リモートでの公正証書遺言の作成

1. リモートでの作成とは
通常は公正証書遺言を作成する場合は、遺言者及び証人が公証役場を訪問して内容を確認したうえで署名をすることで遺言が完成します。公正証書遺言は公証人が作成しますので、もともと遺言者が全文を記載する必要はなく、最後に遺言書の原本に署名押印をすれば良いだけでした。
この点、昨年10月より遺言書を電磁的記録(データ)で作成して残すことになったため、原本が紙ではなくデータになりました。そこで、署名についてもタブレットにサインし、押印も不要とんりました。
これに加えて、パソコンのカメラやマイクの機能を用いて公証役場に行かずにリモートでも作成できるようになりました。
2. 必要な準備
リモートで行う関係上、様々な機材等の準備が必要になります。
なお、遺言者のご自宅や司法書士等の事務所に集合し、1台のパソコンで公証役場とやり取りをすることも可能です。もちろん、それぞれの人が各自でパソコンを準備して参加することも可能ですし、一部の人は公証役場で直接参加し、他の人がリモートで参加するということも可能です。
| 準備する物 | 備考 |
|---|---|
| パソコン | 画面共有が必要となるため、タブレットは不可です。 |
| マイク・カメラ | 画面越しに会話をするためです。パソコン自体にカメラとマイクの機能が付いたものであれば別途必要ありません。 |
| タッチペン | 画面上で電子サインをするためです。 |
| タブレット | 画面上で電子サインをするために必要ですが、パソコンにタッチ機能が付いている場合は不要です。 |
| メールアドレス | 署名などをするURLを受け取るためにメールアドレスが必要になります。 |
| 本人確認書類 | ご本人確認のためのマイナンバーカード(または運転免許証)が必要となります。 |
3. リモートの条件
従前と同様に公証役場にて作成することも可能であり、下記の条件を満たす場合に初めてリモートで作成することができます。
例えば、認知症の疑いがある場合など、画面越しでは判断が難しい場合は公証人の方からリモート不可の判断がされることがあります。
| 条件 | 備考 |
|---|---|
| ①申請 | そもそもリモートは希望しなければ通常どおりとなりますので、リモートで行う場合は事前の申請が必要です。 |
| ②公証人の判断 | 画面越しでは真意が確認できないと公証人に判断された場合にはリモートではできません。 |
| ③異議がないこと | 参加者全員がリモートで行うことに同意している必要があります。証人がリモートで参加したいと言っても遺言者が拒否した場合はできません。 |
4. リモートの流れ
リモートでの公正証書遺言の作成については、下記のように進みます。
(1)メールの受信
リモートで行うことになった場合、公証人からTeamsの招待メールが送られてきます。
(2)Teamsに参加
上記メールに記載されているURLをクリックしてWEB上の会議室に入室します。
(3)音声や映像の確認
双方向での会話ができないと進められないため、全員の映像と音声が正しく届いているかをチェックします。
(4)本人確認資料の提示
マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類をカメラに向けて公証人が確認します。公証人はその画像を保存します。
(5)内容の確認と意思確認
遺言書の文案が画面上に表示され、公証人が読み上げます。遺言者や証人はその内容に誤りがないか確認します。
(6)電子サイン
上記(1)と同様に公証人から電子サイン用のメールが送られてきますので、URLをクリックし、電子サインを行います。これは画面上に手書きでサインをするものであるため、タッチパネルに対応しているパソコンか、別途タブレットが必要になります。
(7)公証人による電子サインと電子署名
全員の電子サインが完了すると、公証人が電子サインと電子署名を行います。電子サインと電子署名はどちらも同じような意味に聞こえますが、電子サインは上記のとおり画面上に手書きでサインをするものであり、電子署名はご実印での押印と同じ意味というご理解で良いかと思います。
(8)電子原本の保存
完成した遺言書のデータが公証役場のシステムに登録・保存され完了となります。
(9)正本・謄本の受領
すぐに使うものではありませんが、遺言者が亡くなった後に金融機関等で遺言書が必要になります。この点、データで遺言書をもらうこともできますが、恐らくほとんどの金融機関がデータでの遺言書には対応していないと思われますので、紙媒体としての正本と謄本を発行してもらい、こちらを保管することになります。
以上、リモートによる公正証書遺言の作成でした。
まだパソコンでの遺言書作成の制度は始まっていませんので正確なことは分かりませんが、自筆証書遺言の保管制度から推測すると、法務局の職員は有効無効を判断することは無いと思われます。また、パソコンで作成ができるといっても本人確認の観点から法務局の職員の面前で読み上げる必要があるとのことですので、安全策で行くのであれば今後も公正証書遺言の方が良いように思います。