遺言に関すること

自筆証書遺言の検認について

当事務所では、遺言書の作成に関与させていただく場合は、ほぼすべて公正証書遺言で進めさせていただいております。

公正証書遺言でのメリットは紛失改ざんのリスクを無くすことや公証人という専門家が入ることにより認知症などによって意思能力が欠けた状態ではなく有効に作成されたものであることが高い確率で担保されるということもありますが、何より検認が不要という点が大きいと思います。

 

とはいえ、「ほぼすべて」と記載しているとおり様々な事情により自筆証書にて作成し、法務局の保管制度も利用できないケースがありますので、検認が必要な場合もあります。

今回は、この検認についてまとめたいと思います。

 

 

1 検認とは

遺言書の検認という制度は、自筆証書遺言または秘密証書遺言に関して行われるものであり、家庭裁判所にて「こういう内容が書かれた遺言書が確かにあった」ということを明確にし、その後に偽造や変造がされることを防ぐための手続きとなります。

重要なのは、家庭裁判所が証明してくれるのは、「こういう内容の遺言があった」というだけであり、当該遺言書が有効か無効かを判断する手続ではないということです。したがいまして、検認を終えたとしても、「実際には本人が書いたものでは無かった。」、「遺言書作成当時は認知症が進んでいたので意思能力は無かった」などの理由により検認後に遺言が無効になる可能性はあります

ただ、検認をしていない遺言書では、法務局での登記手続や金融機関での預貯金の解約等は一切できませんので検認自体は必須の手続となります。

 

2 遺言の開封

テレビなどでもよく解説されているため有名なお話ですが、封がしてある遺言書を検認前に開封してしまうと5万円以下の過料という罰金のようなものを科されてしまう可能性があります(民法1005条)。

とはいえ、開封したからと言って遺言が無効になるわけではありません。また、開封をしてしまったからと言って検認が不要になるわけでもないのでやはり検認は必要です。もちろん、最初から封がしていない遺言書であっても検認は必要です。

 

3 検認の申し立てができる人

検認は誰でも申立てができる訳ではなく、下記の人に限定されています。

・遺言書を保管していた人

・遺言書を発見した相続人

 

例えば、遺言書を保管するよう友人に依頼され、その方が亡くなった場合は、当該友人が検認の申立てをすることは可能です。

ただ、当該友人が受遺者になっているようであれば別ですが、そうでないようであれば現実的には遺言書を相続人のどなたかにお渡しし、その相続人が申立てをすることになると思います。

 

なお、相続人ではない受遺者がいる場合、受遺者が遺言書を保管していないと相続人から検認の申し立てがいつまでもされずに受遺者が困ってしまう可能性があります。そうならないよう、相続人ではない方に遺贈する場合は、遺言書を受遺者に方に保管しておいていただくか、検認が不要である公正証書で進められた方が良いと思います。

 

4 検認の流れ

検認の申し立てを行うと概ね次のような流れで進んでいきます。

 

(1)申立人との日程調整

申立人に遺言書をお持ちいただく必要があるため、裁判所から申立人に連絡があり、申立人との間で日程調整がされます。

 

(2)検認期日の通知

家庭裁判所で行われる検認期日にお越しいただくよう相続人全員に通知書が送られてきます。上記のとおり検認は有効無効を判断する手続ではなくあくまで現状を確認するだけの手続であり、一方的に裁判所から日時が指定されてしまうため検認期日に参加しなかったとしても特に不利益はありません

 

(3)検認期日

①家庭裁判所にて申立人や他の相続人が同席したうえで裁判所に遺言書を渡します

②裁判所から遺言書の保管の経緯等について申立人への質問などがあります。

裁判所が遺言書を開封し、全員に内容を確認してもらいます。裁判所からは、遺言書の筆跡が遺言者のものであるか、印影はどうかなどの確認があります。これは特に筆跡鑑定などの厳密なものではなく、単にご自身の感想を仰っていただければ大丈夫です。

④全員の確認が終わると、遺言書に検認をした旨の裁判所の証明書が合綴されて申立人に返却されます。

 

5 遺言内容の実現

検認済みの遺言書によって、金融機関での相続手続や不動産の登記手続ができるようになりますので、遺言書の内容に沿って進めていただくこととなります。

 

6 遺言書の紛失

万が一遺言書の原本を紛失してしまった場合、検認前であればどうにもなりませんが、検認後であれば検認の際に裁判所がそのコピーを取っておりますので、検認期日調書の謄本を請求し、その謄本に基づいて相続手続ができる場合があります。この点について、不動産の登記手続において一部の書類の代用として利用できることになっております(登記研究578号125・登記研究585号137)が、金融機関での手続に関しては金融機関の判断次第では遺言書の原本でないと手続を拒否される可能性がありますので、遺言書の原本については紛失しないよう厳重な管理をお願いいたします。

また、検認調書の謄本は検認から5年間しか保管されておりませんので、検認が終わりましたら紛失する前に速やかに手続をされた方が良いと思います。