中間省略登記は認めません。
不動産登記の基礎となる法律に「不動産登記法」というものがあります。
この法律の趣旨は,「不動産物件変動の過程を忠実に登記に反映させよう」というもので,すこぶる簡単に言うと,「ちゃんと起こった事実の通りに登記をしてね」ということです。
例えば,よくある事例として,
①Yさんが土地を持っている。
②不動産業者AがYさんより購入する。
③Aは土地の名義をに登記する前にXという買主さんを見つけた。
という場合,上記不動産登記法の趣旨からすれば,起こった事実のまま登記しなければならないので,Y→A→Xと登記は移っていくはずです。ところが,Aとしては登記をすると様々な費用がかかりますし,すぐに自分の土地ではなくなるのでYからXへ直接登記をしてほしいと思うのが普通です。
このような場合に,YからXへ登記を直接移すことを,中間にいるAへの登記を省略していることから「中間省略登記」と言います。そして,このような登記は上記趣旨に反することがあきらかですので普通に申請しても法務局に却下されてしまいますが,裁判所としては,三者(上記の場合だとY・A・X)の全員の同意があれば有効にできるとしています。つまり,法務局は認めていないが,裁判所は認めているということになります。
ただ,法務局としても,「YからXへ所有権移転登記をせよ」という判決が出た場合は,登記を認めてくれます。
長くなりましたが,ここから本題です。
平成22年12月16日に,この中間省略登記に関する最高裁判決が出ました。
→概要
これは上記のような例と異なり,
①Y(被上告人)が土地を持っている。
②AがYより贈与を受けた。
③Yが死亡したことによりXが相続した。
というもので,AからXへの移転の原因が売買ではなく中間者が死亡したことによる相続となっておりますが中間省略登記の考え方としては同じです(A→Yへの相続登記を省略しています)。
そして,このケースでは,最高裁は中間省略登記を認めませんでした。その理由は,上記のような不動産登記法の趣旨によるもので,やはり裁判所としても可能な限り,起こった事実の通り登記をするのが大原則であり,例外は極力認めないと考えているようです。
ということで,不動産業者さんが売主なのに不動産の名義は別の個人の名義などになっている場合,基本的にはそのままでは登記ができませんので,いったん不動産業者さんに名義を移して,その後に買主さんに登記をすることとなります。もし,名義が異なる場合はどのように登記をされるのか一度ご確認された方が良いかもしれませんね。
また,中間省略登記はあくまで中間者への登記名義を移さないというものですので,中間者(普通は不動産業者)にメリットはあっても,元の所有者及び買主さんには何らメリットはありません。また,いろいろと理屈を駆使(契約上の地位の移転など)すれば中間省略登記ができることもあるようですので,そのような方法で中間省略登記をする場合は,「業者さんも税金とかも節約できる訳ですから,少しだけ負けてくださいよ~」と価格交渉の材料になるかもしれませんね。
ただ,中間省略登記なんていう専門用語を持ち出してくる買い主さんだと今後も何を言われるかわからないってことで売ってくれなくなるかもしれませんが・・・。