はなみずき通信

「更新料は原則有効」との最高裁判決

かなり世間の注目を浴びていた感のある更新料訴訟の最高裁判決が出ました。
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最高裁サイト
判決全文(PDF)  

 

これまでの裁判で争われていたのは,更新料は消費者契約法10条の規定により無効だから,これまで支払った更新料を返還せよ,というものです。  

 

そもそも消費者契約法という法律は一般消費者と事業者とが契約をした場合に,法的知識や専門知識が事業者と比べると劣るであろう消費者を守る法律であり,消費者契約法10条は消費者が一方的に不利な契約は例え契約書にそのような規定があったとしても無効になる,という規定です。  

 

そして,この更新料訴訟では,借主側の主張は「賃貸借契約を締結した以上,その部屋に住むのは当然の権利であり,更新料には何ら対価は無いから消費者に一方的に不利な契約だから無効だ!」というものであり,大家側としては,「更新料を取る分,家賃を低く設定しているんだから,一方的に不利とは言えないんだ!」という反論をしています。ちなみに,これまで3件の更新料訴訟が高裁で判断されており,借主側2勝,大家側1勝となっていました。 

 

 

 

そして,その結論を出した最高裁判決が今日出た訳です。判決内容は,ざっくり言うと次のような感じです。  

 

1・まず,当該賃貸借契約は消費者契約なので消費者契約法は適用される。

 

2・ほいじゃ,一方的に借主に不利かどうかを判断すると,
①更新料は一般的に賃料の補充ないし前払い,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む性質を有しているのであり,更新料に経済的合理性が無いとはいえない
②一定の地域において,更新料を支払うことは当然のこととなっており,これまでの裁判においても,更新料が無効だという取扱いはされていない。
③更新料の条項が契約書にちゃんと書かれており,それについて借主が合意している場合,借主が合意せざるを得ないというほど,交渉力に差があるということはできない。

 

3・とすると,契約書にちゃんと規定されている更新料については,更新料の額が,賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等を踏まえて考えたときに,明らかに高額だと言えるような特段の事情が無い限り,一方的に消費者に不利益だとは言えない

 

4・よって,更新料は払ってください。

というものです。  

 

 

ポイントは,
契約書に更新料について一義的かつ具体的に規定されている。
更新料の額及び更新期間を考慮して妥当な金額である。
という点になります。  

 

一義的かつ具体的にというのは,「○年毎に契約を更新し家賃○ヶ月分を支払ってください」というように契約書にしっかり規定されているという意味です。  

 

ただ,更新料の額が妥当か否かについては,最高裁ではっきり明言されているわけではないので今後の裁判例の積み重ねによって確立されていくものですが,勝手な予想だと1年当たり家賃の3~4ヶ月分くらいがボーダーのような感じがします。私の感覚だと,一般的な賃貸借契約期間である2年あたり3~4ヶ月分でも高すぎだろうと思っていたのに,最高裁が1年で2ヶ月分を有効としてしまったということは2年で4ヶ月分でも有効ということになってしまうので私の感覚なんぞ当てになりませんが・・・。  

 

なお,この判決により,今後は更新料が取りやすくなるとの意見を見聞きしますが,ここまで更新料についての問題点が周知されてしまったことを考えると,借主が強いという現代社会においては,よほど魅力的な物件で無い限り更新料が設定されたマンション等は入居希望者から敬遠されるため,いつしか更新料という制度は無くなっていくものだと予想しています。   

今後,マンション等の賃貸借契約をする際には,家賃や敷金礼金といった契約時にかかる費用のみならず,更新料の部分もしっかり確認した上で契約するようにしてください。