自分の子どもではないにも関わらず認知した場合(最高裁判決)
本日,家族関係に関する最高裁判決がありましたのでご紹介いたします。
【事案】
①夫Aは妻Bと結婚し,妻Bの子であるCを認知した。ただし,C(女性・認知当時8歳)がAの子どもではなく認知をする時点でAはそのことを知っていたし,CもAが実の父ではないことを知っていた。。
②AとBは不仲になり,離婚訴訟の結果,AとBは離婚した。
③AとCも当初より不仲であり,AがCに対し,認知無効の訴えを提起した。
④これに対し,Cは自ら実の子でないと知っていながら認知したのだから今さら認知が無効などと言うことは許されないとして反論しました。
なお,最高裁の判決文にはありませんが,AがCに対して性的虐待をしていた(1審では認定,2審では否定),B及びCの実父はフィリピン国籍でありCは実父に認知されていたなどの事情もあるそうです。
→1審判決(PDF)
→2審判決(PDF)
【ポイント】
認知というのは,婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもを自分の子どもであるとして認知の届けを役所にすることで,法的に親子関係が発生する制度です(民法779条以下)。
したがって,婚姻中に生まれた子どもについては認知する必要はありませんし,母親に関しては認知をするまでもなく,分娩の事実により実の子ということはわかりますので,認知の届けをする必要はありません。
基本的に認知があると子どもにとって有利になることが多いと思います。
例えば,法的に父子関係が発生することで子どもは父親に対して扶養を請求することができることになり,母親としては養育費の請求ができます。また,父親が亡くなった場合には父親の財産について相続することもできます。なので,子どもとしては認知が無効になるのを阻止する方向に動くことが多いと思います。
【判決】
この点について,先ほど最高裁判決がありました。
結論として,「AはCが実の子ではないと知っていながら認知した場合でも認知無効の主張ができる。」という判決でした。
その理由としては,端的に言えば,「認知無効は認知をした人のみならず利害関係があれば誰でもできることになっているし,個別の事情に応じて権利濫用などを理由に無効主張を否定すれば良いから,知っていながら認知したことをもって一律に無効主張を禁止しなくても子どもが保護されないということもない。」というものです。
全面禁止にしなくても個別で判断すれば良いということで,非常に合理的な判決だと思います。
【不受理申し出】
さて,この認知ですが,上記のとおり届出だけで良いとなっており,基本的に承諾書などは必要ありません。
※認知される子どもが20歳以上であればその者の承諾が,子どもがまだ出生前(胎児)の場合には母親の承諾が必要です。
ということは,自分が知らない間に誰かの子どもになっていることもあり得る訳で結構怖い話ですよね。
このことは,婚姻届でも離婚届も同じですね。
実は,このような虚偽の届出を防止するために「不受理の申し出」を役所にしておくことで勝手に届出されるのを防止することができます。
もっとも,離婚届不受理の申し出は離婚協議中の夫婦間でよくありそうな話ですが,認知届不受理の申し出というのはどういう場合に出すのでしょうか・・・。「あ,あの人,俺の事を認知しそうだ!」みたいなことがあるんでしょうか・・・。
それはさておき,この不受理の申し出は,知らない方も多いので知っておいて損は無いと思いますよ!