相続に関すること

第3順位の相続は波乱となるので,その前に手を打つべき

人が亡くなった場合,自動的に相続が開始しますが,相続できる人には順位があります。

とても有名な規定ですが,念のために記載すると下記のようになっています(民法900条・901条)。 

 

第1順位

子ども(孫)と配偶者(夫または妻)

この場合,法定相続分は子ども等1/2,配偶者1/2となります。なお,配偶者がいない場合はすべて子どもが相続することになります。 

 

↓子どもがいない場合 

 

第2順位

両親(祖父母)+配偶者(夫または妻)

この場合,法定相続分は両親等1/3,配偶者2/3となります。なお,配偶者がいない場合はすべて両親等が相続することになります。 

 

↓両親もいない場合 

 

第3順位

兄弟姉妹(甥・姪)+配偶者(夫または妻)

この場合,法定相続分は兄弟姉妹等1/4,配偶者3/4となります。なお,配偶者がいない場合はすべて兄弟姉妹等が相続することになります。 

 

↓兄弟姉妹もいない場合 

 

 

配偶者がいればすべて配偶者が相続することになり,配偶者もいない場合は最終的には国もものになります。 

 

 

 

さて,一般的によくあるのは,第1順位です。つまり,子どもと配偶者が相続人となるか,配偶者がいなくて子どものみが相続人になるパターンです。この場合,相続税を納めなければならないようなとても大きな財産があれば別ですが,多くの場合は話し合いでまとまり,あまり揉めることは無いように思います(もちろん,揉めるケースもあります。)。また,第2順位というケースも無い訳ではありませんが,あまりケースとしては多くないですし,このケースは経験上,ご両親が財産を放棄して配偶者がすべてを相続するケースが多くあまり揉める印象はありません。 

 

 

ところが,第3順位まできてしまうと財産の多寡に関係なく,なかなかまとまりません

というのは,第3順位まで相続が来るケースは被相続人が高齢なことが多く,当然兄弟姉妹も比較的高齢です(若くして亡くなる場合はご両親がご存命の場合が多く,第3順位までこない。)。

そして,兄弟姉妹が高齢の場合はそのお子さん(被相続人からすると甥や姪)が相続人である兄弟姉妹に代わって遺産分割に参加することがあります。この場合,ほとんど面識もないような従兄弟との遺産分割協議の話し合いを行うことになるため,互いになかなか折れず議論が平行線のまま続くことが多いです。

さらに,被相続人の配偶者がいる場合,被相続人の配偶者と被相続人の兄弟姉妹(甥・姪)との話し合いになりますが,もうほとんど他人であるため,互いに遠慮無く自己の主張を突き通そうとするケースが多いです・・・。もうこうなると遺産分割協議はまとまらず,遺産分割調停,さらには遺産分割審判までいかなければ解決しなくなってしまいます。

当事務所でも,第3順位のご相談をいただくことがありますが,話し合いがまとまらないどころか,話し合いのテーブルにすらついてもらえず,調停になっている事件もあります。 

 

 

こういったことを事前に防止するには,やはり遺言が一番です。

特に第3順位である兄弟姉妹には遺留分がありませんので,遺言が効果的だと思います。 

 

※遺留分→遺言によっても奪われることのない相続分。ただし,自分の遺留分を主張するためには遺留分減殺請求権を行使しなければならない。 

 

 

つまり,第1順位や第2順位の相続人は遺留分があるため,遺言書があっても遺留分減殺請求で揉めることがありますが,兄弟姉妹(甥・姪)から遺留分減殺請求を受けることはありませんので,すべてを配偶者に残す旨の遺言書を書いておけば,兄弟姉妹がどれだけ文句を言おうとすべて配偶者が相続することになります。 

 

 

自分にとっては,愛する夫や妻であっても,夫や妻にとっては自分の兄弟姉妹,さらには甥や姪は他人であると考える方も多いので,お子さんやご両親がいない方は特に遺言を書かれておいた方が良いと思います。