相続に関すること

相続登記後の不動産業者からのDMについて

相続登記を行うと、不動産を取得された方のご自宅に「相続された不動産を売却しませんか?」というDMが届くことがあります。何も事情を知らない方からすると、「司法書士が不動産業者に情報を流しているのではないか!?」と疑われることがあるのですが、私どもは守秘義務を負っておりますので依頼者から不動産を売却してほしいといったご要望がない限りそのような情報を不動産業者に知らせることはありませんし、仮に知らせたとしても不動産業者からDMが送られるということはありません。

 

今回は、「どうして不動産業者からDMが届いていたのか」、ということと「来年からは恐らく届かなくなる」ということについてまとめたいと思います。

 

 

1 不動産登記の受付帳

 

法務局には不動産登記の受付帳が備え置かれており、①いつ②受付番号③どういった登記が④どの不動産になされたのか、という情報が記載されております。

このうち、③には「所有権移転相続・法人合併」、「抵当権の設定」、「抹消の登記」、「処分の制限に関する登記」などの記載があり、④には具体的な地番などの記載があります。また、この受付帳は行政文書になるため、法務局に開示請求をすることで、この受付帳のコピーを取得することができます

この受付帳のコピーを取得し、「所有権移転相続・法人合併」と記載されている不動産の登記事項証明書を取得することで、どなたが相続で取得したのかが分かりますので、現在の所有者に対してDMを送ることができます。

 

なお、相続登記に限らず、任意売却の業者からDMが届いたり、直接ご自宅まで訪問する業者もいます。任意売却とは、差押え等で自宅を手放さざるを得ない方が、競売ではなく通常の売買で解決する方法です。一般論として、競売での売却は金額が低くなる傾向がありますので通常の売買で行うことは所有者においてメリットがあり、購入希望者としても競売だと実際に落札できるかどうかはわからないため、直接所有者から購入できれば競売より少し高い金額であっても確実に取得できるメリットがあります。

この競売になっているかどうかの情報は裁判所で調べることもできますが、受付帳の「処分の制限に関する登記」が入っている不動産を調べることで差押えが入っている不動産を探すことができます。

 

2 不動産登記規則の改正

 

この受付帳の記載事項に関しては、不動産登記規則第56条に規定されているのですが、今回この部分を改正し、上記の③と④の情報については記載されないことになりました。

ただし、改正の施行は令和8年10月1日からであるため、あと1年ほどはDMが届く可能性があります。また、受付帳以外でも調べる方法(例えば、空き家になっている家の登記事項証明書を片っ端から調べるなど)はありますので、必ずしもゼロになるということではないと思います。

 

3 まとめ

 

この受付帳の開示請求は、行政開示文書の開示請求の件数のおよそ60%を占めており、さらにそのほとんどが不動産業者の営業のための開示請求であったため、従来から司法書士会などが改正するよう要望を出していました。今回、これが通ることとなり、司法書士があらぬ疑いをかけられてしまうことも少なくなりそうです。

以上、相続登記後に届くことがあるDMについてでした。