遺産分割協議に参加できない人がいるとき①
被相続人が所有していた財産(遺産)については,相続人全員の協議(遺産分割協議)をすることによって,自由に分けることができます。
例えば,相続人がA・B・Cと3名いた場合に,全員の協議によって「被相続人のすべての財産はAが相続する」という協議が調えば,その通りに財産は相続されることとなります(ただし,遺言によって遺産分割方法の指定がされている場合など例外あり)。
したがって,法定相続分に反するものであったとしても,相続人全員が納得しているのであればまったく問題はありません。しかし,相続が「争族」と言われるように,相続人全員での話し合いがまとまらない場合も当然あります。その場合は,家庭裁判所において「遺産分割調停」を行い,まずは裁判所で話し合いを行っていただきますが,それでもまとまらない場合は,「遺産分割審判」によって裁判所が公平になるように審判を行い,強制的に遺産が分割されることになります。
さて,上記については,相続人全員が遺産分割協議に参加できる場合です。ところが,行方不明等の理由により遺産分割に参加できない方がいらっしゃる場合には,上記の手続は一切できません。そこで,遺産分割協議に参加できない方がいらっしゃる場合には下記の方法によって解決していくことになります。
①相続人の一部の方が行方不明の場合(比較的短期の場合)
例えば,上記の例でいうと,相続人ABCのうち,Cが行方不明になっているとします。繰り返しとなりますが,この場合に,ABだけで遺産分割協議をすることはできません。例え,「被相続人の財産はすべてCが相続する」というように,Cにとってメリットがあるような内容だったとしてもダメです。
この場合,どうするかというと,AやBなどの利害関係人が家庭裁判所に申し立ててCに関する不在者財産管理人を選任してもらい,その不在者財産管理人とABが遺産分割協議を行うことになります。この場合,不在者財産管理人は,Cのために行動しなければなりませんので,被相続人の財産についてA及びBが相続してCは一切相続しないというようなCにデメリットばかりの遺産分割協議をすることができません。と言いますか,裁判所が許可を出しません。
したがって,仮に被相続人の財産が600万円の価値のある土地のみだったというような場合には,ABC3人名義にするか,Aが単独で相続しCについては持分相当額の200万円をAがCに払うというような遺産分割協議をすることになります。
このような不在者財産管理人の選任手続について,司法書士に依頼することができますが,その場合には下記のような費用がかかります。
1・不在者財産管理人選任申立書書類作成
司法書士は不在者財産管理人の選任申し立てについて代理人となることはできませんが,申し立てに関する書類を作成することができます。
→実費を含めて8万円程度
2・司法書士が不在者財産管理人となった場合はその報酬
ご親戚等,不在者財産管理人の候補者がいらっしゃればその方が就任されますが,そのような方がいらっしゃらない場合は司法書士が就任することもできます。
→その場合の報酬は家庭裁判所が決定します(なお,報酬は不在者の財産から支払われるため,他の相続人の方にお支払いいただく必要はありません)。
3・権限外行為許可申立書作成
不在者財産管理人は文字通り不在者の財産を管理する人であって,不在者の財産を勝手に売却等の処分をすることができません。したがって,不在者の財産を処分したり,遺産分割協議をする場合などは,裁判所に権限外行為許可の申し立てを行います。
→実費を含めて5万円程度
ということで,不在者財産管理人を選任した場合,かなりの費用がかかってしまいます。また,上記はあくまで一例ですので,状況によっては費用があがる場合もあります。
長くなったので,続きは次回に。
→遺産分割協議に参加できない人がいるとき②