生前贈与と財産分与
財産をお持ちのままお亡くなりになることで、相続人間で争いが起こることがありますので、お亡くなりになる前に生前贈与と財産分与という形で、事前に財産を分けるという方法もあります。
また、贈与の方法によっては、生前贈与と財産分与をしておくことで、将来発生する相続税を抑えるということも考えられます。
贈与のメリット
1 紛争が未然に防げる
相続よりも優れている点としては、まずは相続人間の争いを未然に防ぐことにあります。
例えば、親が亡くなった場合、多くのケースではその子どもが相続することになりますが、兄弟間の仲が悪く遺産分割協議がまったくまとまらないというケースが考えられます。また、今は仲が悪くなくても、親の面倒をよく看た長男とまったく看ていない次男との間に相続分の差はありませんので、お亡くなりになった後に揉めるというケースも考えられます。
こういった場合に生前贈与と財産分与として、子どものうちの誰かに贈与しておけば亡くなった後に遺産分割協議をする必要がなくなりますので未然に争いを防ぐことができます(ただし、遺留分侵害額請求を受ける可能性はあります。)。
2 相続人以外の者に財産を遺すことができる
相続に関しては、法律で定められた相続人しか相続をすることができませんので、本来の相続人がいるにも関わらず、その相続人をとばして祖父から孫へ相続ということはできませんし、伯父や伯母から相続するということもあり得ません(本来の相続人がすでに亡くなっていて代襲相続することはあります。)。
生前贈与と財産分与であれば相続人ではない方にも財産を渡すことができます。ただし、遺言においても同様のことはできますので、名義変更をお急ぎで無いようであれば、税金のことを考慮すると、遺言の方が良い場合が多いと思います。
贈与のデメリット
1 税金が高い
相続によって取得する場合と贈与によって取得する場合では、下記のとおり明らかに贈与の方が税金の方が高くなります。
①登録免許税
登記の名義を贈与を受ける方に変更する際に登録免許税という税金がかかります。相続の場合は不動産の評価額に対して0.4%であるのに対し、贈与は2%となります。
仮に評価額が2000万円の不動産を相続もしくは贈与した場合、相続の際にかかる登録免許税は8万円ですが、贈与の場合は40万円もかかってしまいます。
②贈与税及び相続税
相続税に関しては、現行法上は基礎控除で最低でも3600万円(※令和5年1月1日現在)を控除することができますので、仮に2000万円の不動産であれば相続税は0円となります。
一方、贈与税に関しては、基礎控除として110万円しか控除できませんので、仮に2000万円の不動産であれば差し引き1890万円について贈与税がかかってしまい、720万円も贈与税を納める必要があります。
※ただし、推定相続人に贈与する場合、相続時精算課税の適用を受けることや夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除によって贈与税を納めなくても良い場合もあります。
③不動産取得税
相続の場合は不動産取得税はかかりませんが、贈与の場合は不動産取得税がかかってしまいます。
不動産取得税は、原則として評価額の3%となりますので、仮に2000万円の不動産であれば60万円もかかってしまいます。ただし、不動産取得税は軽減措置があります(例えば、土地は半額で計算されます)ので、不動産取得税がかからないケースもあります。
2 意思能力が無いと贈与ができない
相続の場合は、財産をお持ちの方が亡くなった場合は、自動的に相続が開始しますが、贈与を行う場合は、その時点で贈与をする方の意思がハッキリしてなければなりません。贈与をされる方は比較的高齢の方が多いため、認知症等を患っている場合には贈与ができないことがあります。
したがって、生前贈与と財産分与を行う際は、税金についても十分ご検討いただいたうえで慎重に進める必要があります。
生前贈与手続に含まれるもの
- 【不動産の登記簿や評価額の調査】
- 【登記原因証明情報の作成】
- 【不動産の名義変更に関する登記手続】
費用
6万円~(評価額が1000万円まで。以降、1000万円増えるごとに1万円加算。) |
※受贈者が複数いる場合や管轄が複数の場合など、登記申請が複数になる場合は1件増えるごとに3万円加算(評価額が1000万円まで。以降、1000万円増えるごとに1万円加算。)
※登記原因証明情報の作成費用は無料です。
※不動産の評価額に応じて登録免許税が別途かかります。
※贈与をされる方の住所や氏名が変更されている場合など、贈与の登記以外の登記手続が必要になる場合は別途登記費用がかかります。