尖閣諸島の所有権移転登記
なんでも尖閣諸島を東京都が購入するとのことです。
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東京都の購入の是非だとか領有権の問題といった政治的なことは政治家の皆さんにお任せするとして,「島を東京都が購入」ということになると,当然不動産登記が絡んできますので,司法書士の立場として不動産登記の観点から書いてみます。
まず,東京都が購入し「売買による所有権移転登記」をするためには,土地の登記簿が存在しなければなりませんし,その前提として地番が存在しなければなりません。
これを調べてみると,どうやら尖閣諸島のうち,下記の5つの島にはちゃんと地番があるようです。
南小島→沖縄県石垣市字登野城2390番地
北小島→沖縄県石垣市字登野城2391番地
魚釣島→沖縄県石垣市字登野城2392番地
久場島→沖縄県石垣市字登野城2393番地
大正島→沖縄県石垣市字登野城2394番地
そして,地番が分かれば法務局に土地の登記簿謄本(登記事項証明書)を請求することで登記簿の有無が分かります。ちなみに,尖閣諸島の管轄は,沖縄地方法務局石垣支局ですが,登記簿謄本は各地の法務局やインターネットでも請求することができますし,インターネットで登記の内容だけをPDFで取得することもできます。
なお,住民票や戸籍謄本などと異なり,不動産の登記簿謄本は誰でも自由に取得することができます。
個人情報の観点から登記簿謄本そのものをアップするわけにはいかないのですが,登記簿を見る限りだと報道のとおり,
①確かに民間の方が所有していました。ちなみに,現所有者の方もどなたからか購入されていました。
②国(総務省)が賃借しているようで,賃借権設定登記がされていました。しかも毎年ちゃんと設定登記がされており,今年も4月11日に設定登記がされていました(賃借料約2110万円)。
なお,画面表記は「沖縄県石垣市字登野城2392番地」となっていますが,登記簿の所在は「沖縄県石垣市字登野城魚釣島2392番地」となっており,地目は「原野」でした。
ということで,少なくとも魚釣島については登記簿は存在しますので,おそらく他の島にも登記簿は存在すると思います。そして,今の流れのままだと,個人の方から東京都に所有権移転登記をすることになりますね。なお,東京都が購入する場合,所有権移転登記に関する登録免許税は非課税です(登録免許税法4条1項)
以上,政治とはまったく関係ない尖閣諸島の話でした。