登記の持分と贈与税
戸建てにしてもマンションにしても購入される際には多額のお金が必要となります。多くの方は住宅ローンを組まれると思いますが,その際に頭金だけは妻が働いていたときの貯金から出したなんてこともあると思います。
ここで,実際にお金を出した方が不動産の所有者になっていればいいんですが,あまり深く考えずに,「まぁ,夫の名義にしておくか」なんてやってしまうと後々大変なことになるかもしれません。
<原則>
本来,不動産の登記というのは,実体にあった登記をしなければなりません。
例えば,1000万円のマンションを夫700万円,妻が300万円出して購入したということであれば,マンションの所有権は10分の7が夫で10分の3が妻,というように共有名義で登記しなければなりません。また,上記の例は住宅ローンを組んでいても同じですので,夫が700万円の住宅ローンを組み,妻は貯金から一括で支払ったとしても結論は変わりません。
ところが,このような場合に,夫の単有にしたり,夫婦だからということで夫と妻それぞれ2分の1ずつ,という内容の登記をしてしまうと,実体とはズレていることになってしまいます。したがって,この場合は実体とは異なる部分については贈与とみなされてしまい,多額の贈与税が課せられる可能性があります。
上記の例でいうと,もし,夫の単有で登記してしまうと妻が夫に300万円を贈与したことになってしまいますし,夫婦各2分の1だと夫が妻に200万円を贈与したことになってしまい,数十万円単位での贈与税が発生してしまいます。
<例外>
住宅を購入するための資金として,親から子へ現金が贈与される場合,贈与税が課せられない特例があります。
1 東日本大震災で被災された方以外の特例
(1)省エネ・耐震住宅を購入される場合
平成24年中→1500万円
平成25年中→1200万円
平成26年中→1000万円
(2)省エネ・耐震住宅以外を購入される場合
平成24年中→1000万円
平成25年中→700万円
平成26年中→500万円
2 東日本大震災で被災された方限定の特例
(1)省エネ・耐震住宅を購入される場合
平成24年中~平成26年中→1500万円
(2)省エネ・耐震住宅以外を購入される場合
平成24年中~平成26年中→1000万円
したがって,上記の特例に該当するものであれば,贈与を受けて不動産を購入しても贈与税は課せられないこととなります。
※平成24年2月2日時点において,上記はあくまで改正「案」なので,実際にはまだ成立していません。
<間違って登記をしてしまった場合>
上記例外に該当していないにも関わらず間違った登記をしてしまった場合,本来であれば贈与税が課税されることとなります。
しかしながら,確定申告期限である購入した翌年の3月15日までに登記を本来あるべき内容に修正すれば贈与税は課税されません。つまり,上記の例でいうと,誤って夫単有としてしまったものを3/15までに夫10分の7,妻10分の3に直せば良いわけですね。
ただし,この登記を行うために再度登記費用がかかってしまい,安くても4~5万円程度(所有権更正),高ければ(不動産の価値にもよりますが)20万円以上かかることもあります(真正な登記名義の回復)。
いずれにしても,無駄なお金がかかってしまいますので,登記の持分に関しては,お金の出所をしっかり確認されたうえでご判断された方が良いかと思います。