遺産分割で問題となる事項(国債編)
「国の借金が1000兆円を超えており,国民一人当たり800万円の借金を負っている!」
なんていうニュースを良く目にします。
「国の借金」と一口に言っても,借入金や国債,国庫短期証券(短期国債)などいろいろな種類がありますが,その中でも一番多いのが国債です。
国債というのは,端的に言うと,「国がお金が必要なときに証券を発行してお金を集め,将来的にそのお金に利息を付けて返してもらえる債券」であり,もっと簡単に言うと,国に対する貸金です。最近だと個人向け国債のCMなんかが流れており,最低1万円からできる投資として注目されています。
さて,この個人向け国債について相続が起こった場合,どのように処理されるのでしょうか。
以前,預金については,原則として遺産分割の対象とはならないため特別受益などの修正を受けず,被相続人の方が亡くなった瞬間に当然に法定相続分通り分割されるという記事を書きました。
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この当然に法定相続分通りに分割される理由は,銀行の預金や借金など数量的に分割することが可能なモノであるからです。(民法427条)。
上記の通り,国債は国に対する貸金ですので,銀行の預金のように数量的に分割することが可能であるモノと考えることができそうです。とすると,被相続人の方が亡くなった瞬間に(原則として)遺産分割の対象とはならずに法定相続分通りに分割されそうな感じがします。
この点について,昨日最高裁判決が出ました。
結論としては,国債は当然に分割されることはなく,遺産分割の対象となるとしています。
その理由は,「個人向け国債の額面金額の最低額は1万円とされ,その権利の帰属を定めることとなる社債,株式等の振替に関する法律の規定による振替口座簿の記載又は記録は,上記最低額の整数倍の金額によるものとされており(同令3- 4 -条),取扱機関の買取りにより行われる個人向け国債の中途換金(同令6条)も,上記金額を基準として行われるものと解される。そうすると,個人向け国債は,法令上,一定額をもって権利の単位が定められ,1単位未満での権利行使が予定されていない」というものです。
凄く簡単に言えば,「個人向け国債は法律上最低1万円を1つの単位として換金等をすることを予定しているのに,当然に分割されるとなると1万円以下に分割される可能性が出てくるため,当然に分割されることはない。」というものです。
なお,上記最高裁判決は,国債だけではなく投資信託受益権についても判示しておりますが,ちょっと難しいので割愛致します。
凄く簡単に言うと,投信受益権は金銭債権部分のみならず,可分ではない権利が合体した権利であるため,当然に分割することは無いというものです。
実は,私は相続財産として個人向け国債をお持ちの方の手続をしたことが無いのですが,これだけ個人向け国債が流行っていますので,近い将来,相続財産として個人向け国債を持っているのが普通という時代が来るかもしれませんね。