はなみずき司法書士事務所
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2022年4月

4月 08 2022

時効の援用は弁護士または司法書士にご相談ください。

先日、消滅時効に関する記事を記載いたしましたが、今回も時効の話になっております。

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前回、時効の記事において、明確に解決できない場合がある旨を記載いたしました。これは借主側が借金の存在を認めるような行為をしていた場合に、それが民法152条のいう「承認」に該当するかで争いがある場合、通常は借主側が時間と費用をかけて債務不存在確認訴訟を提起することは考えにくいため、貸主側が何もしなければ、次の時効完成のときまで明確に解決したかどうか判断できないことによるものです。
 

このような難しいことだけではなく、ご本人さんとしてはすでに5年以上返済していないので時効が完成していると思われているものの、実際には2年前に和解して数回返済していたということもあり、時効が完成していないという事もありました。
 

さらに、今回新たに起こった事由として、差押えの取下げがあった場合に時効が更新されるのかという点も問題となりました。
 

民法148条において強制執行をした場合には時効は更新されるものの、取り下げた場合には6か月は時効完成が猶予されるものの時効の更新はされないこととなっております。

ところが、100万円の貸金を回収するために預貯金の差押えをしたところ、口座にまったくお金が無かったため取り下げた場合、時効は中断(更新)するとした大正時代の判例があります。

また、口座に0円ではなく10円が残っていたものの、差押債権者としては10円を回収するためにそれ以上の費用(例えば送金手数料)がかかるのはムダなので、10円は回収せずに取り下げるということがあります。もちろん、費用がかかっても10円は回収し、残部は取り下げるというケースもあるでしょう。

この場合、明確な判例は無いのですが、恐らく前者であれば時効更新はしないと思われますが、後者に関しては10円については強制執行を終えておりますので全体として時効は更新すると思われます。 

ちなみに、本件とは直接関係ありませんが、従前は差押されていることを債務者が知らない間は時効更新事由にならないとされていました(実際、原審である東京高裁は更新しないと判断していました。)が、令和元年9月19日の最高裁判決により、債務者が差押えされていることを知らなくても時効は更新するとなっておりますので注意が必要です。

→ 最高裁サイト

→ 判例全文(PDF)
 

いったん差押えをしたけど取り下げたという場合、単に取り下げたという事実だけでは時効が更新しているのか、更新せずに完成しているのか明確に確定できないことがあり、この点は時効が完成しているとして突っぱねて債権者の判断に任せるか、債権者や裁判所にて調査が必要となり、場合によっては債権者と交渉をすることになると思います。
 

このように、時効の援用は、明らかに時効が完成していると思っていても実際には完成していないことや争いがあることが結構あり、時効援用通知を債権者に発送する前に調査をする必要があります。

この点、弁護士や司法書士であれば事前の調査は可能ですし、上記のとおり争いがあった場合でも債権者と交渉することもできます
 

一方、他の士業の方だと、依頼者の方から依頼を受けて内容証明郵便を発送することは可能ですが、それで解決しなかった場合には何もできないという大きな不利益があります。
 

したがいまして、一見簡単そうに見えて時効援用は難しいので、弁護士または司法書士にご相談いただいた方が良いと思います。

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