2月 26 2013
奨学金問題
本日,こんな記事がありました。
→「金融事業化」する日本の奨学金制度 「返済できない若者」が急増
内容を端的にまとめると,最近は奨学金の返済を滞る方が増えてきており,それに伴い奨学金の回収が厳しくなってきている,というものです。
そして,こういった状況にある方における「救済手段」として,①自己破産等の債務整理を行う,②時効を援用する,の2点を挙げています。
しかしながら,上記の「救済手段」で解決できる場合はあるとは思いますが,極めて厳しいと思います。そして,私の結論としては,奨学金の借り入れが残っている場合について,何の問題もなく解決できる手段は無いと思っています。
以下,上記の「救済手段」について私が思うことを記載いたします。
①自己破産等の債務整理
上記の記事によれば,「自己破産や個人再生などの債務整理手続きがある。お金のない人は法テラスを利用して、費用援助を受けながら、専門家の支援を受けるという方法もある」としています。
確かに,手続費用がご用意できない場合でも法テラスを利用することによって手続きを進めることができます。実際,当事務所でも常に法テラス利用の案件をお受けしている状況にあります。
そして,破産手続きをすれば奨学金の返済義務はなくなりますので,ご自身としては確かに奨学金の問題は解決できたかもしれません。
しかしながら,自己破産しても個人再生にしても,保証人には効力は及びません。
奨学金を借りる場合,通常は2名の保証人が求められ,1名はご自身の両親(一般的には父親),もう1名は生計を別にする方でなければならないため,親戚の方などに保証人になってもらっていると思います。
つまり,自己破産や個人再生により,ご自身は返済義務がなくなるかもしれませんが,その代わり,保証人のもとへ請求が行きますので,ご家族,もしくは親戚を含めた全体からすれば何の解決にもなっていません。
したがって,奨学金以外にも多額の借り入れがあり,その他の借り入れが無くなれば奨学金を返済していけるということであれば自己破産等を行ったうえで,免責許可が確定したのち,保証人の方と相談をして返済を継続していくことなり,奨学金以外の借り入れが無いのであれば返済猶予制度を使って返済していくべきだと思います。
なお,上記記事では,「非常に厳しい要件が課されている上に、運用上も様々な制限が課され、申請方法なども複雑で不明瞭なため、制度を利用できない返済困難者が多い」とありますが,少なくとも自己破産の手続をすることと比べたら全然こちらの方が簡単です。
②時効の援用
返済期日から10年間返済しないと,時効によって返済しなくてもよくなります(民法167条)。ただし,単に10年経過するだけではダメで,10年経ったので時効により借金(奨学金)は無くなりましたよ,と通知を出さなければなりません(民法145条)。これが「時効の援用」です。
したがって,実際に返済期日から10年経っていらっしゃるのであれば確かに時効の援用により解決できます。
しかし,記事にもあるとおり,日本学生支援機構は奨学金の回収を強化しており,支払督促や訴訟などの裁判手続をかなりしてくるようになりました。実際に,私が裁判所に行くと,最近は結構奨学金の回収の裁判を見かけます。
そして,裁判手続きを使って回収手続きに入られると,時効が中断され(民法147条),さらに裁判手続きが終わったときから,再び10年が経過しなければ時効にはなりませ(民法157条)ん。
ですので,上記の通り,10年経過しているのであれば時効の援用をしていただければ良いのですが,10年経過するまで裁判手続きをされないまま放置されているという方はかなり少ないと思われ,現実的な解決方法ではないと思います。
なお,ご自身は裁判手続きをされていなくても,保証人が日本学生支援機構から裁判手続きをされた場合にも時効が中断しますので,ご注意ください(民法458条→民法434条)。
以上から,奨学金の解決手段としては,正直なところ抜本的な解決手段はなく,返済猶予を求めるか,他の借り入れを含めて債務整理によって減額または免除したうえで,保証人と相談して奨学金を返済していくしかないと思います。
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