相続に関すること

相続が得か贈与が得か

損か得かの判断基準は税金が一番大きいと思います。 

 

消費税は5%,住民税は10%,所得税は最高で40%である中,相続税と贈与税は最高で50%も税金で取られてしまいます。ともに,日本の税金の中で一番高い税率です。

税率だけ見れば贈与税も相続税も最高で50%ですが,贈与税は贈与額が1000万円(ただし,110万円を差し引いた額)を超えたら50%になるのに対し,相続税は3億円(しかも最低6000万円の基礎控除をしたあとの金額)を超えた場合に50%となるため,相続の方が贈与よりもかなり有利だと言えます。

例えば,2000万円の現金を親から子へ贈与か相続をする場合,贈与であれば,110万円を差し引いた1890万円に対して贈与税がかかりますので,贈与税は720万円となりますが,相続の場合は,基礎控除額以下ですので,相続税は0円です。 

また,登記に限った話ですが,登記をする際の登録免許税は,贈与の場合は不動産の評価額の2%なのに対し,相続は0.4%ですのでその差は5倍にもなります。 

したがって,贈与が良いか相続が得かと言われると,相続の方が得になると思います。

 

 

しかしながら,贈与にも一応メリットもあります。

例えば,相続の場合,遺言がなければ相続人間で争いになることがありますし,仮に遺言があったとしても「そんな遺言は無効だ!」といった争いが起こることもありますので,事前に贈与しておく(例えばAには○○市の不動産,Bには△△市の不動産をそれぞれ贈与する)ことで相続人間の無用な争いを防ぐことができます(なお,「贈与が無効だ!」と争いが起こる可能性もありますが,相続と異なり,亡くなっている訳ではありませんので相続よりは格段にトラブルを防ぐことができると思います)。

また,親名義の土地の上に子どもが家を建てる場合,住宅ローンを組もうとするとまず間違いなく親も連帯保証人にならなければならないため,万が一住宅ローンが払えなかった場合には,相続人に住宅ローンが降りかかってくる可能性もあります。贈与をしておけば,親が連帯保証人にならなければならないというケースは少ないと思います。

さらに,贈与税は贈与時の価値に応じて納めますので,今後値上がりが見込めるようであれば,先に贈与しておいた方が良いケースもあると思います。

 

 

そんな贈与について,贈与税が非課税もしくは先延ばしになる規定や特例もたくさん用意されています。

 

 

1 110万円まで

贈与税に関しては,1年間に贈与された金額が110万円を超えなければ贈与税は課されません。したがって,毎年毎年110万円を贈与していけば税金はかからないことになります。また,下記の手続と異なり,何ら申告する必要はありません(ただし,下記4の場合は除く)。

 

 

2 長年連れ添った夫婦の特例

20年以上婚姻関係にあり,住んでいる不動産もしくは住むための不動産を購入する資金を贈与する場合は,2000万円まで非課税となります。しかも上記の110万円もありますので,最大で2110万円が非課税ということになります。ただし,これは同じ配偶者について1度しか使えません。また,この特例を使う旨を税務署に申告しなければなりません。 

 

3 住宅資金のための特例

ご両親や祖父祖母など直系尊属から,ざっくり言うと家を購入・増改築等をするための費用として子や孫が贈与を受けた場合,1000万円まで非課税となります。

ただし,もらう側が20歳以上であり,もらう側の所得が2000万円以下でなければなりません。また,こちらも申告が必要です。 

 

4 相続時精算課税

これは,非課税になるわけではなく,とりあえずは2500万円までは非課税にして課税を先延ばししておき,実際に亡くなったときに相続税として計算していきましょうという制度です。なお,2500万円からはみ出た部分については一律20%の贈与税を納めなければなりません。

例えば,1000万円を贈与する場合,本来であれば225万円の贈与税がかかりますが,相続時精算課税を選択した場合は,2500万円以下ですのでとりあえずは税金を納めずに済みます。そして,実際に亡くなったときに相続税として計算しますので,何にも財産がなければ相続税の計算の基礎は1000万円となり相続税は0円となります。したがって,結果として1円も贈与税を払わなくて済むということになります。

また,こちらは,3の特例と合わせ技で使うことができますので,合計すると3500万円まで非課税になります。

ただし,こちらも条件があり,贈与する親が65歳以上であり,かつ贈与を受ける子どもが20歳以上でなければなりません。上記3のようにおじいさんから孫への贈与はダメです。

さらに,こちらも申告をしなければなりません。しかも110万円も非課税にはなりませんので,110万円以下の贈与も申告しなければなりません

 

 

税制改正で現在の基礎控除が最低6000万円(5000万円+法定相続人×1000万円)のところ,3600万円(3000万円+法定相続人×600万円)まで減らされるという話が進んでおります。現在は,基礎控除が最低でも6000万円もありますので,実際に相続税の申告が必要になるのは4%程度だそうですので,ほとんどの方には相続税は関係ありません。しかし,基礎控除が3600万円となれば相続税の申告が必要になる方が確実に増えることになります。

そのような事態に備えて,上記の特例を使って予め贈与をしておくというのも一つの方法かもしれませんね。

 

 

※私は税理士ではありませんので,税金に関するご質問にお答えすることができません。詳細はお近くの税務署もしくは税理士さんにお尋ねください。なお,当事務所の顧問税理士を紹介させていただくことはできますので,ご希望の方はその旨ご連絡いただければと思います。