税制改正研修
相続について遺産相続による争いも大変ですが,相続税が発生する場合,その納税資金をどうするかも重要な問題となります。
とは言っても,実は相続税を納税しなければならない方はそんなに多くはなく,一般的には亡くなった方の5%程度と言われています。
ただ,近時相続税に関する税制改正があり,今後,納税をしなければならない方は間違いなく増えていくと思います。
先日,この点の研修を受けてまいりましたので,自分自身の備忘録を兼ねて簡単にまとめたいと思います。
①基礎控除の見直し
これまでは,5000万円+相続人の数×1000万円が基礎控除とされており,この金額以下であれば,そもそも申告する義務がありません。
例えば,夫婦と子供2名の家族の場合,夫が亡くなったとすると,5000万円+3×1000万円で合計8000万円となり,夫の遺産総額が8000万円以下であれば申告する必要がありません。
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平成27年1月1日以降に亡くなった方については,基礎控除が3000万円+相続人の数×600万円になってしまいます。
端的に言うと,60%ダウンです。なので,上記の例だと8000万円まで非課税だったものが4800万円までしか非課税になりませんので,4800万円超~8000万円までの方は新たに申告をする必要が出てきます。
②税率の見直し
相続税は,上記基礎控除を超えた金額について課税されます。
その超過分については段階的に課税され,1000万円以下であれば10%,1億円以下であれば30%という感じです。
以下変更点について記載いたします。
3億円・・・40%→45%
6億円超→50%→55%
という感じです。
正直なところ,私のような一般市民にはあまり影響はない気がしますが,資産家の方にとっては増税になりますね。
③未成年者控除,障がい者控除の見直し
上記2つは実質増税ですが,以降は減税というか控除の拡大です。
相続人に未成年者や障がい者がいる場合,上記1000万円(改正後は600万円)に加えて控除が受けられることになっています。
計算式は,6万円×(20歳-今の年齢)となります。
例えば,夫婦と子供2名(10歳と8歳)の家族で夫が亡くなった場合,基礎控除は①のとおり8000万円ですが,これに加えて,6万円×(20-10),6万円×(20-8)で,合計132万円が控除されることになります。
これが,税制改正により,10万円×(20歳-今の年齢)となり,上記の例だと220万円が控除されることになります。
なお,障がい者の方については,(20歳-今の年齢)の部分が(85歳-今の年齢)になるだけであとはすべて同じです。
④小規模住宅地等の見直し
ざっくりいうと,居住用の自宅の土地などについては,その評価をグンっと引き下げて評価するというものです。
例えば,路線価で5000万円の土地に自宅が建っている場合,その土地の評価が最大で1000万円まで減額して評価されることになります。
なので,上記の例だと基礎控除が8000万円だったので,もし土地だけで5000万円と評価されてしまうと預貯金などで3000万円超の遺産があると相続税が課税されることになりますが,1000万円で評価されると7000万円超の遺産が無い限り相続税は課されません。
この減税を受けるための土地の面積の上限が240㎡だったものが330㎡に拡大されることになりました。
なお,注意点として,この小規模住宅地の減額制度を受けるためには,相続税の申告自体は必要となります(申告したうえで,減税の適用を受けて相続税が0円になる。)。
また,この制度は平成26年1月1日から適用開始となります。
⑤相続時精算課税の適用拡大
相続時精算課税については,先日記事を書いておりますので,こちらもご覧ください。
→ブログ記事
さて,この相続時精算課税について,これまで65歳以上の方が,20歳以上の子ども等に贈与することについて2500万円まで贈与税を課さず相続時に精算することになっていましたが,範囲が拡大され,60歳以上の方が20歳以上の子ども等に加えて孫まで贈与できるようになりました。
⑥教育資金の贈与についての一部非課税措置の創設
これは改正ではなく新たな創設となり,子どもや孫に対する教育資金の贈与については1500万円まで贈与税が非課税となりました。
ただ,この適用を受けるためには結構面倒で,贈与をする方が孫等の口座を金融機関で開設し,そこに入金する必要があります。また,「教育資金」の範囲が極めて厳格で,学校の入学金や授業料などの直接的なものに加えて修学旅行や遠足費なども教育資金に含まれますが,一人暮らしのための生活費などは含まれません。また,学習塾や習い事の費用など学校以外への支払いについては,1500万円ではなく500万円が上限となります。
そして,このことを証明するために領収書を必ず保管し,金融機関に領収書のチェックを受けてもらう必要があります。
この制度はすでに始まっており,27年12月末までの期限付きの制度となります。
上記の通り,ほとんどの方にとってはあまり関係ないかもしれませんが,相続時精算課税制度などは資産家ではない方でも使える制度ですので知識として知っておいて損は無いと思いますよ 。