相続に関すること

遺産分割協議に参加できない人がいるとき②

前回の続きです。

 
②相続人の一部の方が行方不明の場合(行方不明から7年以上経過している場合) 

前回の例でいうと,相続人ABCのうち,Cが行方不明になっているとします。

行方不明になってから比較的短期であれば,不在者財産管理人を選任し,その不在者財産管理人がCの財産を一時的に管理することになります。

ところが,行方不明から7年以上(例外的に「1年以上」もあり)経過していると,他の相続人であるAB等の利害関係人は家庭裁判所に対し,Cの失踪宣告の申し立てをすることができます。なお,行方不明から7年以上経過していても失踪宣告ではなく不在者財産管理人の選任申し立てをすることも可能です。

この失踪宣告とは,法的にCは死亡したものとみなされ,Cに関する相続が開始することになります。したがって,遺産分割協議については,Cの相続人が参加することになります。また,これに加えて,C自身の遺産についてもCの相続人の間で遺産分割協議をすることになります。

この失踪宣告は手続に際して比較的長い時間がかかります。というのは,失踪宣告という手続は法的にとはいえ,勝手に人を亡くなったことにする制度であるため間違いがあってはなりません。そこで,もし行方不明の方の所在を知っている方がいらっしゃれば報告してもらうようにするため,官報という新聞に失踪者がいることを公告するよう義務付けられています。その公告期間が最低でも6ヶ月と長いため,全体として時間がかかることとなります。

また,失踪宣告に関する書類を作成することはできますが,司法書士にご依頼された場合,実費も含めて10万円程度の費用がかかることとなります。 

 

③相続人の一部の方が認知症等により正確な判断ができない場合

前回の例でいうと,相続人ABCのうち,Cが認知症だったとします。

遺産分割協議をするためには,「意思能力」が必要とされています。この意思能力とは,端的に言えば,ちゃんと物事を判断できる能力となり,認知症のみならず,知的障害などの方も含まれ,もし意思能力が無いと判断されると,遺産分割協議をすることができなくなります。

もし,Cが認知症等により,自分では遺産分割の内容を判断することができない場合はCの状況に応じ,成年後見制度(成年後見,保佐,補助)を活用していくことになります。

この成年後見制度は,簡単にまとめられる制度ではないため,ざっくりとしたものを記載すると,成年後見はまったく意思能力が無い場合,保佐は成年後見ほどではないけど意思能力が不十分な場合(いわゆる「まだらぼけ」など),補助は保佐ほどではないものの意思能力が不十分な場合に利用する制度となります。

成年後見制度とは(法務省サイト)  

 

成年後見の申し立てをする場合,医師による鑑定が必要になる場合があり,その費用として5~15万円程度かかってしまいます。したがって,そういった実費及び司法書士の報酬の合計すると20万円~30万円程度かかることとなります。

 

 

 

ということで,行方不明の方がいるなど,遺産分割協議に参加できない方がいらっしゃる場合には,かなりの費用がかかってしまうことになります。

なお,相続登記をすることは義務ではありませんので,登記をしないまま放っておくこともできます。しかし,ずっと相続登記をしないでおくと,相続人の方がお亡くなりになり,遺産分割協議に参加しなければならない方がどんどん増えていくことになります(実際に,現在当事務所で進めている事件も相続人の人数が30人を超えており,話し合いがまとまるかどうかすこぶる不安です・・・。)。

とすると,前回の例で言えば,ABCの3人で合意できれば良かったのに,ABC全員が亡くなっているとすれば,ABCの相続人全員で遺産分割協議をしなければならなくなってしまい,まとまるものもまとまらなくなってしまいます。あくまで勝手な私見ですが,配偶者など本来は部外者である方が遺産分割協議に入ることになると,まとまらなくなる印象があります。

以上から,相続登記は後の紛争を防ぐためにも早めに進められることを強くお勧めいたします。