相続に関すること

長期間相続登記等がされていないことの通知

最近,法務局名で「長期間相続登記等がされていないことの通知」が届いている旨を耳にします。

これまでにない制度であり,昨今は役所の名前を騙った振り込め詐欺などもありますので,かなり警戒されていらっしゃる方も多いようです。

今回はこの通知についてまとめておきたいと思います。

 

 

長期間相続登記等がされていないことの通知とは?

 

こちらの通知は,「所有者不明土地の利用の円滑化に関する特別措置法」に基づいて,不動産所在地を管轄する法務局の登記官が通知する書面です。

この法律は,日本全国で相続登記がなされておらず,現在の土地の所有者が不明であるため公共事業などに支障が出ていることから,土地を円滑に利用できるようにするために設けられたものです。

上記法律の40条に通知に関する規定があり,すごくざっくり説明させていただくと,土地の所有者が亡くなって30年超(施行令第10条)経過している場合に,登記官が当該土地について相続登記をするよう勧告する通知をすることとなっており,その通知書が「長期間相続登記等がされていないことの通知」となります。

具体的には,「相続登記がされない状態が続くと,さらなる相続が発生するなどして権利関係が複雑となり,将来の相続登記が困難になる恐れがありますので,ご理解とご協力を求めます。」というような趣旨のことが書かれております。

 

なお,上記通知は,相続人全員に送られるのではなく,当該土地を相続する可能性が高いと登記官が判断した人(「固定資産税の納税管理者になっている人」,「土地の所在地の近くに住んでいる人」など)1名に送付されることになっています。 

 

何かペナルティがあるのか

通知書が届いたからといって必ずしも相続登記をしなければならない訳ではなく,もし相続登記をそのまま放置していたとしても罰金等の刑罰が科されることもありません

ただし,以前書いた記事のとおり,近い将来相続登記が義務化されるという話も出てきておりますので,そうなった場合には過料という罰金のようなものを課される可能性はあります。 

 

絶対やってはいけないこと

現時点では制度自体があまり知られていませんので事件もありませんが,この通知を基にした振り込め詐欺事件が発生する可能性があります。例えば,「相続登記が未了であるため罰金が科されました。下記の口座に送金してください。」のような感じです。

上記のとおり,現時点では罰則はありませんし,仮に法改正によって過料の制度が始まったとしても口座に送金するということはあり得ませんので,絶対に振り込まないようにしてください。

したがいまして,似たような書類が届いた場合は,当該書面をお持ちの上,近くの法務局(不動産を管轄する法務局でなくても構いません。)または司法書士にご相談いただくか,通知書に記載されている法務局の電話番号をお調べいただき,その番号にお電話ください(通知書に記載されている番号が振り込め詐欺グループの番号になっている可能性もあるため)。

 

なお,通知書が送られてきている時点で,当該不動産には付記登記にて「長期相続登記等未了土地」という登記がされておりますので,その点からも通知書が本物かどうかを確認することができます。 

 

相続登記はした方が良いのか

法務局からの通知書に記載されているとおり,将来相続登記をしようと思ったときには,権利関係が錯綜しており,事実上,登記が不可能になるということも考えられます。通知書が届いた時点で土地の所有者の方が亡くなってから少なくとも30年が経過していますので,場合によってはさらなる相続が生じている可能性も十分あります。

 

相続登記は義務ではないものの,登記できるときにしておかないと現実的に不可能となり後悔することもありますので,できる限り早めに手続をされた方が良いと思います。また,不動産の価値が極めて低いうえ,被相続人が亡くなったこと自体を知らないという可能性もありますので,そのような場合には相続放棄をするということも考えられます

 

なお,通知書が届いている時点で法務局は相続関係を把握しており,その内容を記載した「法定相続人情報」という証明書(1通450円)を発行してもらうことができます。この証明書があることで戸籍謄本等の取得が一部不要になるなど,比較的相続登記が進めやすい状況になっておりますので,通知書が届きましたら,できれば相続登記をしていただきますようお願いいたします。

もちろん,当事務所にご相談・ご依頼いただければ相続登記を進めさせていただくことも可能ですし,相続放棄についても書類作成にて進めさせていただくことも可能ですので,遠慮なくご相談いただければと思います。