相続に関すること

「私の相続分は1/2ですよねぇ。」

人が亡くなると,その方の持っていた財産は相続人の方が相続されることになります(民法882)。 

  

ただ,一言「相続する」と言ってもたくさん財産があり,相続人が複数いればどのように財産等を分けるかが問題となります。

この点,前回の記事の通り遺言があれば,その通りに分配されることになるため特段問題はありません(ただし,遺留分は除く)。

しかし,実際には遺言が無いケースがほとんどかと思いますので,通常は相続人の方々でどのように分けるのかの話し合いをしていただくことになります。これを遺産分割協議といいます(民法907条)。私はその遺産分割協議に専門家として関与することがあるわけですが,その時に表題のような発言があったりします。

これは,民法に記載されている法定相続分のことを指しており,配偶者と子どもが相続人の場合は,配偶者は1/2,子ども全体で1/2(例えば,子どもが2人であれば1/4ずつ)と規定されています(民法887条~890条)。  

 

そこで,よく勘違いをされている方が多いのですが,確かに法的にはいったん法定相続分に応じて相続されることになりますが話し合いがつくのであれば法定相続分にこだわる必要はまったくありません。 

例えば,夫が1000万円相当の不動産と2000万円の預金を遺して亡くなったとします。亡くなった方には妻と息子と娘の子どもが2人いました。

この場合,法定相続分だと,妻は1/2ですので1500万円相当の,子ども達はそれぞれ1/4ですので750万円ずつの財産を相続できることになります。しかし,法定相続分に従った分け方をする義務はないので,相続人間の話し合いにより,妻は1000万円の不動産を,子ども達は1000万円ずつ現金をもらうということも全然可能ですし,妻は現金全部を,息子は不動産を相続し,娘は何も相続しないなんてことも全然問題ありません。

さらに,法定相続分の修正として,寄与分や特別受益といった問題もありますが,これも当事者が納得している限り何ら拘束される必要はありません。例えば,上記の例だと息子は結婚するにあたり,父親から結婚資金の援助等をしてもらったとします。この援助されたお金は特別受益として,相続分がその分減額されることになります(民法903条)。しかし,相続人全員の同意が得られる限り,息子が父親の遺産を全部相続するなんてことも可能です。 

 

結局,一番のポイントは相続人全員が納得しているかということに尽きます。逆に言えば,相続人のうち一人でも納得していない方がいらっしゃればどのような内容だったとしても勝手に他の相続人が遺産分割手続を進めることはできません。ですので,遺産分割に納得していないようであれば絶対に遺産分割協議書に署名・押印してはならないことになります。 

 

相続人は全員身内ですので,できれば全員が納得できるような案で遺産分割協議をしていただき,うまくまとまるといいんですが,遺産分割というものは人生で一番大金を目の当たりにするケースでもありますので,なかなかそうもいかないんですよね。また,相続人の配偶者(息子の妻とか,娘の夫といった相続とは直接関係ない人)が遺産分割協議に入ってくるとややこしさが5割増になりますので,相続に関しては,相続人の方だけで話し合いをされることを強くお勧めします。だって,結局は亡くなった方の家族の問題ですからね。