知らない兄弟がいた!
相続のご依頼をお受けした場合,最初に行うのは「相続人の確定」となります。
というのは,原則として遺産分割(遺産分け)をする場合は相続人全員の同意が必要となるところ,そもそも相続人が誰なのかがわからないと何も話し合いが進まないからです。
相続人が誰かということに関して,1番多いパターンは配偶者(夫もしくは妻)及び子どもというパターンです。
配偶者というのは,被相続人(今回亡くなった方)が亡くなった時点での配偶者となりますので,何度ご結婚されていても現在の配偶者が誰であるかを確認すれば良いことからあまり問題にはなりません。しかし,子どもというのは,たとえ前夫や前妻との間に出来た子どもであっても相続人となりますし,婚姻関係に無い男女間の子どもも認知をしていれば相続人となります。
したがって,戸籍を調査するときも,生物学的に子どもを作ることができると言われている8~9歳程度まで遡って確認することになります。
そうすると,稀に誰も知らないような子どもが出てくることがあります。そのようなケースのほとんどが男性が亡くなった場合です。つまり,「外で子どもを作っていた」ということですね。
この子どもにたどり付くのが本当に大変なんです。
最近問題にもなっていましたが,司法書士は一定の業務に関する限りにおいて,他人の戸籍謄本や住民票を本人の同意無しに取得することができますので,役所で調査できる限り現在の住所を探してみるんですが,住民票がある住所に住んでいないというケースもあり,結果的に連絡が取れないということがあります。
また,住民票があり実際にお住まいのケースでも,お手紙にて連絡を取ってみると,にわかに信じていただけず,詐欺師だと思われることもあります。そもそもご自身の本当のお父さんが誰であるかを知らないこともありますので,突然そのような話をされても信じられないのはごもっともだと思いますが何とも悲しいのも確かです・・・。あとは,粘り強くお話ししていくしかありません。
なお,上記はあくまで認知をされた子どもが日本人の方の場合であり,外国人の方の場合はどうにもなりません。よくあるのがフィリピンや中国の女性の方との間に出来た子どもを認知しているというケースですが,そもそも外国人の方の場合は戸籍という制度が無い国がほとんどですので,調査自体が出来ないことが多く,戸籍のある国においても司法書士の職権は外国までは及ばないので,やっぱり調査できません。こうなるともうお手上げです。
相続人がどうしても見つからない場合は,不在者財産管理人を選任し,その管理人が見つからない相続人の方に変わって遺産分割協議を行います。この選任には時間もお金もかかりますし,何より法定相続分に相当する財産を不在者財産管理人に渡さなければなりませんので,今まで被相続人の世話をされていた方にとってみれば,おもしろくない話になるに決まっています。とくに配偶者の方にとっては,自分の知らない間に子どもを作っていた訳ですからね・・・。
ところが,このようなトラブルをうまいこと避ける方法があります。それは遺言です。遺言で相続人の誰に相続させるのかを書いておいておけば,認知うんぬんはまったく関係なくなり,相続人の同意がなくても遺言書で書いたとおりに遺産が分配されることとなります(ただし,相続人が現れた場合には遺留分減殺請求の話が出てくるおそれがあります)。したがって,心当たりのある方は今のうちに遺言を書いておかれることを強くお勧めします。
もっとも,1番確実にトラブルを避ける方法は,そのような子どもを作らないということですけどね・・・。