遺産分割協議は早めの方がお得??
人がお亡くなりになると,その方が持っていた財産や負債は原則として相続人が相続します。
その際,法律で相続分が定められており,決められた割合で相続することになりますが,事後的に遺産分割協議によって別の定め方をすることも許されており,その場合は最初からその遺産分割協議の内容どおりに相続したことになります。
例えば,
A(夫),B(妻)の間にC(子)がいたとします。
まず,Aさんが亡くなった場合,法定相続分通りだと,BさんとCさんが各自2分の1ずつ相続することになります。したがって,Aさんが持っていた不動産や預金など,すべて半分ずつ相続することになります。もし,Aさんが不動産を甲土地と乙土地と2つ持っており,両方の土地とも1000万円の価値があったとしても,勝手にBさんが甲土地,Cさんが乙土地などに分けられるのではなく,BさんもCさんも甲土地及び乙土地それぞれを2分の1ずつ所有していることになります。
ところが,BとCで遺産分割協議を行い,すべての土地はCさんが相続する内容で協議が調った場合,最初からすべての土地はCさんが単独で相続したことになります。
登記においても同様で,厳密に言えば,Aさんが亡くなった時点で,土地の名義をBさんとCさんの共有名義にして,その後にいったん抹消して再度Cさんに相続登記をしたり,共有名義になった後のBさんの名義をCさんに変えるということも考えられます。ただ,それはとっても面倒なので,Aさん名義のままの状態で遺産分割協議を行った場合は,直接Cさん名義にしても良いことになっています。
では,Aさんが亡くなった後,遺産分割協議をしない間にBさんも亡くなった場合はどうなるのでしょうか。
時系列で言えば,
(1)Aさん死亡→B・C共有状態(各自2分の1)
(2)Bさん死亡→Bさんの2分の1についてCさんが相続して結果としてCさんの単有
という感じです。
この点について別の考え方もあり,CさんがBさんの「Aさんの死亡に関する遺産分割協議をする権利」も相続したと考えられる場合,Cさんは現実的には1人ですが,法的には「Aさんの相続人たるC」と「Aさんの相続人たるBの相続人」という2つの資格を持つことになり,Cさんの心の中で,BさんとCさんとの間で遺産分割協議を行ってCが単独相続するという遺産分割協議をした,とすることも可能です。ただ,「協議」というのは複数人で行う行為ですので,書面は遺産分割協議書ではなく遺産分割決定書になります。
何でこのようなややこしいことを考えるかというと,前段の方法だと(1)と(2)の2つの登記が必要になり,その際の登録免許税も5割増しになります。後段の方法だと登記はA→Cへの登記1つで済みますので司法書士報酬は1件分ですみますし登録免許税も安くなります。
この点,登記実務はどうなっているかというと,少なくとも3年程前までは,後段の方法,つまり1件だけの登記申請でA→Cへの名義変更が可能でした。ところが,3年程前からこの方法が使えないという見解が台頭し,現在はこの方法では登記ができません。
そこで,この方法による登記の可否について,裁判で争われました。
→判決要旨
結論としては,やっぱりダメということです。
ということで,なかなか話し合いがまとまらないこともあろうかと思いますが,遺産分割は早めにされた方が得かもしれませんよ。