監督人に選任されたことはありますが、最近は後見監督人が選任されることは少なく、現在は上記の複数名選任されて後見制度支援信託等を進める場合の方が多いと思います。

 

5 市民後見人が選任される場合

すべての後見等の事件のうち、市民後見人が選任される割合は1%未満であるため詳細は存じ上げないのですが、親族が高齢だったり遠方にお住まいだったりで後見人になることができず、また専門職が関与しなければならないほど法的に難しい問題が無い場合に限定されるのではないかと思います。

 

6 どのパターンになるかは分からない

重要な点として、後見開始の申し立てをした時点では上記のどのパターンになるかは分かりません。また、仮にご自身が想定していた場合と異なる選任のされ方だったとしても基本的には申立てを取り下げることはできませんし、不服申立てをすることもできませんので、この点は予めご認識いただいた方が良いと思います。

 

以上、後見人として選任されるパターンのまとめでした。