不動産屋さんを通さない不動産の売買について
最近,親族間での売買や友人知人,またはご近所さんなど,不動産業者を通さない不動産の売買についてのご相談を多くいただいておりますので,今日は不動産業者を通さないことのメリット及びデメリットについてまとめてみたいと思います。
そもそも不動産屋さん(不動産仲介業者)とは何か
不動産を購入される方の多くが,自宅に入ったチラシやインターネットでの検索,場合によっては現地に立ててある看板などを見て購入されていると思います。中には,欲しい不動産の目星を付けて登記簿で所有者を確認し,直接売主さんと交渉を行うという方もいらっしゃるかもしれませんが,極々少数です。
一方,不動産を売却しようと思っている方も,インターネットや新聞広告などを行って自ら買主さんを探すこともできるでしょうが,現実的にはほぼあり得ません。
また,不動産を購入される方にとって,もともとお住まいの地域であればご存知かもしれませんが,小中学校の学区,用途地域(住居専用地域や商業地域など)などの調査も必要ですし,売買契約が成立した際の契約書もなかなかご自身で作成するのは難しいです。
このように,購入を希望される方と売却を希望される方の間を取り持って売買を仲介するのが不動産屋さん(不動産仲介業者)です。
不動産屋さんに依頼するメリット
【売主さん】
①売買契約が成立するまで無料で買主さんを探してくれる
→仲介手数料は,原則として売買契約が成立したときに発生する費用であるため,広告費用などはすべて不動産屋さんが負担します。
②売買代金の妥当性
→不動産屋さんは過去の周辺相場を知ることが出来ますので,特殊な事情が無い限りある程度妥当な金額での価格で成立する可能性が高いです。
③買主さんに知らせるべき情報を調査して説明してもらえる
→不動産屋さんは,契約前に契約内容に関する「重要事項説明」を売主さん買主さん双方にしなければならないこととなっているため,様々な調査を行ったうえで説明してもらえます。
【買主さん】
①売買契約が成立するまで無料で案内してもらえる
→上記のとおり,仲介手数料は,原則として売買契約が成立しないと発生しませんので,気に入る不動産が出てくるまで何度でも無料で案内してもらえます。
②売買代金の妥当性
→上記のとおり,特殊な事情が無い限り妥当な金額での売買価格になります。
③必要な情報説明してもらえる
→上記のとおり,重要事項説明がありますので,ご自身で調べなくても不動産屋さんが説明してくれます。
④リスク回避
→まったく面識がない売主さんに対して直接大金を支払うことに躊躇する方が多いかと思いますが,不動産屋さんが入ることで詐欺などのリスクを軽減することができます。
⑤保証がある場合がある
→すべての不動産屋さんではありませんが,一部の不動産屋さんは耐震保証や地盤に関する保証をしてくれることがあります。
⑥責任追及できる場合がある
→購入した不動産に問題があった場合,売主さんに責任追及するのみならず仲介した不動産屋さんにも責任追及できる場合があります。一般的に売主さん個人よりも不動産屋さんの方が資金力があるため,売主さんと不動産屋さん双方に責任追及できた方が有利です。
なお,売主さんが不動産屋さんに仲介を依頼している場合,買主さんが直接売主さんから購入することは非常に困難です。
不動産屋さんに依頼するデメリット
売主さん及び買主さんともに不動産屋さんに仲介手数料を支払わなければならないことです。
仲介手数料は不動産の価格によって異なりますが,一般的には400万円を超える価格になることが多いため,「売買価格の3%+6万円+消費税」が上限となります。
例えば,1000万円の不動産であれば388,800円が上限となり,通常はこの金額を売主さん買主さんそれぞれが不動産屋さんに支払うこととなります。
不動産屋さんを通さない売買を行うケース
最初に書いておりますが,親族間や知人間での売買であれば詐欺などのリスクはほとんどありませんし,小中学校の学区や用途地域などはすでにご存知かと思われます。また,知人間であれば違うかもしれませんが,親族間であれば売買価格の妥当性もあまり必要がありません(例えば,親が子どもに不動産を売却する場合,相場よりも安く売却することが多いかと思います。)。
とすると,税金の申告等の際に必要となる契約書の作成と不動産屋さんも関与しない不動産の名義変更(所有権移転登記)さえできれば,仲介手数料を支払ってまで不動産屋さんに仲介してもらう必要がないという方も多くいらっしゃると思います。
そこで,当事務所では,売主さん及び買主さんから直接ご依頼を受けて,①契約書の作成,②名義変更等の登記関係全般の業務を行っております。以下,かかる費用について記載いたします。なお,当事務所の報酬には別途消費税がかかります。
【売主さんにかかる費用】
・実費部分
①売買契約書に貼付する収入印紙
→売買価格によって変わりますが,多くのケースで1000円から3万円の範囲内になるかと思います。
②事前調査費用
→不動産の数などによって異なりますが,1000円から2000円程度です。
③郵送料
→数百円程度です。
・当事務所の報酬部分
④売買契約書作成費用
→ページ数や内容などに関係なく一律3万円
※ご自身で作成される場合は不要です。
⑤登記原因証明情報作成費用
→ページ数などに関係なく1万円
【場合によっては売主さんにかかる費用】
⑥住所やお名前の変更登記が必要な場合
→内容次第となりますが,実費及び報酬を合計して2万円程度です。
⑦抵当権抹消登記が必要な場合
→内容次第となりますが,問題なく抹消できる場合は実費及び報酬を合計して1万円から2万円程度です。ただし,古い抵当権などの場合は簡単に抹消できませんので,費用や時間がかかります。詳細についてはこちらをご覧ください(遥か昔に登記された抵当権抹消登記)。
⑧権利証が無い場合
→内容次第となりますが,実費及び報酬を合計して6万円から10万円程度です。
【買主さんにかかる費用】
・実費部分
①売買契約書に貼付する収入印紙
→売買価格によって変わりますが,多くのケースで500円から3万円の範囲内になるかと思います。
②登録免許税
→不動産の評価額や減税の可否によっても変わります。通常であれば,土地は評価額の1.5%,建物は評価額の2%となります。
③登記事項証明書
→不動産の数によって異なりますが,1000円~2000円前後になることが多いです。
④郵送料
→1500円程度です。
・報酬部分
⑤売買契約書作成費用
→ページ数や内容などに関係なく一律3万円
※ご自身で作成される場合は不要です。
⑥所有権移転登記報酬
→不動産の数に関係なく1登記申請当たり5万円
⑦事前調査及び立会いに関する報酬
→不動産の数や申請件数に関係なく1件当たり3万円
【場合によっては買主さんにかかる費用】
⑧抵当権設定登記がある場合
→内容次第となりますが,実費及び報酬を合計して数万円から20万円程度です。
なお,登記簿の内容によっては,上記では該当しないことも稀にございますので,お問い合わせいただければと思います。